急増するタワマン型・高級老人ホームの課題とは(写真/イメージマート)
高級タワーマンションが人気を博し、都市のスカイラインを彩る。その中には大手デベロッパーなどが「老人ホーム」として建設したものも増加しているという。戸建てに住む高齢者を狙った闇バイトなどの犯罪が増えるなかで、セキュリティがより強固なタワマン型の高級老人ホームは、理にかなった選択といえるだろう。
オラガ総研代表取締役の牧野知弘氏によると、ここ最近、健康に対する意識が高く、「より長生きしたい」という強い願望を持つ富裕層の高齢者が増えているという。質の高い医療サービスを受けられるような“終の棲家”に注目が集まっているというのだ。後編記事では高級老人ホーム市場の構造と課題について牧野氏に語ってもらった。【前後編の後編。前編から読む】
牧野氏は大手デベロッパーが高級老人ホーム市場に積極的に参入している背景について「経済的な合理性があるからだ」と指摘する。
「一般のマンション市場と同様に、土地代・建設費などの高騰が進むなか、富裕層をターゲットにすることは、高い収益率を確保するうえで最も手っ取り早い戦略となります。例えば、一般庶民に6000万円でマンションを売るよりも、高齢富裕層に2億円、3億円で売るほうが当然収益性が高くなるため、デベロッパーは富裕層向けのマーケットを“非常に美味しい”と捉えているのです」(牧野氏)
その結果、市場には極めて豪華な内装、ホテルライクなサービス、医療機関との連携などを謳う高額な施設が増加している。しかし、牧野氏はこれを「見せかけの高級感」であると指摘する。
「デベロッパーは“箱”としての豪華さを最大限に演出し、有名シェフが常駐するといった宣伝文句で入居者の期待を煽るが、これが必ずしも入居者の真の幸福や日々の満足に繋がるとは限らない。
富裕層からタワマン型が人気なのは、“非常に高級感がある”という思い込みが根強いのでしょう。入居者も、タワマンに住むことの高揚感やステータスを求めている傾向が強い。また、タワマンは容積率が高く、多くの住戸を詰め込むことで建設費や原価を回収し、大きな利益を上げやすい構造になっている」