中国軍のJ15戦闘機(時事通信フォト、防衛省ホームページより)
「砲声が鳴る前」始に始まる「侵攻未満のグレーゾーンシナリオ」
「CSISはここ数年、『台湾有事』をテーマとした集中的なウォーゲームとシナリオ研究を行っています。大きく3つのシナリオを描いていて、【1】中国が台湾本島上陸に踏み切る『全面侵攻シナリオ』、【2】高市氏も言及した海上封鎖による“兵糧攻め”を行う『封鎖シナリオ』、【3】敵対勢力に罪をかぶせる形で政府や軍が自作自演で行う偽旗作戦や、情報操作を含む政治戦を仕掛ける『侵攻未満のグレーゾーンシナリオ』です。
防衛関係者の間では、高市氏の台湾有事答弁によって、【3】『グレーゾーンシナリオ』を仕掛けられる危険性の可能性がかなり高まったとみています」(大手紙政治部記者)
CSISは、2022年にレポート「What If… Alternatives to a Chinese Military Invasion of Taiwan(もしも…中国軍による台湾侵攻の代替案)」を発表している。中国は『全面侵攻に替わる選択肢を模索する』と予測。それは『圧力と限定的な軍事作戦』を組み合わせたものになるという。
圧力としては、台湾国内の世論分断や政権不信、親中勢力の台頭を図る情報戦を仕掛けるといったことが想定されている。同時に、日本での 選挙介入や親中勢力への資金提供とともに「SNS上の情報操作」「フェイクニュースの拡散」なども挙げられている。
こうした政治・情報戦による「グレーゾーン危機」をCSISは、「台湾有事のゼロ日目」と位置づけている。
「高市首相の台湾有事答弁によって、その『ゼロ日目』がより近づいたといえるでしょう。今後、さらに中国側を刺激するような発言や動きをすると、有事の危険性はより高まる。事態打開のためには、高市氏の名代として相応のポストの人間が高市氏の親書を中国に持って行くしかない。その役回りは茂木敏充外相が適任ですが、茂木氏は次の総理総裁の座を狙っていることもあり、高市氏にそんな助け船を出すことはしないでしょう。高市氏が答弁を撤回するしか道はありませんが、支持者の手前そんなことはできるはずもない。政権は早くも進退窮まった感があります」(同前)
こじれた日中関係を修復し、迫る有事への緊迫感を和らげるために高市氏に残されたカードは少ない。
