桑田真澄、清原和博のKKコンビなどの選手を入学に導いた大阪・PL学園の井元俊秀氏
一方、部内の競争は熾烈で、中学時代の金看板を引っさげ入学しても、一度も公式戦出場がないまま最後の夏を終える選手もいる。それゆえ中学硬式野球の関係者からはこんな声も聞こえてくる。
「早い段階からベンチに入れるのは、横浜への進学を迷っている中学生に対するアピールだと思います。つまり、横浜は実力さえあれば学年に関係なくベンチに入れますよ、と。しかし、大きな期待を背負った1年生がいつの間にか出場機会を失っているケースも少なくない。送り出す側としては、大切に育成してもらえるのか不安はあります」
試合に出場できない選手がドロップアウトしそうになった時こそ、グラウンド外での指導も担う教員のスカウトに助け船を出す役割が求められる。
群馬・健大高崎で体育教師をしながらスカウトを行なう赤堀佳敬の「責任を持って受け持ちたい」という言葉には、そうした意味も含まれているように感じられた。スカウト教員の仕事は、逸材を見出し、入学に導くだけでは終わらない。
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/1976年、宮崎県生まれ。ノンフィクションライター。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。2016年に『永遠のPL学園』で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。他の著書に『甲子園と令和の怪物』がある。
※週刊ポスト2025年8月1日号