参院から鞍替えした自民党の青山繁晴氏
「公明党の牙城」と呼ばれてきた兵庫8区。公明党が固い地盤を持ち、小選挙区制となった最初の1996年総選挙で冬柴鐵三・元公明党幹事長(当時は新進党からの出馬)が自民党に勝利して議席を得て以来、過去10回の選挙のうち実質8回公明党が議席を守ってきた。2000年総選挙からは自公の選挙協力で自民党は候補者を立てなかった。だが、今回は選挙の構図が大きく変わった。
「自民党が30年もこの選挙区に候補者を出さなかったのは恥ずべきことだ」
街頭演説でそう訴えるのが参院から鞍替えした自民党の青山繁晴氏だ。
自民党保守派の論客として知られ、テレビのコメンテーターなどを務めた経験がある青山氏は、2022年参院選の比例代表で自民党3位の約37万票を集めて当選した。「石破おろし」の急先鋒となって石破茂・前首相を退陣に追い込み、高市早苗・総裁誕生に一役買った。神戸生まれ、姫路育ちで自民党大阪府連会長を務めたが、今回は8区の尼崎で公明党の牙城に挑む。
「寒いんで、話を5時間くらいにしようかな」「僕に投票してくれとは一度も言ったことがない。投票するしないはみなさんに任せます」
演説では笑いを誘う言い回しと自民党への苦言が持ち味。独特の演説で、選挙カーで回るとすぐに40~50人の聴衆が集まる。その青山氏に話を聞いた。
「僕は落選のリスクが十分にあると思っています。一つは僕を知っていてもまさか尼崎から出ているとは知らない。もう一つは出ていることを知っているけど楽勝だと思っている。これを会わせると政治記者の経験で言えば、一番危ないパターンなんです」
いつになく慎重な言い方だった。
「超有名な方が何で尼崎やねん」
一方、5回連続当選していた公明党前職の中野洋昌氏は中道改革連合に合流して比例代表に回り、中道からは新人で弁護士の弘川欣絵氏が出馬した。尼崎在住のシングルマザーで、難民支援NPO法人の副代表も務める。選挙戦では10分刻みで尼崎市内を細かく回り、公明党の地盤への浸透を図っている。
「弁護士のライフワークとして外国人の方々に寄り添ってきた。日本人ファーストという言葉を聞いた時に、外国人の子供たちがどう思っただろう。中道は生活者ファーストという言葉を合言葉にしている。生活者には国籍は関係ありません。この尼崎に住む人がみんなファーストなんです」
演説でそう訴える弘川氏に手応えを聞いた。
「どうですかね(笑顔)。みなさん一生懸命やっていただいておりますが、まだ手応えがあるかがわからないですね。自民党の有名な候補者もいらっしゃるし……、あと一息だと思っております」
兵庫8区は青山氏の出馬で自民と維新がぶつかる「与党対決」にもなっている。維新の徳安淳子候補は兵庫県議を5期務めて尼崎に強い地盤を持つ。前回総選挙で公明前職に接戦で敗れたものの、比例代表で復活当選した。
「これまで野党として省庁に皆様の思いを伝えてきましたが、与党としての発言の重さを実感しております。野党時代はそこでは何も変わらなかったが、与党になると省庁がよく言うことを聞いてくれるんです。与党の立場を生かして自民党がやれなかったことを、維新がアクセルとして前に進めていきたい」
街頭演説でそう訴えているが、与党対決はやりにくそうだ。本誌・週刊ポストの取材にこんな本音を語った。
「手応え? 相手(自民党の青山候補)が雲をつかむような相手なだけに、正直なところわかりません。超有名な方が何で尼崎やねんと思いながら……30年近く尼崎で活動してきたことを評価していただき、前回(名前を)書いていただいた方に書いていただくしかない」
●兵庫8区 候補者一覧
青山繁晴(73)自民
弘川欣絵(50)中道
板東正恵(45)共産
徳安淳子(64)維新
長谷川羽衣子(44)れいわ
※週刊ポスト2026年2月20日号
