高市早苗氏の選挙戦術次第では無党派層を取り込める可能性も(時事通信フォト)
「公明党の離脱によって自民党は窮地に陥った」――どのメディアも判で捺したように高市早苗・新総裁率いる自民党が崖っぷちにあると書き立てている。だが、実は新聞・テレビが報じない衝撃の予測が存在している。保守路線を鮮明にする高市総裁の就任で、離れていた保守層が自民党に回帰している動きが見られており、首相指名後に解散総選挙があれば、自民党が単独過半数に復帰するとの予測もあるのだ。一体何が起きているのか。【全3回の第3回。第1回から読む】
党内に“国民の敵”をつくるという戦術
次の総選挙で予想されるのは、かつての自民支持票の回帰だけではない。
政治ジャーナリスト・藤本順一氏は、高市氏の選挙戦術次第では、無党派層も取り込める可能性があると指摘する。
「選挙戦術として鮮やかだったのは小泉純一郎・首相の郵政解散です。自民党内の郵政民営化反対派をあたかも“国民の敵”のようにみなし、派手に戦って見せるパフォーマンスで無党派層まで支持を広げ、総選挙で大勝利を収めた。高市氏も党内に“国民の敵”をつくり、それを相手に戦いを起こす準備をしている」
その布石が減税を拒む「ラスボス」と呼ばれる財政再建派の宮沢洋一・自民党税調会長の“解任”だという。
高市氏は10月12日に党税調会長の宮沢氏の交代を決めると、「財務省出身の税専門家だけで役員を固めない」「国会議員たちが必要だと考える税制の方向性を闊達に議論できる税制調査会を目指す」と表明し、財務省OBや財務省寄りの議員で固めたインナーと呼ばれる非公式幹部会メンバーを一新する方針を固めた。
「自民党税調会長は税制については総裁や幹事長より強い権限を持つとされ、党組織のなかでも聖域となってきた。財務官僚OBでもある会長の宮沢氏は財務省とともに防衛増税を推進し、年収の壁引き上げ、つまり所得税減税をめぐる国民民主党との交渉では減税を骨抜きにしてきた。国民の減税要求が高まった時には財務省解体デモが国会に押し寄せるなど、世論は減税を潰す財務省への反感が強い。そのシンボルが宮沢税調会長です。
そこで積極財政を掲げる高市氏は、まず宮沢氏を解任して党内の財政再建派や財務省を“国民の敵”と印象づけ、それと戦う高市氏という構図をつくることで無党派層を味方につけようという狙いがある。まさに小泉元首相が郵政選挙でやった時の手法です」(同前)