川島なお美さんが亡くなってからの10年、ほぼ休みなく働いてきた夫・鎧塚俊彦氏

川島なお美さんが亡くなってからの10年、ほぼ休みなく働いてきた夫・鎧塚俊彦氏

いまも手もとに残す川島さんの「ワイン」

 2024年、「Toshi Yoroizuka」などの経営母体である株式会社サンセリーテは、株式会社OIC(オイシー)グループ(食品スーパー「ロピア」などを運営)に加入し、OICグループに参画することを決断しました。それまで自分なりに菓子職人としてだけでなく、経営についても学び、考え、努力してきました。菓子職人としては一人前でも、経営者としては力が及ばなかったと思っています。しかし、僕の周りには優秀な人がたくさんいる。だから、僕自身も勉強を続けながら、優秀な人たちの知恵をお借りすることにしたのです。

 OICさんの力を借りることで、僕が抱いてきた夢に近づくことができると考えています。従業員の働き方改革はそのひとつですが。それ以外でも、僕は高価格の菓子には手が届かない人にも、おいしい菓子を届けたい。そのためには、「Toshi Yoroizuka」以外の、リーズナブルな価格帯の新しいブランドを起ち上げて、提供していきたいと考えています。

「スイーツを通じてアジアをひとつにする」という夢もあります。日本は政治や歴史、経済、領土など、近隣の国々とさまざまな問題を抱えています。難しい問題は抜きにして、「おいしいスイーツを通してアジアのみんなが幸せになろう!」という“スイーツ外交”なら、アジアの人たちと仲良くなれるのではないか、と信じています。29歳から約8年間、欧州に留学し菓子作りを学ぶなかで、自分が日本人、アジア人であることを強く意識するようになりました。その体験から、アジア人は仲良くしてひとつにならなければ、と強く思っているのです。そのためにもOICさんの力をお借りして、まずは日本のおいしいスイーツをアジアで広く展開して親睦を深めたい、と動いているところです。

 OICさんとの活動のほかに、女房の遺志を引き継ぎ、犬や猫の殺処分ゼロを目的とした「川島なお美動物愛護基金」を設立し、地道な活動をする個人や団体を表彰したり、行き場のない犬猫の譲渡会を開催したりしています。資金は女房が遺したワイン。女房は希少な1960年の「シャトー・マルゴー」などを遺して亡くなったので、それらをオークションに出品し、その売り上げをもとに基金を設立しました。

 でも、女房が生まれた1960年の「ロマネ・コンティ」だけは大事に手もとに残してあります。それをいつ飲もうか……女房の13回忌に、女房がお世話になった方たちとワイワイやりながら飲もうかな、と思ったりしています。

【了。前編から読む

取材・文/中野裕子 撮影/岩松喜平

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