6月16日パドレス戦で2シーズンぶりに投手として先発登板した大谷翔平(EPA=時事)
何かの神様を積極的に信じていなくても、運命はあると思ってしまうことがある。大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手が2シーズンぶりに投手として先発登板した同じ日、水原一平元通訳が刑務所に収監された。臨床心理士の岡村美奈さんが、奇しくも2人の運命の日が重なったことについて分析する。
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なぜこの日なのか。ある出来事などが偶然、重なったりするとそう思うことがある。米ドジャースの大谷翔平選手と、違法賭博による借金返済のため大谷選手の銀行口座から多額の預金を不正送金した銀行詐欺罪と嘘の納税申告した罪で、米連邦地裁から禁固刑を言い渡された元通訳、水原一平受刑者の場合もそうだ。
6月16日、大谷選手の二刀流が本拠地ドジャーススタジアムで行われたパドレス戦で復活した。ドジャーススタジアムのあるロサンゼルスでは、移民摘発強化に対する抗議デモが過激化し、スタジアムのある地域は夜間外出禁止令が出ていた。だがこの日のチケットは完売。スタジアムは大勢の観客で埋め尽くされ、大谷選手がマウンドに姿を現すとスタジアムには大歓声が響き渡った。
1イニング28球を投げ、最速では161キロをマーク。2度の手術を受けた選手とは思えないスピードボールを投げた。4打数2安打1失点となったが、ファンらからすれば、633日ぶりに大谷選手がピッチャーマウンドに戻ってきたことだけで嬉しい。
だがそこは大谷選手。やはり活躍する姿を期待してしまう。いや、大谷選手は活躍するものだと思い込んでいる。大谷選手には他のどの選手とも比較できない「絶対価値」があるからだ。
絶対価値とは、それ自体に価値があり、他のものとの比較や関係性によって価値が変わらないものとされる。人はこうあるべきという概念や、こうありたいという理想などとされるが、人は好きな人や趣味の物などにも価値を持つものだ。推し活をしているアーティストやアイドルはその人にとって大切な存在で価値があるが、その価値は他の人に伝わらないことも多い。しかし大谷選手の価値は誰もが知っている。先日ご逝去した長嶋茂雄さんみたいなスーパースターであり、野球を知る誰もが、他の選手以上に彼に価値を感じ、理想を重ね期待を寄せる唯一無二の存在だ。