SNSで批判の的になることも多い岩屋氏の胸中は…
「炎上に惑わされない仕組みが必要では」
川中:先の参院選挙では、ロシアの情報機関「スプートニク」の世論工作疑惑が注目されました。この騒動を受け、政府は外国勢力の選挙介入対策の強化を決めましたが、岩屋さんはこうした民主主義を守るためのSNS規制強化をどう考えますか。
岩屋:これは規制の強化というより、対策の強化かな。規制となると、言論の自由や思想信条の自由にかかわる恐れがあります。我が国は言論の自由を大切に考えている国柄で、それはとても大事なことだと思うから、規制していいものはどういうものかについて議論を丁寧にやる必要がある。 ただ、SNSにできるだけ左右されない、侵されない、影響されないための対策は必要でしょうね。
というのも、私の外相時代にアフリカホームタウンの話があったんですよ。それがある日突然大炎上して、一生懸命お世話しようとしてくれた地方自治体が、朝から晩までネットでの批判や苦情電話で攻撃されてしまい、結局はプロジェクトを中断に、形を変えてやり直すことにしたんですね。
川中:そうでしたね。
岩屋:その後NHKでも解説されていたけれど、炎上の発信元はわずか数人の海外インフルエンサーたちだった。そこには誤解もあったのに、炎上はまたたく間に広がり「アフリカホームタウンなんてけしからん」という空気が形成されてしまったんです。
今後の選挙では外国勢力がそういう仕掛けをする恐れもあるでしょうから、状況をいち早く分析して「真実はこうですよ、あなたは煽られていませんか?」というアラートを国民に発する仕組みはあってもいいのかな、と思います。ただ、国権によって政府が国民をコントロールするようなことはあってはならないと思いますね。
川中:SNSやAIが世論に大きな影響を与える時代となり、ファクトチェックの必要性が問われていますが、今行われているリテラシー教育の強化は必要だと思いますか。
岩屋:国によっては、子どものSNS使用を禁じる国もありますね。オーストラリアだけでなく、EUにも制限している国があるし、アメリカでも16州以上で規制しています。でも、禁止という措置は、本来は望ましいことじゃないと思うんだよね。
というのは、SNSは人々のコミュニケーション空間をものすごく広げたでしょう? 政治家も昔は支持者とやりとりするには直接会うか、電話か手紙。この3つしか方法がなかったんだよね。でも今は、SNSで毎日のように双方向のやりとりができる。だから、民主主義を成熟させていくうえでは、非常にいいツールが提供されたなとは思うんです。
川中:多くの人にとってSNSは日々欠かせないツールとなっていますよね。
岩屋:ただ一方で、SNSには最初から対話をするつもりのない人たちが、虚偽情報や捏造された情報に基づいて暴言を投げつけるという、非常に下劣な行為がまかり通っている。これは大きな負の側面だと思いますよ。
つまり、SNSやネット社会は大きな恩恵をもたらしているけれど、非常によくない面もある。だから、よいところは最大限伸ばして、悪いところを最小限にしていく取り組みをみんなでやらないといけない。当然、“ネチケット教育”は学校現場でしっかりやるべきですよね。
