西武時代の江夏豊氏

西武時代の江夏豊氏

工藤:それはすごい(笑)。でも、あと20キロぐらい球が速くならないとボールは浮かないですね。

江夏:ボールが浮くなんて普通じゃ考えられないからな。でも、そういう時代は来るかも分からないし、来てもらいたい。

工藤:たしかに大谷翔平選手に関しては、我々の想像のはるか上をいく存在ですよね。ホームランを打たれた監督さんが「ベーブ・ルースを超えたんじゃないか」と話されていましたが、きっとナマで見た感覚はそうなんでしょうね。

江夏:そういうことだな。坊やが言うように映像しか見てない俺らがああだこうだって言うより、実際に対戦した人の感覚のほうが合っているもの。

工藤:投手としてもすごいですよ。だって(投手復帰後)すぐに160キロを超えてるんでしょ。段階を踏んでの調整からちょっと力を入れるのは分かるんですけど、打たれたからといって思いっきり投げるというのは、僕ら投手には普通できない。手術明けでギアを上げるのは怖いじゃないですか。2回手術して次に壊したらこの先、難しくなるのに、ランナーが出てビューンって投げられるんだからすごいの一言。

江夏:大谷選手のような日本人選手がもっともっと日本球界から出てきてもらいたい。

工藤:大谷選手に近い選手がどんどん出てくれば、アメリカと日本はもうほぼ同レベルと言ってもいいですからね。

江夏:そうなってほしい。

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取材・文/松永多佳倫(ノンフィクション作家)

【プロフィール】
江夏豊(えなつ・ゆたか)/1948年、兵庫県生まれ。1967年に阪神タイガース入団後、南海、広島、日本ハム、西武と渡り歩く。1984年に引退。シーズン401奪三振、最優秀救援投手5回は現在も日本記録。オールスターでの9連続奪三振、日本シリーズでの「江夏の21球」など様々な伝説を持つ。

工藤公康(くどう・きみやす)/1963年、愛知県生まれ。1982年に西武ライオンズに入団。ダイエー、巨人、横浜などに在籍し、14度のリーグ優勝、11度の日本一に輝く。2011年に引退。2015年、ソフトバンク監督に就任。7年間に日本シリーズを5度制覇。2016年に野球殿堂入り。

松永多佳倫(まつなが・たかりん)/ノンフィクション作家。1968年、岐阜県生まれ。琉球大卒業後、出版社勤務を経て執筆活動開始。『92歳、広岡達朗の正体』(扶桑社)など著書多数。

※週刊ポスト2025年8月8日号

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