ライフ
旧日本軍「最高の軍人」「最低の軍人」78人

《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将

硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)

硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)

 戦後80年となった2025年は新聞・テレビで多くのドキュメンタリーや戦争体験者の証言、特集記事が組まれ、あの戦争を振り返った。そもそも日本にはどんな軍人がいて、どう戦い、この国に何を残したのか。歴史学者、戦史研究者、軍事評論家やジャーナリスト、自衛隊の将官経験者など16人に取材し、旧日本軍(1871~1945年)の「最高の軍人」「最低の軍人」を評価してもらってランキングにした。前編では「最高の軍人」ランキングを紹介する。【前後編の前編】

万歳突撃を許さず「まず部下に水をやれ」

「最高の軍人」を評価する視点と基準は選者によって違う。

 たとえば政治・歴史学者の井上寿一・学習院大学教授は「合理的な軍事戦略の持ち主だったか。軍事と政治のバランス感覚に優れていたか否か」で選び、陸上自衛隊研究本部総合研究部長や防衛大学校教授を歴任した山口昇・元陸将は、「軍人としての能力とパフォーマンス、もう一つはリーダーとしての資質」の両面から選考したと語った。

 そうした選者たちから最も多くのポイントを得た1位は太平洋戦争屈指の激戦地となった硫黄島守備隊指揮官(第109師団長)の栗林忠道・陸軍大将(死後昇級)だ。

 米軍による本土空襲をさせないために小笠原諸島が「絶対国防圏」とされ、小笠原兵団長を兼ねる栗林は硫黄島に司令部を置いてゲリラ戦で米軍を迎え撃った。40日間の攻防で日本軍は守備隊の95%にあたる2万人以上が戦死、米軍は3万人近い死者・負傷者を出したとされる。山口氏が語る。

「そもそも硫黄島の作戦は日本側に勝ち目はなかった。栗林は米国の駐在武官を務め、米国の合理的な軍隊の作戦手法を心得ていたし、物量の凄さも知っていた。だからこそ塹壕を縦横にめぐらせて徹底的に合理的な作戦で対応した。できうる限りの作戦、知略を講じて米軍を翻弄しました。

 当時の日本軍は『万歳突撃』という、特攻隊よりも非合理なことを行なっていた。万歳と叫んで突撃し、やられるだけ。しかし、栗林は万歳突撃を許さなかった。最後まで粘り、捕虜になっても生き残る。そして戻ればまた戦力として相手と戦う。それが軍人のあるべき姿と考えていました。兵士も大切にした。ある時、上官が部下に先んじて水を飲んでいたのを見て、まず部下に水をやれと咎めた。中間管理職に厳しい上官だったようです」

 日本軍の最後の総攻撃の後、日本兵300人余りの遺体が残されたが、米軍の捜索にもかかわらず、栗林の遺体は見つからなかった。

 2位は日露戦争当時の連合艦隊司令長官、東郷平八郎・海軍元帥。日本海海戦ではロシアのバルチック艦隊を壊滅させた。敵艦隊を前に東郷が命じた敵前大回頭、いわゆる“東郷ターン”は世界を驚かせた戦術だった。

「本当の艦隊決戦を決行、成功させたのは世界史でもこの人ひとり。英国のネルソン提督に比して『東洋のネルソン』とも呼ばれるが、戦術的にもネルソンより上で世界史最強の海軍軍人と言っても過言ではない」(憲政史研究家・倉山満氏)

「日本海海戦の勝利で明治日本は存立危機を脱し、独立を守り抜くことができた。世界の諸民族に列強からの独立の機運が生まれた」(軍事ジャーナリスト・井上和彦氏)

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン