新大関での巡業のテーマは「いつも通りやっていく」ことだという
「自分のやるべきことを」
その冬巡業では、各地に“安青錦フィーバー”が巻き起こった。土俵に向かう通路ではファンの声援に笑顔で手を挙げ、花道奥の待機スペースでは群がるファンの写真撮影やサインの求めに気さくに応じる。観客から一番大きな声援を受けたが、浮つく様子はない。
「(声援は)ありがたいことだが、今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」
「稽古場所」ともいわれる巡業は、稽古の充実を図る場でもある。すべての幕内力士が参加し、多くの関取が土俵を取り囲むため、積極的に稽古する力士もいる反面、サボることも自由だ。自ら積極的に土俵に上がればいい稽古ができるため、「巡業で猛稽古し、番付発表後は部屋で調整期間に充てるのが理想」(若手親方)とされる。
基礎運動を中心に稽古熱心なことで知られる安青錦は、どの関取よりも早く土俵下に姿を見せ、ストレッチや四股など常に体を動かしていた。土俵に上がると、若い力士にアドバイスを送り、ぶつかり稽古で胸を出す。大関昇進で稽古相手を指名できるようになり、三番稽古や申し合い稽古では「思い切りくる人を指名したい」と話した。
すでに大関の貫禄十分、横綱も目前だ。偉業への勝負の1年が始まる。
取材・文/鵜飼克郎 撮影/太田真三
※週刊ポスト2026年1月2・9日号
