実家のテーブルには今も、鍋類やお茶などのA社製品がたくさん置かれている
──お母さんを否定された。
「その言葉にすごく衝撃を受けました。というのは、それまで僕から『お母さん、おかしいよ』とは絶対に言えなかったんです。いろいろ問題がある母だとしても、僕の中で『自分を育ててくれた存在』というのが大きかったので。それに母がA社を始めたのは、自分が金儲けしたいからではなく『家族のため、子どものため』という理由が第一にありましたから」
──お母さんなりの大義があった。
「母はワンオペで子ども3人を育てようと頑張り、家族のために稼ごうとA社に手を出し、それでも足りずパートを掛け持ちしていた。そういう背景を知っているので、自分の中に『母がおかしいのでは』という思いが浮かんでも、否定していたんです。
ところが、妻ではない第三者からも『お母さんが悪い』とハッキリ言われた。その言葉が僕の中でくすぶっていた思いを認めてくれたようで、号泣してしまったんです」
マルチ2世として苦しみ続け、妻やカウンセラーの金言で光明が見えてきた朝比さん。後編では、母親と孫娘との警察沙汰トラブルや、現在の母への複雑な思い、そして顔出しで告発を続ける理由を明かした。
取材・文/前島環夏