米吉の披露宴会場での一幕。腕を組んで談笑するふたり
「ふたりともカッとなりやすい性質で、勘三郎さんの女遊びがバレるたびに夫婦ゲンカになっていました。
しかし怒りが激しいのは、深い愛の裏返しということでしょうか。お互い年配になってからも1日に何度もキスを交わし、勘三郎さんが入院してからも“おはよう”と“おやすみ”のキスを欠かさなかったといいます。
そんなふうに全力で愛し合う両親を間近で見て育った七之助さんは、結婚や夫婦というものに対して自然とハードルが上がってしまったんじゃないでしょうか」
実際、好江さんの著書『中村勘三郎 最期の131日 哲明さんと生きて』(集英社)でも激しい夫婦ゲンカの様子が〈私が上からボコボコと夫を殴ったために、彼が、「お前、俺の方が力が強いんだよッ」と反撃した拳があたって、肋骨にヒビが入ったこともありました〉とも綴られている。
義母からも好印象を抱かれて
好江さんは、七代目中村芝翫の次女としても知られる。成駒屋に生まれ、中村屋へと嫁いだ好江さんは、“女将”という立場に強い誇りを持っているという。前出の知人が語る。
「夫や息子のために粉骨砕身する姿勢を称賛する声は多かったですが、むしろ好江さんとしては、“梨園の妻なのだから、これくらい当たり前”という意識で、やりがいを感じていたようです。そのぶん、ほかの人の働きぶりの至らなさが目についてしまうようなところもあったと思います」
七之助のパートナーである杏奈さんは、好江さんのお眼鏡にかなう存在のようだ。
「杏奈さんは、三味線や小唄もこなす芸達者です。幼少期から三味線などを習ってきた好江さんとしては、共通の話題も多いですし、“芸のことがわかる人”と好印象を抱いたことでしょう。好江さんは、杏奈さんの人柄を大変気に入っており、着物や帯をプレゼントしたそうです」
また、七之助の実家の近隣住民はこのように証言する。
「ここ最近、七之助さんご夫婦が仲睦まじげに実家周りを散歩している姿をよく見ます。奥さまは、七之助さんの半歩後ろを歩くような慎ましい感じですね。ご実家とも良い関係を築いているのではないでしょうか」
杏奈さんを迎え、ますますにぎやかになる中村屋のこれからに期待だ。