「僕はもう若林さんがずっと好きでシンパシーを感じていました。いつか一緒に番組をやりたいとは思いつつも、若林さんとやりたい番組の企画書はどうしても力が入ってしまう」
放送8年目を迎えたバラエティ番組『激レアさんを連れてきた。』では、「地上波で放送できない激レアさん」を紹介するべく、番組初のリアルイベント「生レアさんLIVE 2025 若林が聞きたい地上波NGの夜」が開催された。テレビ番組の生き残りを図るべく、番組イベントが行なわれるケースが急増したものの、コンテンツ過多の現在では出演者本人が発信する情報と横並びとなるために、番組自体の在り方がよりシビアに問われるようになった。
『激レアさん。』演出の舟橋政宏氏に番組イベントを実施することで感じた苦悩とお笑い番組の在り方について訊いた。
聞き手は、『1989年のテレビっ子』『王者の挑戦 「少年ジャンプ+」の10年戦記』などの著書があるてれびのスキマ氏。テレビ番組の制作者にインタビューを行なうシリーズの第12回【前後編の後編。前編はこちらから。文中一部敬称略】。
* * *
テレビでは味わえない不確実さを楽しむ
オードリー・若林正恭と弘中綾香アナウンサーによる『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日)が、6月3日に番組イベント「生レアさんLIVE 2025 若林が聞きたい地上波NGの夜」を開催した。これは番組開始8年目にして初めてのこと。一方、同じ舟橋政宏が演出を務める、2021年に始まった、齊藤京子とヒコロヒーによる『キョコロヒー』は、既に4回番組イベントを開催している。
その手応えを舟橋はこう語る。
「やっぱり幕が上がって、下りるまでのイベントでしか味わえない緊張感と達成感は、何物にも代え難いですね。何よりも、いつも見てくださっている方々が、直接笑っているところを体感できるという意味のやりがいはとても大きいと思います。あと、お客さんを信用することの大事さを教わりました。
『キョコロヒー』のイベントでは借り物競走の企画をしたんですけど、『会場の中に公共料金を支払ってなくて督促状を持っている人いますか?』と聞いたんです。『これ大丈夫かなあ』って心配だったんですけど、会場の人がひとり手を挙げて、その人がヒーローになりました(笑)。お客さんを信用してどう転んで面白がってくれるぞ、それくらいの感覚でやる。不確定要素があるものを思い切ってやるという度胸はつきましたし、テレビではなかなか味わえないものでした」