対戦カードは、ロサンゼルス・ドジャースVSトロント・ブルージェイズ(MLB公式HPより)

NHKの全戦放送に対する懸念 

 はたして「大谷選手らの人気があるから」「視聴者のニーズに応えて視聴率も取れるから」という理由で、日本シリーズの裏番組としてワールドシリーズの再放送をすることは適切なのか。自局も日本シリーズを放送するにもかかわらず、他局の放送日にワールドシリーズの再放送をぶつけることはモラル的にありなのか。NPBはそれらの行為を理由に取材パスの回収という報道の原則を損なうような処分を下していいのか。 

 これらの議論に明確な決着がつけられないまま今年再び“まるかぶり”となるだけに、ネット上に「今年も再放送ある?」「またNPBともめるのでは」などの声があがるのも当然でしょう。では今年の放送はどうなりそうなのか。 

 今年のワールドシリーズはNHKが全試合を放送。深夜帯で1時間のハイライト番組が放送されるのみで、昨年フジテレビが行ったようなゴールデンタイムの再放送はせず、日本シリーズとのバッティングはないようです。ワールドシリーズの放送はNHKと民放が持ち回りで行っているだけに、昨年の議論は来年以降に先送りされたと言っていいでしょう。 

 ただ、NHKが放送することに関しては別の問題点がネット上に浮上しています。 

 それは主に「全試合、地上波の総合テレビで放送しないのか?」と「全試合BSで放送すべき」という2点。まさに真逆とも言える声ですが、前者は「BSを見られない」という人が多いことから、後者はサブチャンネルへの切り替えについて「面倒」「録画失敗する」「画質が落ちる」という理由から不満の声があがっています。 

 これらはNHKならではの問題であり、だからこそNHKのさじ加減ひとつ。現段階で総合テレビでの放送は第1戦のみで、第2戦・第3戦はBSのみの予定ですが、直前になって変更することも考えられます。NHKはより多くの人々に見てもらうために総合テレビで放送するのか。それとも、総合テレビのレギュラー番組を優先するほか、契約数を増やすためにBSでの放送をベースにするのか。前述した理由からどちらを選だとしても一定の不満があがりそうです。 

有料でしか見られない時代に突入か 

 このところ、国内外のサッカーや来春のWBC(World Baseball Classic)など、スポーツ中継が「有料動画配信サービスでの独占配信」となるケースが増えています。ワールドシリーズや日本シリーズは「まだ無料の地上波放送もある」という状態ですが、放映権の高騰などもあって、いつ「有料配信でしか見られない」という段階に入ったとしても驚きはありません。 

 特に来春のWBCに大谷選手が出場し、地上波の視聴者層を含む多くの人々がNetflixなどで「お金を払ってスポーツを見る」ことを経験したら、その流れが加速していくのかもしれません。ただ、もしそうなったら、無料の地上波で見た昨年のような、日本中の人々が一体となって盛り上がるような形にはなりづらいのではないでしょうか。 

 やはり最高峰を決める大会や日本人が世界で活躍するビッグマッチは、年齢や収入などの差を問わず多くの人々が目にふれやすい形であってほしいところ。特に現在のドジャースは日本人選手が3人も在籍し、いずれも活躍しているだけに、今回のワールドシリーズも総合テレビでの全戦放送が妥当な感があります。 

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。 

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