ブログでは〈大好きなスケートに一日でも早く復帰できるようにリハビリを頑張っています〉と気丈にふるまっていたが、本音では絶望していた。スケートに捧げてきた人生だからこそ、「めっちゃくちゃ辛かったです」と振り返る。

「勝ち負けより演技の質、とかいっても、結局は成績に追われる。その生活に正直疲れた気持ちはありましたが、かといって満足いくまでやり切ったとはいえない。人生の窮地に立たされた気持ちでした。スケートは辞めざるを得ないとしても、『私はスケートで何を得たんだろう』と闇落ちしちゃって……。何が悪かったのか自分を責める日々で、スケートがなくなった自分には何もできることがないと、お先真っ暗でした」

フィギュア生活は怪我も付き物だ

フィギュア生活は怪我も付き物だ

「成ちゃんとペアがやりたい」運命の出会い

 絶望の淵にいた高橋さんに声をかけたのが、ジュニア時代からのスケート仲間である木原龍一選手だった。

「シングルだった木原選手が次のキャリアとしてペアを考えていて、その相手として私を指名してくれたのです。2014年のソチ五輪で団体戦があるから、それに出場したいと。

 怪我が原因でマーヴィン選手とペアを解消したわけだし、私の怪我が負担にならないか心配でしたが、木原選手は『それがちょうどいい』と言ってくれて。『自分が初心者だから、そもそも難しいリフトまで辿り着けるかどうか分からない。それに、ペアという競技がしたいんじゃなくて、成ちゃんとペアがやりたいんだ』と。嬉しかったですね」

 海外を拠点にしていた高橋さんは、日本では主に中京大学のスケートリンクで練習していた。そして同大学出身の木原選手は、以前から高橋さんが練習する姿や、日本ではなかなか日の当たらないペアで頑張っている姿に触れ、ペアに興味を持ったことを明かしてくれたという。

「頑張っている姿はどこで誰が見ているか分からないな、と心から思いました。努力ってすぐに花開くわけじゃなくて、その時は無駄に思えても絶対に後に繋がる。その確信が持てたのは、木原選手との出会いです。リハビリのモチベーションも上がりました」

ネット掲示板では勝手な憶測も

「成&龍」ペアがスタートする一方で、大手ネット掲示板には『オリンピックに出たいからマーヴィン選手を捨てた』『マーヴィン選手を練習台にした』などと、勝手な憶測も多数書き込まれ、心を痛めた。

「引退を決めてから木原選手に会っているので、時系列が全然違う。『本当はそうじゃないんだけどな』と歯痒くもなりました」

 ただ、引退を決めていたが、選手を続けられるチャンスが出てきたことで、スケートへの向き合い方は変わったという。

「いずれやって来る本当の引退の時には、スケートで自分が何を得たかを言えるようにしたいと考えるようになりました。これまでは自分のことしか見えていなかったけど、スケートから吸収できるものはたくさんあるはずだと思うと、視野も広がりました」

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