新宿・歌舞伎町で若者が集う「トー横」
自ら児相に電話し保護された高校1年生
コンカフェ(コンセプトカフェ)で働くユミ(仮名、20歳)は高校1年のとき、自分で児童相談所に電話をして、一時保護されたことがある。父親に「殺すぞ」と言われ、学校へ逃げた。学校から児相に通報し、数か月保護された。筆者がユミに会ったのは2022年末の、新宿のトー横だ。
ユミは父親から身体的虐待を受けていた。母親や祖母はユミを守ることができない。
「いつからか? 小学校ぐらいかな? いや。もう多分その前から。幼稚園とかかな。そのころ、あざだらけだったような気もする。父親が子どもを殴る人という愚痴を母親も親戚中に言っていたから、周囲は知っていた。でも、親戚には『何もできへん』と言われていた。殴られても、母親も祖母も見ているだけ」
高校受験のときのこんなエピソードを教えてくれた。
「スマホを取られた。だからストレス解消で楽器をいじっていた。クリスマスに買ってもらったギター。最初は『カントリー・ロード』を弾こうと思って、練習していたけど、なかなかできない。弦を押さえる力が足りなくて、十分な音が鳴らなかった。そんなところを父親に見つかり、ギターを壊された。『勉強しろ』と言われ、殴られた。ギターは自分の部屋にボロボロになったままになっている。捨てられなくて……」
児相に相談したのはそんなときだ。
「(一時保護所は)家よりも居心地はよかった。一人部屋なのはいいけど、ほかの人と話してはいけないルールだった。決められた時間に勉強したり、食事する。スマホを没収されたので、だいぶ暇だった」
取材をしていると、一時保護所は虐待された子にとっても、必ずしも居心地のよい場所ではないことがわかる。自ら児相に電話をして一時保護所に行ったユミだが、児相をこうして利用できる人は多くはない。
(第2回につづく)
令和5年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数(こども家庭庁)