ホテルのように綺麗な内装の介護施設(写真/イメージマート)
「高級老人ホーム」の落とし穴
そもそも、共同生活の場では食事テーブルでの席順など、最低限のコミュニティは自然と形成されるものだ。たとえ高級老人ホームであっても、基本的には隣に入居者がいて、隣人とのコミュニケーションも最低限求められる。脇氏によると、社会的に成功した経営者が、入居後も特別扱いを求め、しかし実際には入居者のうちのひとりとして扱われることに、ギャップを感じるケースも少なくないという。脇氏が続ける。
「年を重ねると、人はわがままになりやすい傾向があります。特に施設側からよく聞くのは、代々続く地主など資産家の方々はトラブルを起こすケースが少ないものの、一代で経営者になったり、投資などでいきなり裕福になった人などは、わがままになりやすいようです。施設に対する要求も過剰で、トラブルを起こしやすい傾向にあるようです」
いくら高級老人ホームであろうと、周囲にあわせる協調性は最低限求められる。自分だけがわがままを言い続けることはできないだろう。
「ほかにも大浴場、ダイニング、シアタールームなど、共用スペースを利用する際には、他の入居者との接触があります。そのため、最低限のルールやマナーは遵守しなければなりません。自室にいれば自身の空間で完結できますが、共用スペースを利用しようとすると、他の入居者との様々なコミュニケーションが必要になります。
いまは元気であっても、最期を看取る人がいないという不安を抱えていたり、家族がいても他人に看てもらいたいと望んだりする人もいます。
ですが、生活しているうちに、そうした当初の思いを忘れてしまうんです。誰しも老いが来るため、同じ施設内で認知症になる人も出てきます。その際、『そのような人と一緒にしてほしくない』といった感情を抱く入居者も少なくありません。
これもまた、ある意味で自分を特別扱いしている感情の発露と言えるでしょう」(脇氏)