デンマークの首都コペンハーゲンで、米国によるグリーンランド領有の動きに反対する市民数千人が抗議デモを行った(2026年1月17日、中国通信/時事通信フォト)

デンマークの首都コペンハーゲンで、米国によるグリーンランド領有の動きに反対する市民数千人が抗議デモを行った(2026年1月17日、中国通信/時事通信フォト)

運動に「顔」と「表現力」を与えた女性リーダー

 この危機を世界に伝え、運動を一気に拡大させた象徴的存在が、41歳のラデマッハー氏だ。

 南デンマーク大学で政治学を学び、2007年から2011年までデンマークの国会にあたるフォルケティンの議員を務めた。現在は市民団体・Uagut会長として、グリーンランド支援活動の指揮、国際メディア対応などにあたっている。

 表現力の豊かさと説得力、落ち着いた物腰、気品あふれる佇まい。激情に訴えることなく静かに語る言葉が、国境を越えて共感を呼び、SNSでは「彼女の話を聞いて初めて、グリーンランドが“人の暮らす場所”だと理解した」「この人のためなら声を上げたい」といった声が広がり、運動は国際的に拡大している。

 グリーンランドとデンマークではトランプ氏の併合方針に対して抗議デモが行われ、欧米各国でも連帯デモが相次いだ。NATO(北大西洋条約機構)加盟国がグリーンランド支持を表明したことは、これまで軍事的存在に懐疑的だった住民意識をも変えた。SNSには、「欧州軍を歓迎する。今は安全だと感じる」という声が並ぶ。

 ラデマッハー氏は、トランプ氏の言動が、「グリーンランドとデンマークの関係だけでなく、島内部の分断を狙ったものだった」と指摘する。

 グリーンランドは望んで前線に立ったわけではない。しかし今や、国境・主権・民主主義・法の支配を守れるかの試金石となっている。

 ダボスでは、投資や成長戦略だけではなく、力による現状変更を許すのか、それとも止めるのかという判断も各国首脳に迫られる。

 眠れない夜を過ごす島の人々の声は、ラデマッハー氏の言葉とともに、世界のエリートたちに突きつけられている。

 さて、トランプ氏との強固な同盟関係を強調する高市早苗首相はどう出るか。沈黙を守るのか。

◆高濱賛(在米ジャーナリスト)

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