ホテルのように綺麗な内装の介護施設(写真/イメージマート)

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高級老人ホームが「住み心地の悪い空間」に転じるとき

 入居には、さまざまなきっかけがあるという。例えば、子どもが親の安全を心配し、入居を勧めるケース。また、妻に先立たれた男性が、慣れない家事からの解放を求めて入居することもあるだろう。一方、女性の場合は、長年の家事負担を軽減したいという理由で入居を決める人、孤立を避けて新たなコミュニティを築きたいと考える人もいる。

 前出・脇氏は、ある70代男性のケースを例に挙げ、高級老人ホームが時に「住み心地の悪い空間」に転じる過程を明かす。

「その男性は奥さんに先立たれて一人暮らしをされていました。持病があったことから“子どもたちに迷惑をかけたくない”という思いで、元気なうちから入れる施設を探していました。私が紹介したのは、開設から30年ほどが経過した、約300人規模で活気のある高級老人ホーム。入居金は約5000万円と高額でしたが、資産に余裕のあった男性は迷わず入居を決めました」

 人付き合いが好きなこの男性は、当初、施設内でサークル活動などを満喫していた。しかし、長年、暮らしてきた入居者たちのあいだには強固な人間関係がすでに完成されており、思うように馴染めなかったという。

「男性は仕切りたがる人や経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊していきました。周囲に合わせがちな性格もあって“ちょっとしんどい”と、再び相談しにきました。最終的に男性は別の施設へ移ったが、支払った入居金のうち、初期償却分の30%にあたる約1500万円は戻ってきませんでした」(脇氏)

 老後の経済的不安はないとはいえ、このように高額な資金が戻ってこない事態は、入居者にとって大きな損失となる。入居一時金は、入居後すぐに退去した場合、初期償却分として10~30%が返還されないケースが多い。残りの金額も、償却期間に応じて返還額が変動するため、短期間での退去は金銭的なリスクを伴うのだ。

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