軽く、薄く、曲げることもできるのがフィルム型ペロプスカイト太陽電池
今回の実証実験を始めたJR九州もその規模は小さく、手探り状態といった印象は否めない。
「博多駅での実証実験では、主に列車の振動によって設置したペロブスカイト太陽電池がズレたり、屋根から落ちたりしないかということを検証しています。また、博多駅は海に近いので塩害の影響を測定しています。まだ今後のことは未定ですが、2025年から約1年にわたってデータを収集する予定です。その結果を踏まえて、どのようにペロブスカイト太陽電池を活用するのか、どこに、どれだけ設置するのかといったことを検討していきたいと考えています」(同)
ペロブスカイト太陽電池の導入・活用を模索している鉄道会社は、ほかにもある。JR東海は2025年1月から防音壁に設置するための実証実験を始めた。
JR東海の実証実験は現在のところ研究所内のみとなっているが、この実験結果を踏まえて将来的には東海道新幹線の防音壁に設置することが想定している。
東京―大阪を結ぶ東海道新幹線は総延長が約515.4キロメートルもある。仮に区間の半分にあたる250キロメートルにペロブスカイト太陽電池を設置したとして、莫大な電気を賄うことができるようになる。また、日本の大動脈でもある東海道新幹線に設置されたら、生み出される電力量以上に世間に与えるインパクトは大きい。
大きな可能性を秘めているペロブスカイト太陽電池を用いた太陽光発電だが、まだ世間への認知度は低く、普及が進んでいるとは言い難い。普及促進には一般市民への認知を上げることも不可欠となる。JR九州が博多駅を実証実験の場に選んだ理由のひとつには、この新しい太陽光発電を世間に周知させる目的も含んでいるという。
「博多駅がJR九州管内で一番利用者が多い駅だという点があります。博多駅のコンコースには2番ホームの屋根を見ることができる場所があるので、発電の様子を直に見てもらえます。実際に見てもらうことで理解が進み、それが普及につながると考えています」(同)
鉄道はエネルギー効率や環境負荷の面からエコな公共交通機関と言われて久しい。ペロブスカイト太陽電池を使用した太陽光発電という新しい技術への取り組みによって、鉄道は環境面における優位性を強めるだろう。
