「春先からは心機一転、新しいことにもチャレンジしています」

PTSD(心的外傷後ストレス障害)であったことを公表した渡邊さん

小さなキーワードやこだわりを仕込んだ

 さて、私の人生にとって、2025年の漢字一字は、「出」だ。この漢字を選んだ理由の一つが、本を2冊出版できたということだ。ジャンルは違うが、半年間のうちに、フォトエッセイ『透明を満たす』と写真集『水平線』を2冊出す、というのはなかなか類を見ない冒険だったと思う。

 フォトエッセイでは、5万字超の文章を書くことに、はじめは本当に私にできるのかと大きな不安も感じていた。しかし、書き始めてみると自分の思考が整理できて意外と筆が進み、文章に小さなキーワードやこだわりを仕込んでいくのが楽しかった。読者がそれに気づいてくれた時の喜びはひとしおだった。

 写真集は、これまでやってきた仕事とはジャンルの違う自己表現の場になった。仕事を休まざるを得なくなって、社会から隔絶された気持ちをずっと抱いてきたが、そんな自分に自信を持てるようになったし、さらに自分を愛せるようになった気がした。新しい自分に出会えた。

 私にはマネージャーがいないから、出版社とのやりとりや製作を全て1人でやり切ったのも大きな糧になった。交渉事やプロモーションなど、私には未知の世界だったから、初めてのことに難しさも感じつつも、全ての工程を見届けられて、知見も広まった。

 予期せぬ世間の流れから、担当編集の皆さんにはたくさんのご迷惑とご心配をおかけしてしまったことを申し訳なく思っていて、そんな日々を支えてくださった方々への感謝は一生忘れない。

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