『道鏡様祭り』のサルタヒコ(深沢さん提供)
──と、言いますと……?
「男根が向こうから追いかけてきたというか……。ちょうどコロナ禍で祭りが減っていた時期に、NHKから『番組に出ませんか?』って電話がかかってきたんです。最初は『いや、もう辞めたんで』って断ったんです。ちゃんとした研究者の先生も紹介しましたし。でもNHK側からすると、実際に祭りの現場に行きまくっている人間が他にいないから、どうしても私じゃないとダメだと」
──専門家不在のニッチすぎる分野ゆえですね。
「しょうがなく引き受けたら、それが呼び水になって、今度はトークイベントの依頼が来たり、気づいたらまた男根の話をしている。『ああ、私はこの世界から逃げられない運命なんだな』って。極めつけは、プライベートで青森の星野リゾートに泊まった時です。まさかそこにも男根を祀った祠があって。『ここまで追ってくるのか!』って恐怖すら感じましたね。もうストーカーですよ」
──もはや運命を感じざるを得ません。そこまで突き詰めても、飽きはこないものなのでしょうか。
「正直、飽きかけています(笑)。男根崇拝の祭りって、パターンが大体決まってるんですよ。特に多いのが『巨大な男根神輿をワッショイ担ぐ系』か、『ひょっとこのような道化が手持ちの男根を持っている系』。この2パターンに集約されるので、最近は見慣れて『あ、このタイプね』って思うようになっちゃって。行き過ぎたせいですが、前ほどの刺激は感じなくなってきたかも知れません」
──そこまでハマっていると、ご家族の反対などはなかったのでしょうか。
「いや、昔からこういう人間だから、家族も誰も驚かないというか。あの、子供の時はミイラが好きだったりとか、メインストリームから外れたものが好きだったんです。その後、神社仏閣を回るのが結構好きになって、ちょうどそれに飽きていた時に、すき間に入り込むように男根崇拝っていうのが出てきたのかなっていう感じはありますね。これからも『好事家』として、変なもの、面白いものを淡々と愛でていくんだと思います」
一度は逃げ出したはずが、気がつけばまた男根に包囲されていた深沢さん。飽きていると言いつつも、その目はまだ見ぬ未知の奇祭を求めてギラギラと輝いているように見えた。
後編記事では、そんな好事家・深沢佳那子さんの脳裏に焼き付いた想像の斜め上を行く、「日本のヤバい男根祭」を紹介する。
(後編につづく)
