水原とボウヤーが出会ったという2021年の「エンゼルスポーカー大会」(手前はボウヤー、奥左が水原、奥右がフレッチャー)
一平は「臆病で寡黙」
水原からボウヤーへの送金は、たびたび滞った。その度にボウヤー側は携帯電話のメッセージを送り、水原に支払いを催促した。2023年11月半ばには、こんな脅しともとれるメッセージを送っている。
〈ヘイ、一平。もう金曜日の2時だよ。電話になぜ折り返しがないのか分からない。俺は今ニューポートビーチにいて、翔平が犬を連れて歩いている姿を見ているよ。彼のところまで行って、支払いについて聞いてみてもいいんだぜ〉
このメッセージの真意について尋ねると、ボウヤーはこう答えた。
「俺の友人が翔平を見たんだ。それを俺が見たことにして、一平にメッセージを送った。そうでもしなければ彼は電話をくれなかった。でもその後にすぐ折り返しがあったから、一平には臆病なところがある。送金が度々期日までに振り込まれなかったのはイライラした」
臆病で寡黙。それが水原に対してボウヤーが抱いた印象だ。
ボウヤーは友人のデイビッド・フレッチャー(内野手・元エンゼルス)から何度かエンゼル・スタジアムに招かれ、水原にも会った。
「Hi How are you?」「Good to see you.」
簡単な挨拶を交わす程度で、それ以上の会話にはならなかったという。
「一度、一平と友人と3人でカフェに行ったことがあったが、やはり口数が少なかった」
大谷について水原の口から語られたのは、「彼は本当にアメイジングだ」、「翔平はとても良いシーズンを送ることができた」と通り一遍の内容。ボウヤーは、水原が大谷について語るのを控えているように見えたという。
「今思えば、俺から余計なことを聞かれないようにするためだったのかもしれない」
この後、米捜査当局の捜査が進み、2024年3月に水原のスキャンダルが報じられることになる。ボウヤーは大谷について、どうしても腑に落ちない“謎”があると主張するのだった——第3回記事で詳報する。
(第3回につづく)
【プロフィール】
水谷竹秀(みずたに・たけひで)/ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大卒。2011年、『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。10年超のフィリピン滞在歴をもとに「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材している。
※週刊ポスト2025年9月12日号