かつてデンマークの国会議員も務め、グリーンランドの自治を訴えて連帯の最前線に立つジュリー・ラデマッハー氏(Instagramより)
「これは外交ではなく、心理戦だ」
こうした世界的緊張の中、最前線に立たされているのが、人口約5万7000人のグリーンランド市民だ。
グリーンランド住民、出身者で構成される市民団体Uagut(本部はコペンハーゲン)のジュリー・ラデマッハー会長が、筆者の取材にこう答えた。
「これは外交交渉ではありません。人々に恐怖を与える心理戦です」
グリーンランドはデンマーク王国の自治領であり、独自の議会と政府を持つ民主社会だが、併合示唆の発言はその前提を踏みにじり、人々の生活を揺さぶった。
恐怖は抽象的ではない。「子どもを連れて、より安全だと思われるデンマークへ移るべきか」──そう真剣に話し合う家庭が増えているという。
軍事衝突が起きていなくとも、「国家として消されるかもしれない」という恐怖は、人々の心を確実に蝕む。
