“ジャンボの遺伝子”を受け継ぐ若き才能たちが今、世界を舞台に躍動している
「オレは自分には甘く、人には厳しいから…(笑)」
ジャンボ軍団は“オレがトップダウンで技術を教える”という組織ではなく、軍団のメンバーが高いプロ意識を持ちながら集団を形成し、練習やラウンドを通してお互いの技術を高めていく。ジュニアにもこういった姿勢を期待するとしながら、こう話した。
「若い子に教えるといっても、その子にとって10分の1や20分の1だからね。あとは自分で作っていかないといけない。それが個性であり、自分の実力。オレはレッスンプロじゃないんだから、できるだけレッスンはしない。ケツを叩いて“頑張らんかい”というのがオレのレッスンだね」
翌2021年の第4回セレクションでは、笹生優花や原英莉花といった愛弟子たちが賞金ランキングの上位を席巻していることもあって、後進育成に意欲を見せた。
「オレ自身は全くの夢もない。若い子を見つめていた方が気持ちがいいよ。自分のことより、そっちの方が重点的になるような気がしてきたね。そういう子と接して自分に気合を入れている。その辺りの若さはあるかな。自分を叱咤すること? ないない。オレは自分には甘く、人には厳しいから…(笑)」
2022年の第5回セレクションでは、こんな苦言を呈していた。
「これはジュニア全体に言えることだが、素振りが足りないような気がするね。早くうまくなりたくてボールを打って結果を出したいんだろうな。もっともっと素振りをした方が本当の意味の体に力がつく。そういったことも教えてやらないといけないよね」
その矛先は親にも向いた。
「ゴルフだけやっていたんではなかなか体が大きくならない。これだけ稼げるようになれば親も期待するだろう、特に女子の世界はね。早くうまくしようとして、お父さんのクラブを振らせたりする。だからスイングが崩れていく。そういう意味では最初に教える親の責任は大きいと思うよ。
教える側と教わる側は連携がないといけない。一方的に教えていくのではなくて、こういうことだからこうしないといけないといったように理解する。そういう教わり方ができる子は自分で課題を見つけることができる。そういうことを確実にやってもらいたいね」
そして、愛弟子の笹生や原などは向上心が強く、目標をしっかり持っていると評価する一方で、米ツアーへなびく女子プロにはジャンボ独特の表現でエールを送った。
「最終目的が大きいほどいいわけでもない。あまりに大きすぎて、途中でこけるヤツが多い。目標というのはクリアできるところに置かないといけない。それを越えたら次に挑戦する。富士山を登るのは最後で、まずは近所の裏山から征服しないと。これぐらいの山なら越えられるんだと確認しながら、次に高い山を目指す。それを繰り返して富士山の頂上にたどり着く。そういうことが必要だと思うね。みんな“世界のメジャーを取りたい”とか受験票に書いてくるんだよね。違い過ぎるので笑ってしまう」
門下生はジャンボのゴルフに対する姿勢を見て育ち、ジャンボとの適度な緊張感があることで練習に集中できる。原はそんなジャンボを「正しいところに導いてくれた道しるべ」と表現している。
最後の公の場となった2024年の第7回セレクションで「体調? オレのことはいいんだよ。オレの人生はほとんど終わっているんだから。ただ終わるまでにいいものを見てみたいというのもあるよな。うちの女の子が頑張っているところを、最後に見れるというのもいいよね」と語っていた。
多くの言葉を残したジャンボ。この先も教え子たちの間でジャンボイズムは継承されていくことになる。合掌。
◆鵜飼克郎(ジャーナリスト)
