最後の緊急事態宣言からもうすぐ4年。2021年9月、菅義偉首相は記者会見で新型コロナウイルス対策で半年近くに及んだ緊急事態宣言を全面解除すると発表した(時事通信フォト)
警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、いまも続くコロナ後遺症に苦しむ人たちについて。
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全国的に新型コロナと百日せきが同時流行している。原因は猛暑。エアコンがなければ命の危険さえあるこの暑さだが、エアコン使用で部屋は乾燥。乾燥した部屋ではウィルスが増殖しやすいらしい。こまめに部屋の換気をと聞くが、こう暑くては窓を開ける気にならない。コロナ禍では徹底されていた換気対策だが、コロナの恐怖が去った今、こまめに換気する人も少ないだろう。
コロナ禍の最中に新型コロナに罹患し、嗅覚が鈍くなってしまったいう20代の警察官に話を聞いた。コロナにかかったのは緊急事態宣言が解かれた頃。感染予防対策を万全にしていたとはいえ、不特定の人が出入りする派出所に勤務していたため、感染経路は不明。感染初期から味覚障害と嗅覚障害が起きた。症状が軽度であれば感染から数週間で症状が改善すると医師にいわれたが、「あれから数年たつが、まだ嗅覚が完全に戻らない」と彼はいう。
「既往症にアレルギー性鼻炎があり、花粉症の時期は鼻がつまり、ぐずぐずが止まらない。鼻が弱かったこともあるが、まさか嗅覚がなくなるとは。においがわからないというのは本当に困る」と彼は話す。「事故や事件現場に行くこともあるので、においがわからないとイザという時に危険のサインを察知できない」のだ。
地方交番に勤務する彼の所には、日々、管轄する担当地域で起きた問題が持ち込まれてくる。「落とし物をした、犬や猫が迷子になったなどの届け出は嗅覚と関係ないので支障ないが、一人暮らしの高齢者の姿が最近見えない、あそこの部屋から異臭がするなどの連絡が入ると緊張する」という。
「猛暑でも、電気代がもったいないとエアコンをつけなかったり、体温調節がうまくいかず、暑い部屋の中で冬服を着ている高齢者もいる。そういう人にもしものことがあった時、現場でまず感じる違和感はにおいの変化。夏場、亡くなって数日経っていれば遺体は腐臭を放ちます。遺体が発するにおいは独特で、嗅いだことのある警察官ならすぐにわかる。でも鼻が利かないとにおいが拾えない。部屋の中の状態が推測できない。異臭がすると訴えられても、においの強さもどんなにおいなのかもわからない」(警察官)
コロナに罹る前は、締め切った高温の部屋で食べ残しが腐っているにおいと、遺体のにおいの違いがわかったが、今は何も感じないという。
「警察官の仕事にこんなに嗅覚が必要だとは思いませんでした。嗅覚がなくて助かるのは腐乱した遺体を処理する時ぐらい。刑事になりたいと思っていましたが、現場でにおいがわからないのは致命的。危険物や薬物があっても自分には察知できない。ガソリンやガスが漏れていてもわらかない。火災現場で働く消防士もそうでしょうが、においは人の命に係わることもある。嗅覚が戻らなければ現場は無理でしょう」(警察官)。嗅覚障害は彼の未来を変えてしまったのだ。