博多駅の1日の利用者数は約49.7万人で九州で最も多い(写真提供/イメージマート)
日本の電力構成は、いまも7割を火力発電に頼っており、二酸化炭素(CO2)排出問題や燃料調達リスクから、見直しを迫られている。政府は太陽光や風力、地熱など自然界に常に存在するものを活用する再生可能エネルギーによる発電の割合を増やす目標を立てている。その再生エネで近ごろ注目が集まっているペロブスカイト太陽発電の実証実験が、JR博多駅で始まった。ライターの小川裕夫氏が、博多駅での試みについてレポートする。
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2025年11月21日、JR九州が福岡県福岡市に立地する博多駅の2番線ホームで日本初となる駅ホームの屋根を活用したペロブスカイト太陽電池による太陽光発電の実証実験を開始した。
「博多駅に設置したペロブスカイト太陽電池による発電は、G2サイズと呼ばれるフィルムを縦2.7メートル、横2.5メートルに敷き詰めています。まだ実証実験の段階なので、総面積としては6.75平方メートルで太陽光発電にしては決して大きな規模ではありません。発電量は約1キロワットアワーです」と説明するのはJR九州広報部の担当者だ。
昨今、再生可能エネルギーが希求される背景には大きく2つの意図が含まれている。ひとつは、地球温暖化の要因とされるCO2の排出を削減すること。もうひとつが、石油などの化石燃料に依存しない持続的可能な社会を目指すというものだ。
その理念に反対する人は誰もいないだろう。しかし、再生可能エネルギーの普及を急ぐあまり、思わぬ副作用も生じている。
従来の太陽光発電所は多くのパネルを敷き詰めることで効率的に電気を生み出している。太陽光発電のパネルを多く敷くには広大なスペースを必要とするが、東京や大阪の都心部は地代が高く、必要な広さの土地を捻出できない。そのため、地価が手頃な地方都市や農山村が適所とされてきた。
農山村の山林を伐採してパネルを一面に敷き詰める大規模太陽光発電システム、いわゆるメガソーラーは再生可能エネルギーを推進する政府の意向もあって次々と造成されていった。しかし、山林を伐採した影響で土砂崩れが起きたり、生態系のバランスが崩れたりするという事態が相次いでいる。これらの因果関係は完全に解明されているわけではないが、太陽光パネルを大量に設置したことに起因しているのではないかとの見方が強まっている。
