子供たちの夏休みの過ごし方が変わってきている(写真/イメージマート)
猛暑の日が続くが、子供たちにとっては夏休みまっただ中。夏休みを取り巻く状況が昭和の頃から激変している。そうした事情とともにコラムニストの石原壮一郎さんが、夏休みを語る際の“大人のたしなみ”について綴る。
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「昭和の夏休み」の思い出。楽しい語り方とみっともない語り方
一年でいちばん暑い季節がやってきました。子どもたちは夏休み真っ只中。ラジオ体操に行ってスタンプをもらったり、学校のプールで水しぶきを上げだりしているんだろうな……というイメージは、ほぼ当てはまらないようです。
このところ夏が来るとちらほらニュースになるのが、多くの地域でラジオ体操の期間が一週間程度に短縮されたりそもそもなくなったりしていることや、夏休みのプール開放を行なっている小中学校が激減しているということ。令和の子どもたちの夏休みは、昭和世代のイメージとは大きく変わっているようです。
時代が変われば夏休みも変わるのは仕方ありません。昭和世代にとって「子どもの頃の夏休みの思い出」は、大切な宝物であり、この時期に同年代と大いに語り合いたい鉄板ネタです。せっかくのおいしい話題を骨の髄まで味わい尽くす方法を考えてみましょう。
とくに活用したいのは、次の5つのキーワード。「ラジオ体操」「プール」「昆虫採集」「宿題(自由研究)」「夏祭り」です。
昨今のラジオ体操やプール開放のあり方を批判するのはお門違い
「ラジオ体操」を語る際は、早起きがつらかったことや、何かのアクシデントでスタンプのパーフェクトを逃したことなどを嘆くのが定番。友だちの家に来ていて参加した異性のイトコに、ひそかにドキドキしたという話で甘酸っぱい気持ちになるのも一興です。
昨今は親の負担を軽減するために期間が短縮されているらしいという話になったら、自分たちの時代に思いを馳せて「子どもは楽しかったけど、親たちはたいへんだっただろうなあ。ありがたいよね」と今さらのねぎらいや感謝を示しましょう。大人として成熟した自分を感じることができます。
また、最近はどの学校でもラジオ体操を熱心に教えるわけではなく、できない子どもも増えているとか。油断していると、中高年のサガで「近ごろの子どもは……」と批判的なことを言いそうになります。それはお門違いだし、老害臭が漂うみっともない反応。グッとふんばって「我々の世代は誰もが当たり前のようにできるんだから、考えてみたらラジオ体操ってすごいよね」と感心することで、ひと味違う中高年感を醸し出せます。
「プール」に関して着目したいのは、日焼けに対する意識の変化。昭和世代が子どもの頃は「黒く日焼けしているほど健康的」という考えがベースにありました。夏休み明けには、(今は伏字にせざるを得ませんが)学校全体で「ク〇〇ボ大会」が行なわれていたのも、時代を感じさせる味わい深いエピソードです。
最近はプール開放が激減しているという話になったときも、油断していると無責任な立場から教師を批判したり子どもの体力の低下を心配したりしがち。「先生も忙しいから、しょうがないよ」「これだけ猛暑だと、プールも危険だからね」などと理解を示す方向で、「昔はよかった」的なことを言って悦に入るというみっともない構図を回避しましょう。