歌うためにカラオケに行くわけじゃない?(イメージ)
しかし現在でも「密室にならないように覗けるような小窓をつけろ」など法律で決まっているわけではなく、あくまで各自治体の指導要綱や業界、各店舗の自主規制でしかない。20年以上前の平成15(2003)年の内閣府「青少年の現状と施策」(青少年白書)にはこう記されている。
〈日本カラオケスタジオ協会が、外部から室内が見渡せる開口部の取付け等を内容とした自主規制基準の制定や全国各地で管理者等を集め講習会を実施〉
ちなみに当時のカラオケボックス、なかなかお上のイメージが悪いらしく、このような書かれ方もしている。
〈享楽的な色彩の強いスナック、ディスコ、深夜飲食店、ゲームセンター、カラオケボックス等は、しばしば非行の誘引ともなっており、少年非行防止対策上憂慮すべき問題である〉
なんだか昭和の時代の青少年白書のようなイメージだが21世紀、2003年の報告である。たかが20年くらいとはいえ時代や社会の価値観はずいぶんと変わるものだと思わされるがこの通り、カラオケボックスも〈非行の誘引〉とされていた。
〈カラオケボックス等の娯楽施設は、不良行為少年のたまり場となり、あるいは、飲酒、喫煙等の不良行為が行われるおそれが大きい〉
名指しである。隔世の感あるが、テレホンクラブ(店の個室電話で異性と話す場所、テレクラ)やパソコンソフト(ここではいわゆる「エロゲー」を指す)と並んでカラオケボックスが〈不良行為少年のたまり場〉と指摘されている。
そんな時代を経て、いまやカラオケボックスは広く国民に愛される施設として企業の商談や会議、テレワークはもちろん「ママ会プラン」「カラ勉」(カラオケボックスで勉強すること)まで何でもあり、団欒の場でもありビジネスの場でもあり勉強スペースでもある。まったく〈憂慮すべき〉場所ではない。そう、場所そのものは。
「その『気軽』で『何でもあり』を履き違える人たちがいるんですよ。青少年? 大人が大半ですよ」
彼の元バイト先は都心の繁華街ということで場所柄もあるのだろうが、大人が大半とのことでどうしたものか。「そんなとこでヤるのか」と思う人もいるかもしれないが、それこそこうしたカラオケボックスでの行為、この国で毎度報じられてきた「事案」である。
