民主化指導者のアウンサンスーチー氏が、かつて断続的に15年にわたり軍に軟禁されていた自宅。クーデター後、入口には監視の兵士が常駐し、時に銃口をこちらに向けていた。(2021年6月21日撮影)
日本に住むミャンマー人が急増する影で
ミャンマーでいったいなにが起きているのか。
興味はあってもなんだかややこしく、知ることを敬遠している人もいるかもしれない。しかし本書に登場するのは、筆者の同僚や近所のおじさんや、ごくふつうの会社員や学生や公務員たちだ。そんな人々と一緒に働き、暮らしながら、筆者はひとりひとりの声を掬い上げていく。だからきわめて共感しやすく、わかりやすい。結果として、ミャンマーのいまを紐解く参考書にもなっている。
そして、いま僕たちのまわりには「ごくふつうのミャンマー人」がたくさんいる。軍による混乱が続き、仕事や将来を失った若者たちが大勢、日本に働きに来ている。技能実習生や特定技能、あるいは日本政府がクーデターを受けて緊急避難的に認めた特定活動といった在留資格で来日するミャンマー人が急増しているのだ。2020年に3万5000人ほどだった在日ミャンマー人は、2025年には16万人を突破。その多くは、介護、工場、建築、農業など「日本人が選ばなくなった仕事」で働き、この社会を支えている。
「ミャンマー人って自己主張が弱いっていうか、自分の国がどれだけたいへんかとか、そういうことを日本でアピールしたりはしないと思うんですね。でも、もし同じ職場にミャンマー人がいるなら、その人が日本に来ざるを得なかった状況に思いを馳せてほしい。そんな日本人が少しでも増えてくれたらいいなと思います」(西方さん)
