総裁席に座る高市早苗氏(共同通信社)
「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて、働いて、働いて、働いて、働いて参ります」──女性初の自民党総裁に就いた高市早苗氏は、勝利後の会見で力強くこう語った。「女性の活躍」が声高に叫ばれる中、第一党の総裁となった高市氏はついに「ガラスの天井」を破り、日本初の女性リーダーになるか注目されている。しかし、その道はいまだ前途多難だ。彼女が40年をかけて突破したガラスの天井は「二枚天井」なのかもしれない。【全4回の第3回。第1回から読む】
「女性リーダー」で日本への「再評価」が高まるか
これまでの憲政史を振り返れば、与党第一党の総裁になった先には、総理に就くことが常道となっている。とはいえ、高市氏が本当の意味でガラスの天井を破るのは総理に選ばれてからだ。元衆議院議員の宮崎謙介さんが語る。
「イタリアのメローニ首相やドイツのメルケル元首相など世界には女性が首脳を務める国が増えていますが、ジェンダー平等や女性の社会進出が進んだとされるアメリカでも、ヒラリー・クリントンやカマラ・ハリスは成し遂げられなかった。私自身、アメリカでも無理なら日本はもっと無理と思っていたので、日本が先にガラスの天井を破ったことは、日本が世界から再評価される大きなターニングポイントになったのではないかと感じています」
国際政治学者の舛添要一さんも「国際関係上のメリットは大きい」と分析する。
「10月末に日米首脳会談が予定されていますが、進次郎さんが首相だったらトランプさんに“なんだこの若造は”と軽くみられたかもしれません。一方、高市さんであればレディーファーストで丁寧に扱われるでしょうし、保守的な政治信条も一致しており、日米関係が良好になることが期待されます」
高市氏がガラスの天井を破った要因として、「女性らしさ」をアピールしすぎなかったことがあるという指摘もある。同じくこれまで初の女性総理候補のひとりと期待されていた自民党の野田聖子元総務会長と比較して宮崎さんが語る。
「女性政策を前面に出す野田さんに対し、高市さんはジェンダーにとらわれない主義主張の人。“女性のために”ではなく、“国民のために”という言葉を多用していました。必ずしも両者の意見が対立するのではないけれど、PRの仕方が違ったといえます。
それが女性の支持層を集めきれない要因でもある一方で、彼女の強さでもあるのです」
こうした高市氏の姿勢について、政治評論家の有馬晴海さんは本人に問いかけたことがある。
「なぜ女性という枕詞を使わないのか、女性政策を打ち出さないのかと尋ねると、その問いには直接答えず、『有馬さん、私は政治家としてやるべきことをやるんです』と静かに語った。“女の政治家”という扱いをしないでほしいと諭されたようで、失礼なことを聞いたなあと反省しました」
他方、選択的夫婦別姓の導入などに消極的なことから「高市早苗は女性の代表ではない」と批判される向きもあるが、それは必ずしも“女性の敵”となりうるわけではないと宮崎さんが語る。
「高市さんは、制度としての選択的夫婦別姓に慎重ではありますが、一方で、現状の戸籍制度は維持しながらも旧姓の使用拡大を進めようと検討するなど、現制度の抱える問題解決には意欲的です。
世の中の半分は男性で、永田町はまだまだ男性中心社会。その中で生き残り、上に立ち、変えていきたいからこそ、賢く立ち回っている印象を受けます」
(第4回に続く。第1回から読む)
※女性セブン2025年10月30日号