国内

「休業補償でまず56万円ですね。それから慰謝料。まあ、同額でしょう。だから、56万の倍で、112万!」 性風俗店マネジャーの「本番トラブル」高額請求に、「歌舞伎町弁護士」が抱いた疑念

自身の給料を事実上ホストに管理されている客も(時事通信フォト)

欲望渦巻く新宿・歌舞伎町では、日々、多様な事件が起きている(時事通信フォト)

 欲望渦巻く新宿・歌舞伎町では、日々、多様な事件が起きている。新宿に拠点を構え、これまでに3000件以上の風俗トラブルを担当してきた「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏は、「店や女性キャストと客との間のトラブルの中でも、『本番』に関するごたごたは多い」と話す。

 そうしたトラブルについて、歌舞伎町のお膝元にある紀伊國屋書店新宿本店の「新書部門(6月4週)」でランキング第1位を獲得した若林氏の著書『歌舞伎町弁護士』より、一部抜粋、再構成して紹介する。

 性風俗店での本番トラブルを解決してから半年後、同じ店、同じ源氏名のデリヘル嬢との本番トラブルの相談が持ち込まれ、事態は妙な方向に動き始める──。【全3回の第2回。第1回を読む

 * * *

 今度の依頼者は、45 歳の男性。なんと霞が関の官僚だった。といっても、最初はまだ電話相談の段階。沖縄からかけてきているので、本当に国家公務員なのかはわからないが、とても焦っていることは伝わる。まずは落ち着いてもらおう。

「トラブルが起きたのはいつですか」

「昨夜です」

 あとの流れは、まるで前回の再現VTRである。最中に、スルっと入ってしまうところまでは──。

「彼女がいきなり『ふざけんな』とか叫んで、部屋から出て行ったんです。そしたら、ショートメッセージがどんどん送られてきて」

「誰から、どんな内容?」

「店のマネジャーからで、『強姦は重大な犯罪です。折り返しの電話がなければ、警察に被害届を出します』とか」

 マネジャーは、木本。こちらも前回と同じ。

「でも怖くて、電話できなくて。そうしたら今日、知らない番号からかかってきて」

 相談者が電話に出ると、相手はマネジャーではなく、警察官を名乗ったというのだ。捜査一課の強行犯係(殺人、強盗、性犯罪などの凶悪犯罪の捜査を主に担当)の刑事。これには私も驚いた。

「『(接客したユウは)被害届を出すと言っています。届が出されたら、我々警察も動かざるを得ない。穏便に済ませたいなら、店に連絡しなさい』と言われました。私、逮捕されますか? もし逮捕されたら、ニュースになって……もう何もかもおしまいです」

 これは、さすがに奇妙だ。

 私は、風俗店の顧問弁護士もやっていて、本番強要被害にあった女性キャストの代理人として活動することも多い。私の認識としては、この頃、風俗店での本番強要について、警察は積極的には動きたがらなかった。

「風俗店なんだからそういうこともあるでしょ」という認識の警察官が多かったのだ。今は不同意性交等罪に改正されて警察の対応も変わってきてはいるのだが……ひょっとすると、刑事を名乗る偽者か。美人局系の劇場型詐欺では、この手のニセ警官がしょっちゅう登場する。

 今回、強行犯係の刑事だという男は、フルネームを名乗っていた。依頼者のスマホに残っていた固定電話の番号を確認したところ、本当に警察署の電話番号だった。東京の警察署の電話番号の末尾は「0110」で、大阪は「1234」である。沖縄は東京と同じで「0110」だった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
グラドルデビューした渡部ほのさん
【瀬戸環奈と同じサイズ】新人グラドル・渡部ほのが明かすデビュー秘話「承認欲求が強すぎて皆に見られたい」「超英才教育を受けるも音大3か月で中退」
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン