マウンドと金メダルが似合う吉田大輝
桐蔭戦からわずか1か月で何があったのか──。
「もう一度、原点に戻って、投球フォームを見直し、基本のドリルを繰り返しました。投球時に、身体が突っ込み気味で、左肩が開く悪い癖も修正しました。しっかり立って、真っ直ぐ体重移動することを意識したら、低めのボールの伸びと、高めのボールの威力が増したと思います」
大輝にとって復調のきっかけを与えてくれたのも大阪桐蔭だった。それにしても、大輝は兄譲りの夏男っぷりを証明した。父・正樹さんは言う。
「兄弟ともに、夏の季節に入るとスイッチが入るのでしょう。その年一番のピッチングはいつも真夏の試合ですから」
当初、大学進学を予定していた兄の輝星は、甲子園で旋風を起こし、強豪に投げ勝つことで自信を携え、プロ志望届を提出、ドラフト1位で北海道日本ハムに指名された。
プロ志望を公言する大輝もこの夏の結果によっては高校からプロに行く道が拓けてもおかしくない。対戦を願っていた大阪桐蔭は大阪大会の決勝で敗れたが、目指す頂は変わらず、兄が果たせなかった日本一だ。
現在、オリックスに在籍する輝星は今春にトミー・ジョン手術を受け、復帰は早くとも来年の開幕となる。同時期、大輝がプロ野球選手となって1年目のシーズンを迎える──そんな未来を予想したくなるのは、外野の身勝手な妄想だろうか。
【プロフィール】
柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/1976年、宮崎県生まれ。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。2016年に『永遠のPL学園』で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。他の著書に『甲子園と令和の怪物』がある。
※週刊ポスト2025年8月15・22日号