人間と猿は同じ屋根の下で暮らさない
日本による人類初の人種差別撤廃法案を、裏舞台で首相が暗躍し廃案に追い込んだオーストラリアでは、相変わらず先住民のアボリジニを虐殺し、強姦していた。しかも彼らオーストラリア人は、これをナチスのユダヤ人虐殺のように秘密裏にやっていたわけでは無い。一切隠さず情報は堂々と公開し、「アボリジニ狩り」を楽しんでいた。それは「悪事」では無いからだ。
インドを隷属化させた「本国」イギリスは、インドから搾取を繰り返していた。二〇一〇年、インド人作家マドゥシュリー・ムカージーはその著『Churchill’s Secret War』(『チャーチルの秘密の戦争』)で、大東亜戦争が始まり日本軍が英領ビルマ(現ミャンマー)を占領しインドへの食料補給が断たれたとき、イギリスはインド国内に備蓄米を持っていたにもかかわらず首相ウィンストン・チャーチルが戦争継続に備えて放出を拒否したため、ベンガル地方のインド人約三〇〇万人が餓死した、と告発している。
これは大東亜戦争における日本人の全犠牲者に匹敵する、ものすごい数字である。それなのにチャーチルは、「インド人がウサギのように繁殖するからだ」とイギリスの責任を一切認めなかった。ムカージーの告発以前から、チャーチルが筋金入りの人種差別主義者であったことは歴史研究者の誰もが認める事実である。
アメリカではこの時点でも黒人やアメリカ・インディアン(ネイティブ・アメリカン)に対する激しい差別があり、戦後に製作された「西部劇ドラマ」で描かれた内容とは違って、この時点よりは少し前だが白人のほうがアパッチ族を虐殺し頭の皮を剥ぐという蛮行があたり前のように行なわれていた。
人権弁護士で無い、ただの左翼歴史学者(笑)でもこれらの蛮行を正義だと思う人は一人もいないだろう。しかし、問題は彼らアングロサクソンが恬として恥じること無くやっていたということだ。やめさせるには、彼らに戦争で勝つしかない。しかも、この時点でイギリスの首相はウィンストン・チャーチルその人である。彼らの蛮行を世界から根絶するためには、一度アングロサクソンの国々に戦争で勝ち、屈服させるしかないではないか。
それ以外に方法があったというなら、ぜひ教えていただきたい。まさか「話し合いですべては解決する」などとはおっしゃらないだろうが、念のため言えば、一九一九年に大日本帝国はこの人種差別撤廃問題を国際連盟設立の場の「話し合い」でなんとか解決しようとしたのだが、オーストラリアの暗躍ですべては水泡に帰した。
だが、いかにオーストラリアが暗躍しようと、大英帝国イギリスそして新興の超大国アメリカが賛成しなければ、人種差別撤廃案は闇に葬られることは無かった。人種差別を「正義」とするアングロサクソンの結束は、それほど堅固なのだ。そう思ったからこそ、日本以外の多くの人々の代表が大東亜会議に参加し、大東亜共同宣言に賛成したのである。
これも念のためだが、彼らアングロサクソンが人種差別を当然だと考えていたのは、それが「人種差別では無い」からかもしれない。なにを言っているのだと思うかもしれないが、人種とは「人間の種類」のことである。その「種類」にこだわって差別することを「人種差別」という。しかし最初から相手がケダモノやウサギだと考え、それと人間とを区別しているだけだと考えるならば、自分が人種差別者だという自覚も無くなるわけで、彼らに言わせれば「人間なら猿と同じ屋根の下に暮らさないだろう。それと同じだ」ということなのである。