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【朝ドラ】に関するニュースを集めたページです。

“松本劇場”で話題の松本若菜ら今注目の遅咲きアラフォー女優3人の魅力に迫る
主演作こそ少ないが、ドラマや映画などで今、業界の注目を集めているアラフォー女優たちがいる。松本若菜(38才)、中村ゆり(40才)、幸田尚子(42才)の3人だ。コラムニストで放送作家の山田美保子さんがその魅力を解説する。 * * * 土屋太鳳主演の『やんごとなき一族』(フジテレビ系)で異彩を放つ松本若菜が話題だ。松本演じる「美保子」が、土屋演じる「佐都」をいびり倒す際の顔芸ともいうべきオーバーな表情と演技、替え歌などは、「#松本劇場」としてTwitter民の間で盛り上がっている。 そのクセツヨぶりとフューチャーのされ方は『牡丹と薔薇』(東海テレビ・フジテレビ系、2004年)の小沢真珠さながらだ。が、その前に彼女がネットで取沙汰された1月期の『ミステリと言う勿れ』(同)では強さと美しさを併せ持つ全く異なるキャラクターだった。第11話と最終話のみの登場ながら、「あの美人刑事は誰?」と騒がれた松本。小柄でファニーフェイスの伊藤沙莉と並ぶと、松本の美貌がさらに際立つとの声も多かった。 高校一年生のとき、地元・米子で女優の奈美悦子と彼女が所属する「オフィス・ウォーカー」の社長にスカウトされるも断ったというエピソードをもつ松本。その後、22歳で上京し、初オーディションで合格し、『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)で女優デビューする。 これまで本当に多くの作品で見かけたし、2017年には「第39回ヨコハマ映画祭助演女優賞」を映画『愚行録』の演技で受賞している。そして今年1月期と4月期、180度異なる役ながらブレイクを果たした松本は7月8日からスタートする『復讐の未亡人』(テレビ東京系)で連続ドラマ初主演を果たす。原作は『めちゃコミック』でランキング1位を果たし、『金魚妻』でも知られる黒澤R氏の作品。話題にならないハズがないだろう。朝ドラ、連ドラ、CMで存在感を発揮する中村ゆり その“テレ東”にて37歳で民放の連続ドラマ初出演を務めた女優といえば中村ゆり。2020年1月期の『今夜はコの字で』である。翌1月期の『天国と地獄~サイコな2人~』(TBS系)でベンチャー企業の社長を演じた高橋一生の秘書であり良き理解者を演じた際には、高視聴率作品ゆえ、「YURIMARIだ!」とアイドル時代の彼女の活動を思い出した視聴者も多かった。 同7月期には、Kis-My-Ft2北山宏光と夫婦役を演じた話題作『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京系)、10月期には江口のりこ主演の『SUPER RICH』(フジテレビ系)でも難役を好演した。 そうかと思えば、2011年以降の“朝ドラ”(NHK連続テレビ小説)では『おひさま』『梅ちゃん先生』『花子とアン』『わろてんか』『エール』の5作に出演。さらには草なぎ剛と共演した『メルカリ』や、『小野薬品ヘルスケア』の「睡眠バランスが乱れがちなあなたに」「睡眠の質を向上させます」と睡眠サプリ「REMWELL(レムウェル)を訴求するテレビCMでも存在感を発揮している。 先日、エンタメ界では知らない人がいない辣腕の女性プロデューサーと話していたら、「私、中村ゆりさん大好き」と絶賛していた。松本若菜同様、誰もが認める爽やか美人。同性人気が高いという共通点もあるようで、この二人の元にはまだまだ仕事のオファーが舞い込む予感がする。CMで“顔芸”が注目の幸田尚子はM-1出場歴も テレビCMでよく見かけると言えば、幸田尚子も忘れるわけにはいかない。松本や中村に比べると、まだ顔と名前が一致している人は少ないかもしれない。だが、『スヴェンソン』『BASE』『バイク王』のCMなどでロングヘアをなびかせ、共演者に声と顔芸で派手なリアクションをしたり、激しいツッコミを入れたりしているのが彼女だ。 最新の『セブン-イレブン』のCM「THEカップデリレストラン」では、洒落たレストランで男性スタッフから「当店オススメの“たことブロッコリーバジルサラダ”です」「次に、半熟卵と食べる“チャーシューのピリ辛ユッケ仕立て”です」「そして“コールスローサラダ”でございます」とサーヴィスされた幸田がラスト、「って、これ、まさか『セブン-イレブン』の“カップデリシリーズ”なんじゃ」とツッコむ、いつもの(!)パターン。 見れば、「あぁ、あの女性」「確かによく出ている」と思っていただけたのではないか。『無名塾』『劇団青年座』『劇団クロムモリブデン』を経て、現在は個人で運営していると思われるオフィシャルサイトにてオファーを受け付けている。 このサイトは一見の価値がある。というのも、前述の“顔芸”&“ツッコミ”CMとは異なる“イイ女”風の動画が段積みで出てくるからだ。どこかに“笑い”や“オチ”が潜んでいるのではないかと疑いながらスクロールしたのだが、最後までマジだった。それで思ったのは、幸田も松本、中村同様、“超”がつくアラフォー美女だということなのである。「小劇場の美しい女優さん」というシリーズで雑誌に掲載された過去もある。“小劇場”“印象的なCM”“美人”というキーワードで思い出すのは吉田羊だ。吉田が中井貴一や三谷幸喜氏との出会いがきっかけとなって映像の世界で大メジャーになったように、幸田尚子にもシンデレラストーリーを期待してしまう。 一方、バラエティ専門放送作家としては、彼女が女優の中丸シオンと「幸丸事件」なるコンビを結成し、『M-1グランプリ』や『キングオブコント』に出ていたことや、もっと前には「オフィス北野・なべやかん主催」「神保町花月」なる記述がWikipediaに残っていることだ。なべやかんに確認したら、「当時のチラシに名前はありませんでした。芸名、変えていますかね? 記憶から欠落しています」と。2006年の話だが、当時は目立たなかったのだろうか。色々、興味深い。 松本若菜、中村ゆり、そして幸田尚子。遅咲きとも言うべきアラフォー美人女優がいっきに開花しそうな今夏。注目すべき3人だ。◆山田美保子『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)などを手がける放送作家。コメンテーターとして『ドデスカ!』(メ~テレ)、『アップ!』(同)、『1周回って知らない話』(日本テレビ系)、『サンデージャポン』(TBS系)などに出演中。CM各賞の審査員も務める。
2022.06.01 07:00
NEWSポストセブン

上白石萌音&萌歌「最強姉妹」 共演の大和田伸也や演出家が絶賛するポイント
「こんな娘がうちにもほしい!」──テレビを観てそう思った人も少なくないだろう。最近、引っ張りだこの姉妹、上白石萌音(24)と萌歌(22)。幅広い世代に支持される、真っ直ぐなキャラクターはどのように醸成されたのか。【全4回の1回目】 * * * 姉の萌音が昨年、NHK朝ドラ『カムカムエヴリバディ』でヒロインを演じたかと思えば、現在放送中の朝ドラ『ちむどんどん』では、妹の萌歌がヒロインの妹役を務める──。 女優としてだけでなく、声優・歌手としても活躍する「上白石姉妹」は、今、最も注目される“最強姉妹”と言えよう。アイドル評論家の中森明夫氏が語る。「若い子だけでなく老若男女に人気があるのが強い。2人揃って好感度が高く大衆に愛される新時代の国民的女優で、“NHK御用達”なのも納得です」『カムカム』で萌音と共演した俳優・大和田伸也(74)は、初対面から萌音に魅了されっぱなしだったと話す。「顔合わせの挨拶が終わった後、話しかけに行こうかなと思ったら、こちらが動く間もなく走り寄ってきてくれて、『よろしくお願いします』って。すごく礼儀正しい子だなぁと感心しましたね。 僕から見て、萌音ちゃんはまさに理想の孫。こんな娘さんのおじいちゃん役がやれて、本当に幸せでした。最後のシーンでは心の底から萌音ちゃんに『幸せになれ』と思いながら目を閉じました」 大和田は、撮影時の萌音の女優としての理解力の高さに驚いたという。「彼女は役に対する解釈がすごくしっかりしている。それでいてわざとらしくならず、自然体で演じることができるんです。大っぴらには見せませんが非常に努力家で、縫い物をするシーンがあったのですが、彼女は自分の出番がくるまでの間、セットの片隅の暗がりで、ひとりでちくちくと裁縫をしていました」 一方、妹の萌歌はというと人気ドラマ『義母と娘のブルース』(2018年・TBS系)で綾瀬はるかの義娘を演じたことで大ブレイクした。「役者としての彼女は不器用だけど、爆発力がある。天才的というか、僕らの想像を超えたお芝居をしてくるんです」 そう評するのは、同作の演出を担当した平川雄一朗氏。「彼女は常に一生懸命に、真剣に、“心で演じる”ことを意識している。だからこそ人の感情や琴線に触れる演技が出てくるのだと思う。僕の言ったことを理解し、それをそのままやるんじゃなくて、さらに発展させられる。また仕事をご一緒したいなと思わせる、素晴らしい女優さんです」 奇しくも2人ともその素直な人間性と役柄への取り組みが高く評価されているようだ。(第2回に続く)※週刊ポスト2022年6月10・17日号
2022.05.30 16:00
週刊ポスト

黒島結菜、朝ドラの現場に“マイ三線”持参 独自の楽譜も難なく読み、かなりの腕前
「うちは何があっても絶対に辞めません!」──瀟洒なイタリアンレストランのホールに、コックコートを着た新人スタッフの力強い声が響く。沖縄から上京し、料理人になるという夢を叶えるため、東京・銀座のレストランで働くことになった主人公・比嘉暢子(黒島結菜)は、勤務初日からさっそく10連勤を言い渡され、覚悟を問われた──。 5月16日の第6週からNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』は沖縄から舞台を変えて、東京編に突入した。偶然出会った、沖縄県人会会長の推薦でなんとかイタリアンレストランに採用された暢子。第7週(5月23日〜)からは東京で料理人として厨房に立ち、夢に向かって突き進んでいく。 物語はまだ始まったばかり。日々、撮影は進んでいるが、撮影現場ではテレビでは見ることのできないアクシデントや爆笑秘話が隠されていた。黒島は「くんくんしー」が読める! 作中で登場する歌に添えられるのは、沖縄音楽に欠かせない三線の優しい音色だ。キャストの沖縄ことば指導を行い、暢子が下宿する沖縄居酒屋「あまゆ」の主人としても出演する、うちな〜噺家の志ぃさー(藤木勇人)さん(61才)が明かす。「上白石(萌歌)さんのほか、ドラマで演奏シーンのある片岡鶴太郎さんや大森南朋さんらが猛練習していました。さらに、控室には誰でも弾いていい“フリー三線”が置いてある。上白石さんたちが練習しているのにつられ、演奏するシーンのないキャストも手にとっています」 さらに「マイ三線」を持参する出演者もいるという。ヒロインの黒島だ。「黒島さんはお祖父さんから継り受けたという三線を現場に持ってきて練習しています。ドラマの撮影が始まってから、練習を始めたのですが、もうかなりの腕前ですよ。『くんくんしー』という三線独自の楽譜も難なく読んでいて驚きました。演奏に合わせて唄をつけるのが難しく、練習中だとか」(志ぃさーさん) 多くの出演者が練習を重ねたのは、沖縄ことばだ。今作では、「あきさみよー」(なんてこった)、「で〜じまーさん」(とってもおいしい)など、沖縄ことばが頻出する。スタジオでは撮影直前までスマートフォンで、正しいイントネーションが吹き込まれた音源を再生する姿がチラホラと見られるという。過去に『ちゅらさん』(2001年)、『ごちそうさん』(2013年)などの作品にも参加してきた制作統括の小林大児さんが、沖縄ことばが頻出する意図について話す。「意識したのは、21年前の『ちゅらさん』のときよりも沖縄ことばの数を増やしたが、解説やテロップはなるべく少なくしたこと。 いまは、ドラマを見ていて、言葉の意味がわからなくてもスマートフォンで気軽に検索ができる。物語の展開や出演者の表情で沖縄ことばの意味が伝わることもあると思います。わかりやすさに配慮しすぎるよりも、沖縄らしさが色濃い方が、見ているかたにより楽しんでもらえるのではと考えました」 タイトルとなった『ちむどんどん』はワクワクするという意味の沖縄ことばで、ちむは「心」を指す言葉だという。「ちむは、『ちむどんどん』という使われ方に限りません。たとえば、『ちむぐりさん』と言えば、他人が困っているところを見て自分の心も苦しくなるという意味です。沖縄の言葉には、人間の優しさがさりげなく潜んだ言葉が多くあります。こういった優しさがドラマのなかのせりふを通して伝わればいいなと思います」(前出・志ぃさーさん)※女性セブン2022年6月9日号
2022.05.30 07:00
女性セブン

『ちむどんどん』撮影秘話 “海辺で起きた奇跡”と“お蔵入り水鉄砲シーン”
4月にスタートした朝ドラ『ちむどんどん』は、沖縄が舞台の物語。5月16日の第6週から、東京編に突入したが、沖縄ロケで撮影された青い海ややんばるの自然豊かな風景も、ドラマの見どころのひとつだ。『純と愛』(2012年)以来となる沖縄を舞台とした朝ドラとあって、撮影地である沖縄の各市町村の人々も協力を惜しまなかった。ロケでは控室として公民館が使われ、地元の人々との交流もあったという。 過去に『ちゅらさん』(2001年)、『ごちそうさん』(2013年)などの作品にも参加してきた制作統括の小林大児さんは、こう話す。「エキストラとして地元のかたがたに出演いただくだけでなく、差し入れをいただくこともあり、ありがたい限りです。『ムーチー』という沖縄の蒸し菓子は、素朴な見た目も相まって大人気でした」「ムーチー」は甘く味付けた餅をサンニン(月桃)という樹木の葉で巻いた沖縄で古くから食べられているお菓子だ。ドラマの舞台裏でも“沖縄の味”が人と人の心をつないでいた。 そんな沖縄ロケでいちばんの悩みの種は天候だ。亜熱帯気候に属する沖縄の天気は変わりやすい。カラッとした快晴が続いたかと思えば、突然スコールのような雨に見舞われる日もあったという。しかし、天候が撮影に味方したこともあった。黒島結菜(25才)演じるヒロイン・暢子が東京へ旅立つ直前に、比嘉家の3姉妹が海辺で水遊びをするシーンだ。 青空の下、波打ち際で歓声を上げながら水を掛け合ってふざける短いカットだが、美しい風景や、姉妹が心から楽しそうにしている表情を覚えている人も多いのではないか。この前半の名シーンで奇跡が起きていたという。「もともとは、3姉妹と仲間由紀恵さん(42才)が演じる母・優子が芝生でピクニックをするシーンでした。ところが、当初は曇りの予定だったのがきれいに晴れて海もキラキラと美しかったことから、撮影当日に急遽ロケ地を海辺に変更したんです。黒島さんたちも大はしゃぎで、忘れられないシーンになりました」(小林さん・以下同)お蔵入りした入浴シーン 比嘉家のお風呂は薪風呂で、誰かが入浴する際にはほかのきょうだいが薪をくべ、何気ない会話が交わされる。時には、面と向かってはしにくい話が切り出されたり、本音があふれたりする印象的なシーンが多い。しかし、お蔵入りになった映像もあるのだとか。定職につかない賢秀(竜星涼)が町でトラブルを起こしたにもかかわらず、ご機嫌でお風呂に入っているシーンだ。「賢秀がご機嫌で『翼をください』を熱唱しているのに対し、外で薪をくべている暢子が不満をぶつけるシーンでのこと。竜星さんがせりふを言い終わった後にアドリブで手で水鉄砲を撃ったところ、それが黒島さんにかかってしまった。現場は笑いに包まれましたが、結局、放送では水鉄砲のところは割愛されました」 現場に響くのは、笑い声だけではない。「物語の中で『椰子の実』を歌い、見事な歌声を披露した上白石萌歌さん(22才)だけでなく、ほかの出演者も、待ち時間にはふと気がつくと歌を口ずさんでいることがあります。スタジオの控室で、誰かが歌い始めた島唄に周囲のみんなが声を乗せ、“昭和の歌声喫茶”のようになったことがありました」 ドラマでも合唱シーンをぜひ見てみたい。※女性セブン2022年6月9日号
2022.05.29 07:00
女性セブン

川口春奈の凛とした魅力 賛否両論渦巻く『ちむどんどん』で一服の清涼剤に
視聴者にとって鮮烈な印象を残すかどうかは、必ずしも役の大きさに比例しない。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が朝ドラを分析した。 * * * これほど賛否両論渦巻くNHK朝ドラって、見たことない。『ちむどんどん』は本土復帰50年を迎えた沖縄を舞台に、兄と三姉妹、母という家族の物語。ヒロインの次女・比嘉暢子(黒島結菜)は高校を卒業し東京へ出て、銀座の高級イタリアンレストランで修行中です。 十分な準備もせずに当てずっぽうに上京した暢子ですが、トントン拍子に住むところも仕事も見つかる。このヒロインの性格は思い込みが強くてプラス志向、こうだと思えばズンズン我が道を進んでいく。レストランのオーナーに意見までしてしまう。そうした暢子の天真爛漫さ、天衣無縫ぶりが、しかし視聴者には「努力が足りない」「感謝の念がない」「礼儀がなっていない」と突っ込みどころ満載のようです。 私個人としては、このドラマにはもう一人の正統派ヒロインがいる。そんな印象を抱いています。そのヒロインとは……長女・良子(川口春奈)です。 たとえ兄の賢秀(竜星涼)がバーガー店内で大暴れをし借金したままドロンしても。金持ちの息子・金吾(渡辺大知)がわーわー大声で良子に結婚を迫ってきても。ドタバタ喜劇の空気に、どこか浸食されずに一人気品を保っている川口さんがいい。一服の清涼剤のようです。 川口さんはキャラクターの設定や人間関係の全体に目を配り、「貧乏な一家を支える長女としての良子」という人格をしっかりと掴んで演じ切っています。そう、どんなに回りがハチャメチャになっても自分の芝居を続けている。そんな川口さんが自然と中心柱のように見てきてしまうのは、私だけでしょうか。 ここで良子はどんなリアクションをすべきなのか、するのが自然なのか、演技でピタリと見せてくれるので視聴者としては「ほっと」する。簡単にいえば、ヒロインの暢子に反発ばかり覚えてしまうけれど、良子にはスムーズに感情移入できる。半年間も続く朝ドラのヒロインです、少なくとも視聴者が感情移入できたり共感できることが必須条件ではないでしょうか。 そしてヒロインには、迷いつつ矛盾を抱きながら苦闘し困難を突破していく、という心理的葛藤=ストラッグルがどうしても必要でしょう。しかし、残念ながらここまでのところ暢子の内面にそうしたストラッグルを感じることができなくて、もどかしい。 振り返れば、川口さんの名はNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(2021年)の帰蝶役で、一層広く知られることになりました。沢尻エリカさんの代役としていきなり織田信長の正室・帰蝶に抜擢された。しかも、大河ドラマは初めてで注目されましたが、受けて立った川口さんは実にすっくとして見事でした。着物姿が堂々と似合っていて、ふるまいは板についていて、「川口さんが演じて良かった」と雨降って地固まる結果に。 しかし、私自身はその前から川口さんの凜とした姿に注目してきた一人です。スポーツ番組のスペシャルキャスタ-として現場を取材する姿が実に清々しかった。そのスポーツを理解した上で、的確な質問を繰り出す。ムダに笑わず媚びない、愛嬌でごまかさない。物事を聞く時の率直さ、取材者としてアスリートをリスペクトしつつも正面から質問し役割を果たす爽快さ。今回の朝ドラの中でも、そんな彼女の凜とした魅力や爽快な持ち味が効果を上げています。 もちろん、三姉妹でいえば三女・歌子役の上白石萌歌さんも良い味を出している。ただし、いかんせん演技より「歌」が目立つ。ドラマがスタートして2ヶ月ほどの間に「翼をください」「あの素晴しい愛をもう一度」「芭蕉布」「椰子の実」と歌うシーンが入り、何だか歌の担当みたい。 もちろん上白石さんに罪は無く、歌はうまいし音程も正確ですが、こう繰り返し歌うシーンを見せられると「歌はわかりました、もっと演技を」と言いたくなる。その上、タイミングを合わせたかのようにデジタルシングル「椰子の実」を配信リリース、とか聞かされると、何だか大人の事情に巻き込まれた歌姫みたいで、ちょっと痛々しい。 借金の踏み倒しに金の持ち逃げ、詐欺的行為、歌子と良子の入浴シーン、オーナーに喧嘩を売る暢子--今回の朝ドラはSNSのバズりを狙ったかのようなエピソードがてんこ盛り。けれども、小手先の炎上手法は朝ドラの枠にさほどフィットしないかも。何だかんだ言って半年間も続く「ドラマの王様」。ヒロインも王道をしっかりと歩んでいただきたいと思います。
2022.05.28 16:00
NEWSポストセブン

『ちむどんどん』 当初の設定は“4姉妹”、家族に迷惑かける兄は企画になかった
現在放送中の朝ドラ『ちむどんどん』は、2012年放送の『純と愛』以来となる沖縄が舞台の物語。この物語で貫かれるテーマは家族愛だ。比嘉家は、4きょうだい。マイペースでお金にルーズな長兄・賢秀(竜星涼・29才)と、責任感が強くてしっかりものの長女・良子(川口春奈・27才)、天真爛漫で食いしん坊の次女・暢子(黒島結菜・25才)、そして体は弱いが歌の才能があり、芯の強さを持つ三女・歌子(上白石萌歌・22才)だ。 主人公の暢子を演じるのは、『マッサン』(2014年)、『スカーレット』(2019年)に続いて、3度目の朝ドラ出演となる黒島結菜だ。過去に『ちゅらさん』(2001年)、『ごちそうさん』(2013年)などの作品にも参加してきた制作統括の小林大児さんが明かす。「4きょうだいの絆が多くの人の心に刺さっているのは、キャストの演技力の賜でもありますが、実際の関係性も反映されていると思います。カメラが回っていないところでもおしゃべりが絶えず、賢秀を演じる竜星涼さんがいじられキャラのようです」 賢秀はけんかをしたり、借金を抱えたまま行方がわからなくなるなど、たびたび家族に迷惑をかける。しかし、妹を上京させるためにいきなり大金を工面するなど、憎みきれない人物で、物語に欠かせないキャラクターだ。だが、当初は賢秀のキャラクターは企画になかったという。「実は企画段階では一度、『若草物語』や谷崎潤一郎の『細雪』のような4姉妹が想定されていたんです。兄への設定変更は、『マッサン』を手がけた脚本家・羽原大介さんのアイディアです。羽原さんのお父さんが男1人、女3人という4きょうだいだった。身近でその様子を見てきたので、関係性がイメージしやすかったのだとか」(小林さん・以下同) 4きょうだいと母親による比嘉家の物語はまだまだ続いていくが、悔やまれるのは子供たちの個性を尊重し、あたたかい目で見守ってきた一家の父・賢三(大森南朋・50才)が物語の序盤、第2週で亡くなってしまっていることだ。 賢三の存在感は、命が失われてから時間が経つにつれて大きくなっており、視聴者からは、再登場を強く望む声も多く聞かれている。小林さんが物語の今後について話す。「東京編では、これまで明かされていなかった賢三の過去がベールを脱ぎます。賢三は家族だけでなく、鶴見の人々やレストランのオーナーなど、みんなの心の中で“生きている”のです。大森さんの新たな出演シーンも、ぜひ楽しみにしていてください」※女性セブン2022年6月9日号
2022.05.27 16:00
女性セブン

賛否両論の朝ドラを「ちむどんどん」しながら堪能するコツ5
朝ドラともなれば色々な人が色々なことを言うものである。大人力について日々研究するコラムニストの石原壮一郎氏が考察した。 * * * テレビの視聴者は、番組について好き勝手なことを言います。昔は家の中で画面に向かって言うだけでしたが、昨今はtwitterなどのSNSやネットニュースのコメント欄などを通じて、それぞれの声が可視化されるようになりました。 視聴者はひとりでドラマを見ていたとしても、twitterに感想を書き込んだりハッシュタグを活用して多くの人の声を読んだりすれば、大勢でワイワイ言い合っている気になれます。とくにドラマを存分に楽しむうえでは、もはやSNSは欠かせないツールと言えなくもありません。ひときわにぎやかな感想戦が繰り広げられるのが、NHKの朝ドラ。4月頭まで放送されていた「カムカムエヴリバディ」に対しては、ドラマに魅せられた視聴者が毎日たくさんの称賛や応援の声を上げていました。関係者一同、さぞ嬉しくさぞ張り合いがあったことでしょう。 しかし、いったん風向きが変わると、SNSはその凶暴な本性をむき出しにします。世の中で「悪者」と認定された人に対する容赦のなさと同じように、いったん「面白くない」というレッテルが貼られた作品には、まったく容赦ありません。多くの人が「いかに面白くないか」「どこがダメか」を競って語ろうとします。そうなってしまうと、実際に面白いかどうかや、自分が本当はどう感じているかは関係ありません。 ところで、話はコロッと変わりますが、現在放送されているNHKの朝ドラ「ちむどんどん」にも、twitterをはじめとするSNS上に賛否両論さまざまな意見が書き込まれています。何となく否定的な意見が目立つようにも見えますが、ネットの特性上、自分が目にしたい意見ばかりを見つけてしまっている可能性もあるので何とも言えません。迂闊に世間の風向きに忖度して評価を下すのは避けたいところ。たくさんのプロのスタッフが英知を結集して、プロの役者さんが全力で演じてくれているんですから、面白くないわけがありません。ご都合主義にも感じられるストーリー展開や、どう受け止めていいか迷うキャラクター設定も、きっと深い考えや今後への布石があってのことです。5月16日からの週では、主人公の比嘉暢子が東京での料理人修行をスタートさせました。きっとこれからウソのようにストーリーが盛り上がり、誰もが素直に魅力的と思えるヒロインに生まれ変わって、脇役の言動に首をかしげることもなくなるはず。今のところ違和感を覚えている視聴者も、一気にドラマの世界に没入させてもらえるはずです。「ちむどんどん」とは、沖縄の方言で「心がワクワク、ドキドキする」という意味。もちろん、心の底から毎日ちむどんどんして、ドラマを楽しんでいる方は多いでしょう。その気持ちに水を差すつもりは毛頭ありません。いっぽうで、あーだこーだ文句を言いながら(SNSに文句を書き込みながら)見続ける道もあります。 ドラマというのは、満足できなければ見るのをやめればいいだけ。誰も強制はしていません。しかし、朝ドラの場合、とくに見ることが長年の習慣になっていると、たとえ好みに合わなくても気軽に「離脱」しづらいのが厄介なところ。それが朝ドラの恐ろしさであり、視聴者を簡単には離さない底力です。「積極的に見たいわけじゃないけど、離脱もしづらい」という苦しい状況にある人が、「ちむどんどん」を見ながら最大限にちむどんどんするにはどうすればいいのか。5つのコツを考えてみました。その1「暢子のガサツで非常識な行動を嘆き、自分が親や上司ならどう叱るかを考える」その2「善良だけどダメという母親の優子の演じている仲間由紀恵に同情を寄せる」その3「賢秀ニーニーのバカっぷりを見て『自分の身内じゃなくてよかった』と安堵する」その4「twitterの『#ちむどんどん反省会』を読んで荒ぶった心を浄化する」その5「続いて放送される『あさイチ』の博多華丸・大吉さんが、どんな苦し紛れな朝ドラ受けをするかを楽しむ」 友人との会話のネタにしたり、SNSを駆使したりするのもいいでしょう。この5つを実践して、結果的に「ちむどんどん」を見るのが楽しみになれば、めでたしめでたし。しかし、いっこうに楽しくちむどんどんしなかったら、あるいは厄介な方向にちむどんどんし過ぎて苦しむことになったら、いよいよ最後の手段です。漠然とした抵抗感や罪悪感を振り払って、勇気を出して「離脱」の道を選びましょう。そして、きっちり「離脱」できた暁には、がんばった自分、負けなかった自分をホメてあげます。好みに合わない番組を見るのをやめただけで、そこまでの達成感や満足感が得られるなんて、やっぱり朝ドラは素晴らしいですね。しかしまあ、好みに合わないなら、黙って見るのをやめればいいじゃないかという意見もあるでしょう。ごもっともです。ひねくれた感想を言ったり書いたりして、せっかく楽しく見ている人に不愉快な思いをさせるのは、たしかに迷惑。そのへんも「もしかして迷惑かな……」と心配をふくらませることで、別のちむどんどんが味わえます。ああ、無敵なり「ちむどんどん」!
2022.05.21 16:00
NEWSポストセブン

川栄李奈、西野七瀬ら“元アイドル女優”の躍進 彼女らに共通する“意志とプライド”
異例の3人のヒロインによるNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で、最後のバトンを引き継ぎ話題となった川栄李奈(27才)。SNSなどの口コミには「演技だけでなく英語の上手さにも驚いた」、「てっきり子役出身だと思っていた」といった声が上がり、本作で彼女が“元アイドル”だと知る人も多かったようだ。川栄だけでなく、前田敦子(30才)や西野七瀬(27才)など、近年アイドル出身の俳優が目覚ましい活躍を見せている。彼女たちが俳優として大成する理由や共通点について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。 * * * 川栄李奈がヒロインの1人を務めた『カムカムエヴリバディ』は、母から娘へと、3人の女性の100年間を描いた物語。初代ヒロインを上白石萌音(24才)が、2代目を深津絵里(49才)が、3代目を川栄が演じ、物語の一貫性を保ちながらも、ヒロインが変わるたびに作品は異なるカラーを発し話題を呼んだ。川栄が演じたひなたは、両親からの愛情を一身に受けて育ったヒロイン。明るい笑顔が印象的で、その天真爛漫な性格が日本の朝のお茶の間を活気付けていた。 川栄は、素朴な等身大の女性を表現する自然体の演技と、“分かりやすさ”を重視したオーバーアクトを器用に演じ分けていた。この彼女の演技の緩急に惹きつけられていた人は多いことだろう。観る者を飽きさせない演技の幅の広さは、主演俳優にこそ求められるもの。AKB48を卒業後、俳優として相当な場数を踏んできたとはいえ、口コミのように、こんな芸当を見せた川栄を「子役出身者」だと勘違いする人がいてもおかしくはない。 そんな川栄の先輩にあたる前田敦子は、かつて中心メンバーの1人として活躍したAKB48を卒業後、いち早く俳優として名を成してきた存在だ。グループのセンターを務め続けたトップアイドルとあって、いまだアイドル時代の印象を持っている人も多いのではないだろうか。しかし、実情は違う。ドラマや映画で主要キャラクターを演じることは早くからあったが、近年は世界的に評価を集める黒沢清監督(66才)の作品の看板となったり、昨年には野田秀樹(66才)率いるNODA・MAP作品に初参加し、舞台『フェイクスピア』で3役を華麗に演じ分けた姿が記憶に新しい。同作は第29回読売演劇大賞で大賞・最優秀作品賞を受賞した。同作における前田の貢献度はかなり大きかったと思う。 そして、乃木坂46のセンター常連であった西野七瀬も、いまでは俳優として引く手数多の存在だ。まだ演技のキャリアは短いものの、絶えず何かしらの作品に出演している印象がある。現在はドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』(カンテレ・フジテレビ系)で主要人物を演じており、この5月には舞台で海外戯曲に挑み、堤真一(57才)や森田剛(43才)ら手練れの演劇人との共闘を見せている。第2のヒロインを演じたドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)や第45回日本アカデミー賞で優秀助演女優賞を獲得した映画『孤狼の血 LEVEL2』など、自身の代表作と呼べるものも着実に手にしている。 アイドルは、観客を前に常に演じなければならない存在だ。歌や踊りをはじめとする訓練を受け、築き上げた自身のイメージを保つためにパフォーマンスを続ける、並ならぬ強い意志とプライドが必要になるだろう。川栄や前田、西野らの活躍を見ていると、この意志とプライドを共通して感じる。アイドル時代の訓練や日々のパフォーマンスから自身の得意なものを見つけ、それを特性として卒業後の活動を展開させている。彼女たちの場合はそれが、俳優業だったわけだ。アイドルは長く続けられるものではないが、俳優という職業は生涯現役。彼女たちの存在は、現役アイドルである後輩たちの希望にもなっているのではないだろうか。 彼女たちの他にも、アイドル出身者が俳優として成功する例は少なくない。しかし川栄のように“朝ドラのヒロイン”に抜擢されるというのはまた別格だ。朝ドラの視聴者は老若男女を問わず幅広く、固定ファンからの支持も厚い。文字通りの“国民的ドラマ”であり、これでヒロインを務めるというのは、つまり“国民的ヒロイン”になるということだ。川栄は間違いなく今、目覚ましい活躍を見せる元アイドル俳優たちの先頭に立っているだろう。【折田侑駿】文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。
2022.05.21 16:00
NEWSポストセブン

大森南朋、NHKからハリウッドまで「売れ続ける」彼が絶対にやらないこと
ゴールデンウィークに人々でごった返す東京・下北沢の街中を、出演舞台を終えて流行のファットバイク(太いタイヤのマウンテンバイク)で疾走していたのは、大森南朋(50才)。さすがは18才年下の女優小野ゆり子(32才)を妻に持つだけあって、被っていたデニム生地のキャップも含めて、私生活でも若々しいスタイルだ。劇場から出てきた際にも、関係者と満面の笑みで会話をしていて、絶好調をうかがわせた。 この春は、テレビドラマで久々に話題に上った。 4月11日スタートのNHK朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』に、ヒロイン暢子(子供時代・稲垣来泉→女子高生時代・黒島結菜=25才)の父で、仲間由紀恵(42才)演じる優子の夫、比嘉賢三で出演。まだ沖縄が琉球政府時代だった1960年代。沖縄本島北部のやんばるの貧しい一家の、4人の子供と妻に優しい父を好演。2週目の月曜日、わずか6話目で亡くなってしまったが、それでもSNS上では「#賢三ロス」がトレンド入りするほどに、人気を博した。 ある芸能関係者は「『ちむどんどん』第1週の金曜日には『あさイチ』のプレミアムトークにゲスト出演したこともあって、朝ドラ序盤の話題を独占しました」と解説する。 大森は、2007年のNHKの大ヒット連続ドラマ『ハゲタカ』での、冷徹に日本企業を買収していくファンドマネージャー役でブレイク。その後も、NHK大河ドラマ『龍馬伝』(2010年)の武市半平太役、映画『アウトレイジ 最終章』での武闘派役など、主にコワモテ役で実力を発揮してきた。「ただ、一昨年の連続ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)での、癒し系のおじさん家政夫役では、従来をイメージを打破して、“おじキュン”という造語まで生み出す話題となりました」(前出・芸能関係者) 舞踏家で日本屈指の悪役俳優だった麿赤兒(79才)を父に持ち、21才で俳優デビュー。息の長い活躍を続けてきて、2018年にNetflixで公開された映画『アウトサイダー』では、ハリウッド進出まで果たした。 一方で、ロックバンド『月に吠える。』では、ボーカルとギターを担当して、2016年にはアルバムをリリースするなど、多才な才能を発揮している。「僕にとって、仕事、人生っておもしろいこと探しの旅なんじゃないかって思います」 あるインタビューで、そう語っていた大森は、俳優としても「大作映画に出てホームランを打つよりも、バントで出たつもりが二塁まで行ってしまうとか、そういう方が理想なんです」と話す。「今や大物俳優の仲間入りを果たした大森さんですが、彼は“大型作品にしか出ない”などの奢りを感じさせません。売れっ子にありがちなスタンスですが、彼はそれを絶対にやらない。むしろ、小規模な舞台でも低予算の映画でも自分が楽しいと思えればチャレンジしたい、そんな姿勢がある。あの幅広い演技力は、そういう彼の考えが影響しているのでしょう」(映画関係者) 悪役を極めた父の麿と、低予算映画『さよなら渓谷』で、女優真木よう子(39才)を日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に導き、ブルーリボン賞監督賞を受賞した兄の大森立嗣(51才)、そして自身を振り返り「カウンターカルチャー好きは、大森家の血ですね」とも言い切る。 自他共に認めるバイプレイヤー気質の大森は、今後もそんな味のある存在感を放ち続ける。この夜に自転車で帰宅する後ろ姿にも、そんな残り香が漂っていた。
2022.05.17 16:00
NEWSポストセブン

「朝ドラ女優」たちの涙ぐましい努力 壮絶なオーディションの舞台裏
世間から注目される朝ドラに出演することは、女優にとってステータス。キラキラと輝く「朝ドラ女優」たちについて、コラムニストで放送作家の山田美保子さんが分析します。 * * * 黒島結菜サン(25才)がヒロインを務める2022年度前期のNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『ちむどんどん』は、沖縄の本土復帰50年を記念し、本島北部のやんばる地域を舞台にした「家族」の物語です。 ファーストシーンは、ヒロインの子供時代の稲垣来泉チャン(11才)がシークワーサーの木の枝に何度も飛びつき、それがいつの間にか、黒島結菜サンに変わり、果実をもぎとり、かぶりつくという、彼女の清々しいルックスにふさわしいものでした。 10代の頃、「あの子は誰?」と世間をおおいに賑わせたNTTドコモのCM「想いをつなぐネットワーク」篇以来、黒島サンの出演作を追いかけていた私は、ついにこの日が来たか……と感動で震えてしまいました。 実は黒島サンは2014年の『孫のナマエ〜鴎外パッパの命名騒動7日間〜』(NHK BSプレミアム)に出演してから、地方局やスペシャル、続編などを含めるとNHK作品に20本以上も出演。「NHKに育てられた」と言っても過言ではないのです。 思えば、昭和の朝ドラヒロインの多くはほぼ新人で、色がついていない明るく元気なタイプばかりでした。CM出演もNGで、色がついていない優等生の“NHK出身”“朝ドラ女優”なる肩書は、その後のキャリアの邪魔になることも。明るく元気なまま、イメチェンできずに“おばさん”になっていくため、母親役や老け役に移行することがなかなかできなかったというワケです。 でも、開始時間が15分繰り上がり、8時ジャストに変更された2010年度前期の『ゲゲゲの女房』からは、作品にハマれば新人でなくてもヒロインに選ばれるように。『おひさま』の井上真央サン(35才)、『梅ちゃん先生』の堀北真希サン(33才)、『スカーレット』の戸田恵梨香サン(33才)、『なつぞら』の広瀬すずサン(23才)、『カムカムエヴリバディ』の深津絵里サン(49才)や上白石萌音サン(24才)らは、朝ドラのヒロインに選ばれる前から皆、主演女優さんでしたからね。 そして、“朝ドラ”の視聴者層を劇的に変えた立役者ともいうべき『ゲゲゲ〜』の松下奈緒サン(37才)は、夫役・向井理サン(40才)のブレーク前夜とも重なって、NHKの朝の大改編を成功させました。8時15分過ぎ、『あさイチ』の有働由美子アナウンサー(53才)や井ノ原快彦サン(45才)が“朝ドラ”の感想を言い合ったり、時に有働サンが涙ぐんだりするのが「お約束」になったのも『ゲゲゲ〜』から。松下サンは同年の『NHK紅白歌合戦』の紅組司会にも抜擢されました。 忘れもしません。その際、ドSな向井サンがNHKホールを訪れ、開口一番、松下サンに「緊張してんじゃない?」と言い、鼻で笑ったことを(苦笑)。劇中のツーショットがあまりにもお似合いだったため、一部で交際のウワサが流れていたお二人でしたが、あぁ違うんだ……と向井サンの熱烈なファンだった私は安心したことを覚えています。 ただ松下サンは、そこからは高すぎる身長がネックになっているような……。ファッション誌でハイブランドを誰よりも美しく着こなしたり、ピアニストとして音楽祭にお出になったり、『日経スペシャル ガイアの夜明け』(テレビ東京系)で案内人をされたりする方がお似合いと思える、希有な存在の朝ドラ女優さんです。 長身コンビといえば、2013年度後期の『ごちそうさん』の杏サン(36才)と東出昌大サン(34才)も思い出されますよね。撮影のため大阪のホテルに寝泊まりし、作品内で使った小道具や食材などの“消えモノ”を持ち帰って自炊していたという杏サンは、東出サンに演技指導をしていたとの報道もありました。撮休になっていた2014年の年始、『女性セブン』がスクープしたのは、揃ってホームセンターで買い物するツーショット。それがあんなことになるなんて。朝ドラファンをガッカリさせた東出サンの罪は重いです。 でも、杏サンの好感度は変わらず、お子さん三人のママとしてたくましく生きる、カッコよくて知的な女性という印象です。母子揃ってのフランス移住のウワサも絶えませんが、私は杏サンの輝かしい“第二ステージ”に心から期待し、応援したいと思います。朝ドラならではのオーディション その『ごちそうさん』には、「焼氷有りマスの唄」で、高い歌唱力が認められ、一気に知名度を上げ、2016年度前期の『とと姉ちゃん』でヒロインになった高畑充希サン(30才)や『とと姉ちゃん』→2020年度後期の『おちょやん』の杉咲花サン(24才)のように、脇役女優さんたちにも注目が集まっているところです。 その陰には、朝ドラならではの壮絶なオーディションの存在があるといわれます。何千人もの女優さんがヒロインを夢見て参加するオーディションでは、「ヒロインは難しいけれど、友人役や妹役で」というふうに、その場に残るかたたちがいるのです。 代表的なのは、2015年度後期『あさが来た』→2019年度前期『なつぞら』→2021年度前期『おかえりモネ』の清原果耶サン(20才)でしょうか。しかも、そのステップアップの途中で主演したNHK「ドラマ10」枠の『透明なゆりかご』まで話題になったのだから素晴らしいです。「ドラマ10」といえば、2013年度前期の『あまちゃん』で、「入間しおり」として埼玉をアピールした松岡茉優サン(27才)が桐谷健太サン(42才)とW主演した『水族館ガール』も忘れるワケにはいきません。松岡サンは木曜時代劇『銀二貫』でも好演されました。黒島サンほどではありませんが、清原サン、松岡サンのお二人も、朝ドラきっかけでNHKに育てられた女優さんの代表といえるでしょう。 そして、2011年度前期『おひさま』→2014年度前期『花子とアン』→2015年度前期『まれ』の土屋太鳳サン(27才)。彼女がオーディションで「チャンスをください!」と懇願して自身をアピールしたのは有名なエピソード。実は『花子とアン』の撮影が22時30分まで続いていて、オーディションは23時30分からだったそうです。 その前に、『花子〜』のヒロイン、吉高由里子サン(33才)が「私のパワーを全部あげるから、がんばっておいで」と送り出してくれたのだとか。がんばり屋さんのイメージは“昭和の朝ドラヒロイン”だけのものだと思っていたのですが、土屋太鳳サンの“がんばり”というのは一点の曇りもないものなのだそうです。当初、それを疑ってかかっていたプライベートでの友人、青山テルマさん(34才)が「本当に、がんばり屋サンのイイ子」と言っていましたから(笑い)。朝ドラ女優さんは皆さん、がんばり屋さん がんばるといえば、2013年度前期の『あまちゃん』→2017年度前期の『ひよっこ』でヒロインとなった有村架純サン(29才)は、脚本家の岡田惠和さんの強い希望により、オーディションをせずにヒロインになっています。しかし、「みね子」になりきるために5kg増量。東京編の際には「身も心も引き締まっていくのを表現したい」といい、体重を増減させたのです。やっぱり、朝ドラの女優さんというのは皆さん、がんばり屋さんなんですね。 そして、2010年度以降の朝ドラで、私がもっとも熱心に見ていたのは、井上真央サン主演の『おひさま』(マイコさん〈37才〉、満島ひかりサン〈36才〉らとの“白紙同盟”含む)と、能年玲奈(のん)サン(28才)主演の『あまちゃん』と吉高サン主演の『花子とアン』、そして波瑠サン(30才)主演の『あさが来た』。役柄にピタリとハマった女優さんが懸命に好演し、キャストの皆さんと切磋琢磨した現場では、多くのスターが誕生するものです。 なかでも特筆すべきは、『あさが来た』の清原サンと小芝風花サン(25才)、吉岡里帆サン(29才)ではないでしょうか。順番としては、メガネ女子だった吉岡サンが最初に売れて、次に清原サン、小芝サン。朝ドラをステップに国民的な女優さんになるためには、演じたときの年齢も大切なのです。その意味で小芝サンは当時若すぎたのかもしれませんが、『トクサツガガガ』や『歪んだ波紋』、『パラレル東京』などなど、NHKからのご指名女優になりつつある。朝ドラヒロインも夢ではないと思っているところです。 2010年度以降の朝ドラヒロインにはドラマがいっぱい。5月以降も『ちむどんどん』を楽しもうと思います。構成/山田美保子『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)などを手がける放送作家。コメンテーターとして『ドデスカ!』(メ〜テレ)、『アップ!』(同)、『1周回って知らない話』(日本テレビ系)、『サンデージャポン』(TBS系)に出演中。CM各賞の審査員も務める。
2022.05.12 11:00
女性セブン

【動画】上白石萌歌、姉・萌音に続き「姉妹でヒロイン」に期待の声
NHK朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』にヒロインの妹役として 登場している上白石萌歌さん。姉の萌音さんに続き、近い将来、朝ドラのヒロインに抜擢されるのではないかという見方が業界内で広がっています。 ベテラン芸能ライターは「今の萌歌さんの人気からすれば、数年のうちに朝ドラヒロインに選ばれる可能性は大いにあり得ます。姉妹で朝ドラ出演だけでもすごいのに、ともに朝ドラヒロインとなれば快挙です」とコメントしています。
2022.05.09 16:00
NEWSポストセブン

安達祐実、再婚8年目で別居 写真家夫との生活は冷え込み、母親と行動を共に
「同情するなら金をくれ!」(1994年『家なき子』)から28年。私生活では離婚と再婚を経験し、現在は二児の母。酸いも甘いも知る大人の女性に成長した安達祐実(40才)が、再び夫婦の危機を迎えている。どうも今回は独特な夫婦関係が原因だというが──。 春と呼ぶにふさわしいあたたかな日差しが降り注いだ5月初旬の午後、安達祐実は花柄のニットのセットアップという出で立ちで、5才の長男が通う幼稚園に向かった。安達の姿を見つけると、長男は勢いよく彼女に駆け寄る。手を繋いだ2人は安達の実家に立ち寄り、その後ひとりで出てきた彼女が向かったのは、夫と暮らすマンションとは違う建物だった。安達はその翌日も翌々日も長男や長女、母親と外出したが、やはり自宅には帰宅しない。 新型コロナ対策のための行動制限がない3年ぶりのゴールデンウイーク。家族で出かける人も多いなか、安達は夫とは一度たりとも行動を共にしなかった──。 安達といえば、4月頭まで放送されていた連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK)で、25年ぶりとなる朝ドラ出演を果たし、話題を呼んだ。「昨年11月には30年在籍した事務所『サンミュージック』を退社し、信頼する30代のマネジャーと二人三脚で個人事務所を立ち上げました。テレビ出演はもちろん、映画、舞台出演など、仕事はすこぶる順調のようで、近年は再ブレークの到来といわれています」(テレビ局関係者) 私生活では、2005年9月にスピードワゴンの井戸田潤(49才)と授かり婚。翌年4月に長女を出産したが、2009年1月に離婚した。「結婚直後の2006年に井戸田さんが元カノとホテル密会している様子が報じられるなど、原因は井戸田さんの女遊びともいわれています。離婚に際して慰謝料の支払いはなく、長女の親権は安達さんが持つことになりました。 井戸田さんが復縁を強く望んでいたこともあり、2年7か月後に再び同居を始めたときには、元サヤに戻ることも噂されましたが、当時の安達さんの気持ちとしては、井戸田さんは“父親としてはいいけど、パートナーとしてはダメ”という感じでした。1年ほどで同居を解消し、安達さんと長女は群馬の親戚の家で暮らし始めたのです」(別のテレビ局関係者) 仕事のときには安達だけが上京するという生活を続けるなか、彼女に新たな出会いが訪れる。相手は2013年に出版したセミヌード写真集を撮影した、カメラマンの桑島智輝さん(43才)だった。2014年11月に再婚し、2016年7月には長男が誕生した。「桑島さんは安達さんが子役として活躍していた頃からの大ファンで、ふたりきりで撮影するうちに親密な関係になっていったようです。桑島さんは彼女のことを“最高の被写体”と公言し、安達さんの妊娠中も写真を撮り続けていました。 ふたりの関係はなんだか不思議でしたね。たとえばけんかして、安達さんが怒ると自分の撮影を禁止する。それが夫である桑島さんにとって最大の“罰”になるのだとか……(苦笑)。傍から見ていても、独特の雰囲気がありました」(安達の知人) 2019年にはこうした夫婦の共同作業の集大成ともいえる、写真集『我我』が発売された。桑島さんが安達を記録するように撮り続けた1万8500枚に及ぶ写真のなかから厳選した作品集だった。「安達さんの再ブレークのきっかけになったキーマンは桑島さんだといえるでしょう。桑島さんの写真は、安達さんの美しさ、アラフォーとは思えないかわいさを再認識させるものでした」(前出・安達の知人)夫の撮影を拒むように 写真を撮るという行為を通じて関係を深め合ってきたふたり。だが、こうした独自の夫婦生活にも、次第に影が差し始めた。「この春には、井戸田さんとの長女が高校に入学しました。16才になった彼女が少し前から反抗期を迎え、両親の暮らしぶりに疑問を抱くことも増え、その気持ちを安達さんにぶつけることも少なくないとか。彼女と会話をするなかで、だんだん安達さんは自分たち夫婦のカタチがいびつであることに気づいていったといいます」(前出・安達の知人) 周囲の目を客観的に意識し始め、安達も現実を見据えるようになっていったという。「それまでは、悪くいえばおままごとのような夫婦関係で、安達さんが子供たちよりも夫を優先することも少なくなかったとか。そんななか安達さんも子供たちの気持ちを理解し、日常的に夫に写真を撮られることに徐々に違和感を抱くようになっていったそうなんです」(前出・安達の知人) 実際、以前は桑島さんのSNSには連日のように安達の写真がアップされていたが、最近ではその頻度がかなり減っている。「近頃ではふたりで出かけることはほとんどないと聞いています。安達さんはひとりで食事や買い物に出かけたりと、おひとりさまで行動することが増えたみたいです」(ファッション誌関係者) 冒頭の数日間も、安達は夫が待つ家には帰らず、常に子供たちや母親の有里さん(64才)と行動を共にしていた。かつて安達と有里さんは「一卵性母娘」などと呼ばれていた時期もあった。2才でデビューし、天才子役として名を馳せた安達に常に付き添っていたのが有里さんで、どんなときも常に行動を共にし、べったりだったからだ。 有里さんが2006年にヘアヌード写真集を発売するなど世間を騒がせた時期に、2人の間柄はギクシャクし、一時は絶縁状態に陥ったとされた。しかし、いまの母娘関係はきわめて良好のようだ。「井戸田さんとの離婚騒動のとき、安達さんが有里さんに相談したことがきっかけで、少しずつ新しい母娘関係ができていったそうです。2019年には、バラエティー番組で有里さんと15年ぶりに母娘共演。そのとき有里さんは“私なんて、ずっと祐実ちゃんに食べさせてもらわなきゃいけないから、逆らわない”と、安達さんに甘えていることを明かしました。 でも実際は、安達さんは安達さんで、仕事の間は有里さんに子供の面倒を見てもらうなど、かなり甘えている。安達さん自身、番組で“持ちつ持たれつ”と話していましたが、改めて親子関係の大切さを実感しているのかもしれません」(前出・安達の知人) そして母娘関係が良好になっていくのと反比例するように、桑島さんとの夫婦関係はめっきり冷え込んでいった。「夫の撮影を拒むようになって夫婦は徐々にすれ違うようになり、会話も減っていった。最初に、家を出ると決めたのは安達さんで、今年の初め頃にはすでに別居を始めていたようです。彼女は一度こうと決めたらなかなか意志を曲げない頑固な性格。家を出ると決意するや、すぐに住んでいた家の近くに新しい部屋を借りたみたいです」(前出・安達の知人) 別居の事実について桑島さんに問い合わせると、「ノーコメントでお願いします」と回答。安達の個人事務所は「セキュリティ上の問題と、子育て環境を考慮した上です」と回答した。 前出の写真集の発売直前、雑誌のインタビューに夫婦で登場したとき、安達はこう語っていた。《もし今写真が消え去ったら、それもろとも夫婦関係も消え去ると思うんですよ。撮ったり撮られたりすることがなければ、関係が成り立たないみたいな》 再婚から8年目にして、安達は再び大きな岐路に立っている。※女性セブン2022年5月26日号
2022.05.09 06:00
女性セブン

『ちむどんどん』毎朝の15分間が長く感じてしまうのはなぜか
地上波のドラマは視聴習慣と切り離せない部分もある。作品が切り替わる際に視聴者が“比較”してしまうこともやむを得ないだろう。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。 * * * 今週 5月4日、NHK総合で『カムカムエヴリバディ』の総集編が放送されました。「安子編・るい編・ひなた編」という三つの新編集版をあわせると、その長さは何と170分。「別の作品としても楽しめるくらい初めから紡ぎ直した」という力の入れようで「100年の物語と思いがこめられた、カムカム制作チームからの最後のプレゼントです」(制作統括・堀之内礼二郎氏)。というように、いまだに余韻を味わいカムカムロス気分に浸る視聴者もたくさんいるもようです。となれば、自然に比較したくなるのが4月から始まった朝ドラ『ちむどんどん』。 その物語は……本土復帰50年を迎える沖縄が舞台。ヒロイン・比嘉暢子(黒島結菜)はサトウキビ農家の次女で食べることが大好き。父(大森南朋)は逝去し貧しい暮らしを一家で協力して支えています。沖縄が本土復帰した1972年、暢子は高校を卒業して東京へ行き料理人の道へ進み……という展開。 しかし、なぜか毎朝の15分間が長く感じてしまいます。ドラマ世界に没入できず、途中で醒めてしまい、ふと素に戻ると頭の中に「?」が浮かぶ。この疑問符、いったいどこに起因しているのでしょう? 母・優子(仲間由紀恵)が家計のために厳しい肉体労働をするシーン。汚れた顔で肉体労働者の男たちに混じって大きな石を運ぶ……が、すごく重たいはずの石がちっとも重そうに見えてこない。まるで紙か何かで作ったギミックのようで、「苦労する母」というコントのように映って困惑しました。そこまで母が苦労している理由は、残された借金のせいです。 食い扶持を減らす目的で4人兄妹のうちの一人が東京の親戚の元へ行く話になり、暢子がバスに乗りこむ。しかし、突如「嫌だ」とバスから駆け下り引き返し「みんなでシアワセになろう」。あれほど深刻だった借金問題はどうなったのか。そこからいきなり7年後に飛んでしまい「?」。 長男・賢秀(竜星涼)は母の大変な苦労を間近で見ているのになぜか働かずぶらぶら。昼から酒を飲み一攫千金を夢見るニート的キャラというのも「?」。長女・良子(川口春奈)は短大を出た教師で、服は破れた部分につぎはぎ。金吾(渡辺大知)という男がまるでストーカーのごとくしつこく良子を追いかけ、気持ち悪いとしか言えない。なぜこんな人物をわざわざ設定したのか「?」。 三女・歌子(上白石萌歌)も音楽教師・下地(片桐はいり)に付きまとわれ、家にまでおしかけられる。歌の才能を見込んで、という理由らしいがあまりに関係が一方的すぎ。ギャグのつもりなのか、いったいどこに感情移入すればいいのか「?」。 教員・石川(山田裕貴)をめぐって良子にマウントを取る里美(松田るか)の意地悪な顔。料理対決のライバル校が乗り込んで、暢子のつぎはぎのスカートを「きれいなスカート」と見下してイヤミ。さらに、暢子たちの料理を出していた場所を強制的に変えさせてしまう。マウンティングにライバルのいやがらせ、そして投資詐欺などマイナスなエピソードを次々に朝から見せられて「?」。 演技力も個性も意欲もある役者さんたちがズラっと並んでいるのに、起用の方法にも「?」。『昭和元禄落語心中』(NHK)で有楽亭与太郎として新境地を拓いた竜星涼さんが、薄っぺらでワンパターンのオバカな長男に。『火花』(Netflix)で街を疾走するミュージシャンとして切なさをヒシヒシと感じさせた渡辺大知さんが、不快感マックスのストーカーごときなのもがっくり。『ここは今から倫理です。』(NHK)の高校教諭役で、余人を持って代えがたい内省的哲学テイストを表現してみせた山田裕貴さんが、なぜこうもしおれて見えるのか。 一言でいえば、物語に耐えられない軽さ、薄っぺらさを感じる……のですが、もしかしたら敢えて新たな視聴者に見てもらおう、という試みかもしれません。 人間関係を丁寧に描写したり物語の必然性を紡いだりするのはコスパが悪いのでそこはすっ飛ばして、わかりやすく刺激的な短いシーンを重ねて笑いをとったりリアクションをもらう方法は、「倍速視聴」「ネタバレ視聴」が当たり前の世代にむけてのアピールか。何とか朝ドラファンになってもらおう、という挑戦かもしれません。 とはいえ、一つ「厚み」を感じる要素も。ナレーションを担当するジョン・カビラさんの声です。膨らみと温かみのある低音の響き。今後、ナレの声のように奥行きと深みがあり余韻を感じさせる物語になっていってくれることを、一常連視聴者として願っています。
2022.05.07 16:00
NEWSポストセブン

朝ドラ『ちむどんどん』効果で横浜鶴見区の「沖縄タウン」が大盛りあがり
横浜・鶴見で沖縄の食料品や雑貨を販売する「ぷからす家」の担当者が興奮気味に話す。「『ちむどんどん』放送開始直前から販売を開始しました。入荷するとすぐに品切れになってしまいます」 いま、飛ぶように売れているというのが、4月にスタートした朝ドラ『ちむどんどん』の番組タイトルがパッケージに描かれた「琉球泡盛」(600ml、1200円)だ。 売られているのは、都内から電車で行ける横浜・鶴見区にある通称「沖縄タウン」。ドラマでは暢子が上京した後の舞台となる町だ。商店街には沖縄居酒屋や沖縄の食料品を扱う店が並んでおり、旅先のような気分を味わえる。 町の始まりは100年以上もさかのぼる。明治32年、沖縄から初の移民団がハワイへ向かった。その際、寄港地の横浜で伝染病などの検査が行われ、渡航できなかった人たちが鶴見に残ったのだ。大正時代に入ってからは、沖縄から京浜工業地帯に出稼ぎに来た人たちが多く住み、「沖縄タウン」を形成した。「放送直後から観光で訪れてくださるかたが激増しました。ソーキそばやサーターアンダギーなどドラマにも出てくる沖縄料理が人気を集めていますが、なかでも売れているのが泡盛です。ヤンバルクイナやハイビスカスなど、沖縄らしい動植物が描かれた箱がかわいいので、お土産にも喜ばれると思います」(ぷからす家担当者) 製造元である沖縄県酒造協同組合の武田智さんは前出の泡盛の味について自信をのぞかせる。「ほんのりと甘く、すっきりとした味わいが特長です。複数の酒造所の原酒をブレンドし、半年ほど寝かせて味をなじませています。炭酸で割ってシークワーサーの果汁をたらすと、さらに飲みやすくなりますよ。沖縄県内や鶴見の沖縄タウンのほか、ネットでも販売しています」 放送開始直後から盛り上がっている鶴見の沖縄タウンだが、残念ながらロケは行われていない。それでも、鶴見沖縄県人会常務理事の並里典仁さんは笑顔で話す。「ドラマは50年前の話なので、当時の様子を再現するにはセットでなければ難しいようです。県人会としては『ちむどんどん』のパネル展示などで、ドラマと地元を盛り上げていきたいと考えています」 足をのばしてドラマの世界に酔いしれてみては。※女性セブン2022年5月12・19日号
2022.05.07 07:00
女性セブン

『ちむどんどん』、沖縄が舞台だからこそ描ける深い人間ドラマと絶景の強み
4月からスタートした黒島結菜主演のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』。沖縄を舞台にした朝ドラとしては3作目となる。コラムニストのペリー荻野さんは「沖縄だからできることと沖縄だから考えることがある」と言う。以下、ペリーさんによる解説だ。 * * *「ちむどんどんしてきたー!!」 ヒロインの暢子(黒島結菜)が叫ぶ今週の『ちむどんどん』。決まりかけていた就職を断り、気持ちがふさいでいる中、コンテストに参加する料理部の助っ人になったことで、出てきた“胸がわくわくする気持ち”を表す言葉である。 物語は、沖縄の「やんばる地域」で生まれ育った暢子とその兄弟たちが、傷つきながらも励まし合って生きる姿を描く。しっかり者の長女・良子(川口春奈)は念願の先生になり、気になる人がいる様子。三女の歌子(上白石萌歌)は、音楽教師の下地(片桐はいり)に追いかけられる。中でも心配なのは、仕事が定まらず、一攫千金を狙っているらしい長男・賢秀(竜星涼)。朝ドラは、「主人公が親戚のように思えたらヒットする」というのが、私の作った鉄則だが、そろそろこの兄妹の“親戚感”が増してきた。 特に2017年のドラマ『アシガール』のファンだった身としては、戦国時代にタイムスリップし、戦場で地元の若様(伊藤健太郎)を「若君さま~」と全力疾走で追いかけていた黒島が、このドラマでも足が速い設定で校庭を走っているのを見れば「やんばるアシガール!!」と応援せずにはいられないというものだ。 しかし、このドラマを見ていて、「沖縄を舞台にしたドラマには、沖縄だからできることと沖縄だから考えることがある」と気がついた。 沖縄だからできることの第一は、なんといっても圧倒的な美しさの風景が織り込めることだ。青い海と森の緑。素晴らしい景色を眺められるだけで、朝から幸せな気持ちになる。音楽、食、ゆったりした時間の感覚、これは沖縄ドラマならではの大きな強みだ。 一方で、沖縄だから考えることもある。過去に沖縄が舞台になった朝ドラは2001年『ちゅらさん』、2012年の『純と愛』があるが、本土復帰前の時代を描くのは、『ちむどんどん』が初めてだ。ドラマにも出てきたが、通貨は米ドルで、本土へ行くためには「日本渡航証明書」というパスポートが必要だった。折しも2日にBSプレミアムで放送された『ふたりのウルトラマン』も同じ時代が舞台で、「ウルトラ」シリーズの沖縄出身の脚本家・上原正三(佐久本宝)は、仲間に本土復帰を祝われると「何がめでたい」と不快感をあらわにする。 上原とともに活躍した金城哲夫(満島真之介)は、国際海洋博の式典演出を担当するが、沖縄では海洋博反対運動が激しく、金城は苦しむことになる。沖縄の人たちが、どんな思いで本土復帰の日を迎えたか、改めて考えずにはいられない内容だった。『ちむどんどん』で、大きく変わっていく環境、価値観などがどれほど描かれていくのか。沖縄ならではのこの事情が、人間ドラマを深くするのは間違いない。それこそが、この時代を舞台にした意味だ。こどものころから「おいしいものノート」をつけていた暢子は、沖縄の料理に夢をかけて生きていくことになる。時代にもまれる四兄弟には、たくましく生きてほしいと願う。
2022.05.06 16:00
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