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『スラダン』相田彦一、『エヴァ』鈴原トウジ、『怪獣8号』保科宗四郎…平成・令和の関西弁キャラが持つ“主人公に張り合える存在感”のワケ《日本語学者が解説》

大阪・道頓堀

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 漫画やアニメでもたびたび登場する「関西弁キャラ」。名キャラクターも多く、印象に残っている人も少なくないだろう。その特徴は時代ごとに異なり、大きく分けて「昭和」と「平成・令和」に分けることができるという。

 大阪出身の日本語学者で、キャラクター(属性)に応じてある程度決まってくる話し方のスタイルである「役割語」研究の第一人者・金水敏氏は、昭和の関西弁キャラついて、「厚かましく、下品で、金や食べ物にきたない、垢抜けないおじさん・おばさんキャラ、あるいは若くても年寄り臭いキャラが目立っていた。異物感の強い、どぎついキャラクターであった」と評する。

 そうした、いわば“古典的”な関西キャラから、平成・令和ではどう変化したのか。作り手はどのような意図で関西弁キャラを登場させているのか。

 金水氏の著書『大阪ことばの謎』(SBクリエイティブ)。同書から、平成・令和の関西弁キャラの特徴についてお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【全3回の第2回。第1回を読む】

 * * *
 後藤早貴氏による「漫画における関西弁の特徴と役割」という論文では、陣内正敬氏と友定賢治氏の『関西方言の広がりとコミュニケーションの行方』を参照しながら、1980年代以降に生まれた日本人は関西弁に対する好感度が高まっていることを指摘し、その要因としてマンザイ・ブームの存在を指摘している。

 後藤氏によれば、1980年代以降に生まれた日本人は関西弁キャラに対し、【1】漫才師、【2】元気、【3】ハッキリ発言、【4】人懐っこいというポジティブなイメージを抱きがちであり、【5】ど根性、【6】浪花のあきんど、【7】食い道楽、【8】ハデ、【9】ヤクザといった、どぎつくてネガティブになりがちなイメージは副次的に留まるようになったとしている。

 このような変化を踏まえて、平成・令和のマンガ・アニメ作品における関西弁キャラを見ていくことで、その特徴を探っていきたい。

相田彦一──『SLAM DUNK』

 まず、昭和の『あしたのジョー』にも匹敵する、平成のこのスポーツマンガから見ていこう。

『SLAM DUNK』(スラムダンク)は井上雄彦氏によるスポーツマンガで、1990年から1996年に『週刊少年ジャンプ』に連載された。また1993年から1996年にはテレビアニメ化され、テレビ朝日系で放送された。原作、アニメともに記録的な人気を博した。物語は、不良少年の桜木花道が神奈川県立湘北高校(架空の学校)のバスケットボール部に入部し、仲間とともに成長していく姿を描いたものである。

 相田彦一は、主人公・桜木花道らが所属する湘北高校バスケ部のライバル、陵南高校バスケ部の一年生で、選手としての活躍は描かれていないが、「情報収集が得意」とされている。中学時代は大阪にいたとのことで、かなりコテコテの大阪弁を話す。自称詞は「わい」。

彦一「あんたが流川君やな!!/いや──色々噂はウチの学校でも聞いてるでー!!/なんや中学時代はえらい活躍やったらしいやんか!! 1試合にダンク4本決めたとか50点とったとか/あ ウチの学校ゆうんは陵南高校や 知っとるやろ 今度 試合することになっとる/わいは今年入ったばかりの一年/相田彦一や ヨロシク!!」
(井上雄彦『SLAM DUNK』【3】)

 作者の井上雄彦氏は鹿児島県出身ということで、関西ネイティブではない。それもあってか、相田彦一の話し方は、リアルな関西弁というよりは典型的なコテコテ大阪弁で、大阪人らしさを感じさせる役割を果たすことに主眼が置かれているようだ。

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