16人の専門家が選ぶ「最高の軍人」たち(1~5位)

16人の専門家が選ぶ「最高の軍人」たち(1~5位)

戦果ではなく人命救助で名を残した

 3位につけたのは軍政家の永田鉄山・陸軍中将。軍指揮官として活躍したわけではないため一般の知名度は低いが、陸軍省軍務局長として総力戦体制の構築を推進した軍政家で「陸軍に永田あり」と言われた。だが、日中戦争直前(1936年)、陸軍内の皇道派と統制派の対立で皇道派の将校に陸軍省内で斬殺された。

 政治・歴史学者の前出・井上氏は「殺されなかったら、永田の下で日中戦争は回避できた可能性がある」とした。防衛省防衛研究所の石津朋之・戦史研究センター・主任研究官は「総力戦の本質を一番理解していた陸軍軍人。斬殺は惜しまれる。ただし、仮に生きていたとしても、太平洋戦争への大きな流れを変えるには至らなかっただろう」と指摘するが、2人とも「最高の軍人」の1位に永田氏を挙げた。

 4位は参謀の石原莞爾・陸軍中将。日米による『世界最終戦論』を唱え、関東軍作戦主任参謀として満蒙領有計画(満州国建国)を立案したが、日中戦争では参謀本部第一部長として不拡大方針を主張。満州国を満州人に運営させるべきと考える石原は、東条英機と決定的に対立し、太平洋戦争開戦前に予備役に編入(現役引退)された。

 前出の戦史研究センター・主任研究官の石津氏は、「東条英機との対立などでいささか過大に評価されている面もあるが、世界の潮流及び日本の実力を正確に理解していた数少ない陸軍軍人」と見る。

 5位は福島安正・陸軍大将。情報将校としてポーランド、ロシア、シベリアまで1万8000キロを騎馬で横断。その後もバルカン半島やインドなど各地の調査を行なって日清戦争では第1軍参謀を務め、日露戦争では馬賊を組織した満州義軍の総指揮を執り、ロシア軍の後方攪乱を行なった。ロシア革命を支援してロシア帝国を弱体化させる工作を行なった明石元二郎・陸軍大将(10位)らとともに情報戦で大きな功績をあげた。

 陸上自衛隊幕僚監部調査第二課長などを務めたインテリジェンスの専門家、福山隆・元陸将は「福島は明石元二郎ほど知られてはいませんが、ロシア語に堪能で、強敵ロシアとインテリジェンスで渡り合った。他にもシベリア、満州での諜報活動に従事した石光真清・陸軍少佐や海軍の広瀬武夫・中佐など日露戦争勝利の陰には日本軍のインテリジェンスを支えた軍人がいたことは見逃せません」と評価する。

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