伊藤さんの切符コレクション
黒煙で真っ黒になったことも
──鉄道に乗っていて印象深いシーンはありますか?
「新潟県と福島県を走る磐越西線のなかで、新津から会津若松間を期間限定でSL列車が走るんですが、サービスで凄い黒煙をあげてくれるんです。それで、外で狙っている撮り鉄さんが撮った瞬間、みんな逃げていくんですよ」
──逃げる!?
「黒煙が凄いので! もうモクモクになりながらマスクしてむせながら撮影しているんです。私も窓を軽く開けたら白いスカートが直ぐに真っ黒になりました。それで中から手を振ったら、必死に撮影を終えた撮り鉄さんが手を振り返してくれて、勝手にシンパシーを感じましたね」
──2022年に最長片道切符の令和第一号となりました。これはどのような挑戦ですか?
「最長片道切符とは、JR路線で北海道から九州まで途中で重複せずに発駅から着駅までの距離が最も長い経路を持つ片道乗車券のことですが、令和になって最初に達成したんです」
──一番きつかったことはどんなことでしたか?
「東京の区間ですね。西国分寺から立川が何時間かかったと思いますか? 正解は7時間半です。西国分寺から武蔵野線で南浦和に出て、京浜東北線でさいたま新都心、東北本線で大宮まで行き、高崎線で倉賀野、そこから八高線で拝島、青梅線で立川となります。途中の休憩を入れて7時間半です」
──2駅を7時間半かけて行く、凄い挑戦ですね! 距離を稼ぎながら、延べ24日間かけて、ゴールしたんですよね。ゴールの瞬間は、どんな気持ちでしたか?
「ゴールの手前あたりを走っている時間がちょうど夕暮れで、長崎のハウステンボスの街明かりが見えるところを通ったんです。その時はちょっと感傷的な気持ちになりましたね。でもゴールした次の瞬間、明日どのルートで帰ろうかって考えていました(笑)」
──切り替えが早い! ちなみに帰りも最長片道切符ですか?
「まさか! そこから帰りは全部新幹線で帰りました(笑)」
