国際情報一覧/5ページ

国際情報を集めたページです。韓国、北朝鮮、中国などの最新動向や、世界各国のニュースの背景を深く分析。国際社会における日本の今が見えてきます。

ウクライナは袋を開いて公開したという
【現地ルポ】報道陣のために遺体の収納袋を開いた「ウクライナ人たちの思い」
 ロシアによるウクライナ侵攻の開始から2か月あまり。ウクライナは必死の抵抗を続けているが、ロシアは東部ドンバス地方での攻勢を強めており、支配地域を拡大しつつある。そんな中で、ウクライナ人たちは世界から訪れる報道陣に現実を知ってもらおうと奮闘していた──。現地を取材するノンフィクションライターの水谷竹秀氏がリポートする。 * * * その日は雨が降っていた。大勢の報道陣が現場に到着すると、遺体が入った黒い収納袋がぬかるんだ地面に十数体並んでいた。しかも収納袋はファスナーが開いたままで、遺体の腹部や足などの部位が丸見えである。 ここはウクライナの首都キーウ近郊の町、ブチャ。人口約4万人のこの町は3月、ロシア軍に占拠され、多くの民間人が虐殺されたと言われる。その遺体の一部が、ブチャ中心部の聖アンドリュー教会の裏手に集団埋葬されていた。すでにキーウ入りしていた私は4月8日、ウクライナ政府主催のメディアツアーに参加し、この現場を再訪していた。間もなく、キーウ州警察代表のネビトフ氏が報道陣の前に現れた。隣には英語が流暢な女性の通訳者付きだ。欧米メディアに配慮してのことだろう。ネビトフ氏が力を込めて言った。「ここに40体の遺体が集団埋葬されている。大半が民間人で、遺体には銃弾の痕が残っていた。これはロシア軍による明らかなジェノサイドだ」 取り囲んでいた報道陣は、100人程度はいたと記憶している。ロシアに一方的に侵攻されたウクライナ側からすれば、被害の実態を世界中に知らしめる絶好の機会だ。 後に、同じ現場にいた日本の報道関係者から、こんな話を聞いた。「私たちが現場に到着した時、遺体の収納袋は閉じられていたんです。ところがしばらくしたら、開いていたんですよ」 私が見た時はすでに開いていたから、最初の閉じられた状態には気づかなかった。もしこの言葉の通りであれば、ウクライナ側は、大勢の報道陣を前に、意図的に収納袋を開けたことになる。その行為に、ウクライナ側の思いの強さを感じずにはいられなかった。 これは政府だけではない。前線で戦っている国軍兵士はもとより、スポーツ選手、アーティスト、経営者、一般市民を含め、ボランティアとして働く彼らの眩しい姿を目の当たりにすると、ウクライナ国民のほぼ全員が同じ思いを共有しているように見えた。「ウクライナのため」に何かをしたいという信念──。私が取材で関わったウクライナ人たちからも、そんな強い思いを感じる出来事が何度かあった。取材協力者は「お金は要らない」 最も印象に残るのは、私の取材協力をしてくれた「フィクサー」と呼ばれる人たちだ。取材時の通訳やリサーチ、インタビユーの調整などを行なう、いわばアシスタント的な役割である。日本ではしばしば「コーディネーター」と呼ぶが、ウクライナでは「フィクサー」が一般的だ。海外取材の場合は特に、このコーディネーターの力量如何で明暗が分かれる。私はこれまでにフィリピンを中心に、タイ、ベトナム、インドネシアなど主にアジアを中心にコーディネーターと一緒に仕事をしてきたが、その人選に失敗して痛い目に遭った経験も少なくない。ゆえに今回も慎重にならざるを得なかった。 キーウ入りする前の、ウクライナ西部の都市リヴィウでのこと。「もしよければキーウまで僕の車で一緒に連れて行ってあげるよ。お金は要らない。僕はお金のためにやっているわけじゃないんだ。それに以前働いていた会社で重役まで就いたから、今の僕にお金は必要ない。ただ、英語はネイティブ並みにはできないけど」 野太い声でそう話すのはウクライナ人男性のセルゲイ(39)。日本を発つ前に知人を介して紹介してもらったのだが、なんとキーウまで無償で連れて行ってくれるというのだ。確かにネイティブではないが、フィクサーとしては申し分ない英語力だ。もちろんガソリン代などは負担するとして、それ以外は「受け取らない」と豪語する。 私の経験上、海外で雇うコーディネーターの費用は1日当たり200~300米ドルが相場だ。これが戦場になるとさらに跳ね上がる。私がウクライナで聞いたこれまでの最高額は1日800ドル。こうした相場感を心得ていたから、セルゲイの言葉には半信半疑にならざるを得なかったのだ。 それが伝わったのか、「なぜ不審そうな顔をしているのだ?」と聞かれた上、「もし僕と一緒に行って、嫌になったらもっと信頼できるフィクサーを紹介してあげるよ」とまで言われたので、セルゲイに下駄を預けた。 そうしてリヴィウから約10時間かけてキーウを目指した。途中でブチャに立ち寄り、その日は1日中、セルゲイが取材のサポートをしてくれた。翌日もキーウ市内を案内してくれたが、4日目以降は「ビジネスの用事がある」と言われ、別々に行動することになった。 だが、それ以降もセルゲイからはほぼ毎日のように電話やメッセージ、役に立ちそうな記事が届き、「取材はうまくいっているか?」「紹介してほしい人は誰かいるか?」などと懇切丁寧である。遠慮なく「紹介して欲しい人がいる」と伝えると、翌日には当人、もしくは関係者の電話番号が送られてくる。どこまでお人好しなのだと思って、ある時、尋ねると、こう返ってきた。「僕は特別なことは何もしていないよ。武器を持って戦うのが戦争。だったら僕にとっての武器は、今ここで起きている残虐なことを世の中に知らせるために動くことだ」 その心をもう少し聞いてみた。「僕はソ連時代の不自由さ、そして貧困をまがりなりにも知っている。だから独立を果たしたウクライナで、自分たちの選択で人生の道を切り開けるという自由に喜びを感じている。自由な経済に価値を見出している。自由に旅行もしたい。だからロシアのような独裁者は求めていない。今のウクライナを守りたいだけだ」「自由」という言葉を繰り返したセルゲイ。その真っ直ぐな思いが今、この国を一つにしているような気がする。取材・写真・文/水谷竹秀(ノンフィクションライター)
2022.05.03 07:00
NEWSポストセブン
なぜ米国防総省は「UFO調査」部署を新設したのか(写真=AP/AFLO)
米国防総省が新設した「UFO調査」部署 追うのはエイリアンクラフトなのか
 UFO(未確認飛行物体)問題が再びクローズアップされている。昨年、米当局がこれまで機密扱いとしてきた軍のUFO調査報告を開示。「説明不能」な現象が多数あるとし、ペンタゴン(米国防総省)が調査機を設置することを明らかにした。謎に包まれたUFOは、人類の存続を脅かす異星人の乗り物(エイリアンクラフト)なのか、あるいは政情不安の中で生きる人々の幻想の産物なのか、それとも──。 昨年6月の米当局による「UFO調査報告」公表は、世界に衝撃を与えた。2004年以降、米海軍などから寄せられた目撃情報を精査し、調査対象144件の大半が「説明不能」だと認めたのだ。同11月には米国防総省が目撃情報を調査する部署を新設するとも発表された。UFO問題に詳しい科学ジャーナリスト・高野誠鮮氏が語る。「第二次世界大戦後、米当局は『ブルーブック』など公的UFO調査機関を立ち上げつつも、『国家安全保障上の脅威となる証拠はひとつもなかった』とし、1969年12月をもって公のUFO調査研究を打ち切りました。ところが、その後も極秘裏に調査研究が進められていたことが、後に情報の自由化法を基にした訴訟などを通じ判明している。今回、米当局自らが積極的に情報開示に至ったのは、大きな意味があると考えます」 自国上空を、「正体不明の物体が自在に飛び回っている」と認めるのは、国防・危機管理上、米国には由々しき問題のはずだ。それでも公開したのはなぜか。「SNS等で情報が拡散し、『存在を隠し通すことが困難』と判断したからでしょう。近年は米国に限らず、旧ソ連やNATO諸国の要職に就く人々が『UFOと宇宙人』問題に言及することが多くなりました」(前出・高野氏) 2012年には、当時のロシア大統領だったメドベージェフ氏が、露メディアのインタビュー後に「大統領就任直後は『核のボタン』とともに“極秘”と書かれた重要ファイルを預かる。それは、地球に来ている宇宙人のものだ」とオフレコ発言。その時の映像がネットで拡散され、話題となった。 元カナダ国防相のポール・ヘリヤー氏も退任後、「国防相時代には多数のUFOの目撃報告を受けた。自分は会ったことはないが、少なくとも4種の異星人が地球を来訪していると確信している」とし、物議を醸した。高野氏が語る。「メドベージェフ氏の発言は、カメラがオフになっていると勘違いして、ぽろっと出てしまった本心だと思います。もともと彼は、UFO情報の公表に積極的でしたが、首相時代はプーチン氏から事実上の更迭という処遇を受けました」 第二次世界大戦以降、東西冷戦期を通じて、米ソ両国が『UFO』を国防・軍事戦略の最重要課題としていた痕跡は数多くあるという。※週刊ポスト2022年5月6・13日号
2022.05.02 07:00
週刊ポスト
空母を6隻体制にする目的は?
台湾が南砂諸島の軍事基地の大幅拡充を計画 中国への警戒感から
 ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて、中国の軍事作戦への警戒感を高めている台湾が、中国と台湾が領有権を主張する南シナ海の南砂諸島のなかで、台湾軍が駐留している軍事施設を大幅に改良し、中国軍に対抗しようとする動きを強めていることが分かった。これに対して、中台双方と同様に、南シナ海の島嶼の領有権を主張しているベトナムやフィリピンから「中国を刺激する動きだ」などと批判する声が出ている。台湾紙「聯合報」などが報じた。 南沙諸島はもともとの陸地面積は0.5平方キロ程度しかない岩礁の集まりだが、諸島を領有すれば広大な排他的経済水域 (EEZ) や大陸棚の漁業資源や石油・天然ガス資源を獲得できるだけでなく、安全保障上の要地となる。中国や台湾のほか、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが海岸地形全部または一部の主権を主張している。このため、各国はいくつかの島を軍事基地化し領有権を誇示している。 とくに、中国は岩礁程度の島の周辺を埋め立てて、数百人の部隊を駐留させ、軍艦や戦闘機などを配備し軍事要塞化している。これについて各国は激しい批判を向けているが、中国の軍事的な動きは続いている。 台湾軍も南沙諸島の北部に位置する太平島に滑走路を建設したほか、蔡英文政権は海岸巡防署の艦船による海難救助や医療チームの負傷者治療の訓練を実施し、その模様を内外メディアに公開するなど領有権をアピールしている。また、すでに戦闘機が発着できる滑走路も整備している。 太平島は台湾から1500km、フィリピンから853kmの距離にあり、台湾の高雄市の管理下にある。 聯合報がこのほど報じた今回の台湾軍の計画によると、年内に既存の1150mの滑走路を350m延長するとともに、軍が駐留する基地を拡張する。1500mの滑走路には、F16戦闘機やP-3C対潜水艦が発着できるようになり、これまでと比べて戦闘力が格段に向上するという。 これについて、フィリピンなどから「このような計画が実施されれば、各国の協議の障害になるばかりでなく、中国をいたずらに刺激するだけだ」などとの批判が出ている。 台湾空軍の陳国華報道官は報道に関して「ノーコメント」としているが、台湾メディアは「ロシア軍のウクライナ侵攻によって、中国軍の台湾への軍事作戦も警戒しなければならず、蔡英文政権も中国への対応について本腰を入れて検討している動きととらえることができる」などと報じている。
2022.04.30 07:00
NEWSポストセブン
中国国防省が弾道ミサイルの迎撃実験成功をHPで発表
ノーベル平和賞の劉暁波氏のブロンズ像が香港から撤去 台湾で展示へ
 中国の民主化運動指導者でノーベル平和賞を受賞したものの、中国当局に軟禁され、がん治療中の2017年に死亡した劉暁波氏のブロンズ像が、香港から撤去され、台湾に移されることが明らかになった。香港メディアなどが報じた。 香港では2017年に劉氏が亡くなった際、民主化運動支援団体を中心とした人々が資金を集め、劉暁波氏が椅子に座るブロンズ像を鋳造し、中国の民主化実現のために一生を捧げた劉氏に敬意を表した。 ブロンズ像は当初、香港中心部の繁華街である銅鑼湾の複合ビル「タイムズスクエア」前に置かれていた。しかし、香港政府の圧力が強まり、中国の民主化推進団体である「中国愛国民主運動支援香港連盟」が昨年、解散に追い込まれたことで、ブロンズ像の撤去を余儀なくされた。その後、ブロンズ像は倉庫に入ったままになっている。 これに知った台湾の民主化団体「中国民主協会」が今年6月4日の天安門事件33周年記念として、ブロンズ像を引き取って、台湾での民主化促進の講演会などで展示する意向を示した。同協会はその後、中国の民主化推進のための博物館を建設し、劉氏のブロンズ像も博物館に常設展示される予定だ。 同協会の曾建元会長は「劉暁波氏のブロンズ像を展示することで、中国大陸でも、このような思想家や人権活動家がこれからも生まれ得ることをより多くの台湾の人々に知ってもらいたい。また、台湾の人々がこのことを認識し、中国の人権の発展をさらに願い、行動を起こすことを望んでいます」などと語っている。 このような曾氏の発言について、香港ではネット上で「今年、香港大学に置かれていた天安門事件を描いた『恥柱』という彫刻が撤去され、さらに、劉暁波氏のブロンズ像が台湾に渡るなど、香港では民主化をテーマにした彫刻さえ、人間と同じように弾圧されてしまうのか」などと当局の民主化抑圧姿勢を皮肉るコメントが見られている。
2022.04.29 07:00
NEWSポストセブン
話題となった「中国科学院武漢ウイルス研究所」の石正麗氏の今は?(写真/AFP=時事)
武漢研究所の女性研究員が発表した新論文が話題 コロナ発生源は「証拠は得られてない」
 未曾有のパンデミックは、中国・武漢から始まった。新型コロナウイルスが流行し始めた2020年1月当初、ウイルスの発生起源とされたのが、「中国科学院武漢ウイルス研究所」。そのカギを握る人物として注目を浴びたのが、同研究所の研究員で“コウモリ女”の異名を持つ石正麗氏(57)だった。 コウモリから発生するウイルス研究の第一人者の石氏は、武漢ウイルス研究所を代表して「コロナ起源説」を否定し続けてきた。しかし、2020年4月頃には「機密文書を持ち出して亡命した」との報道が駆け巡り、以降はメディア露出が激減した。 動向の見えない彼女だが、現在もウイルス研究に心血を注いでいるという。元日本テレビ中国総局長で『インサイドレポート 中国コロナの真相』(新潮新書)の著書があるジャーナリスト・宮崎紀秀氏が語る。「武漢ウイルス研究所のホームページ上に今でも石氏の名前と顔写真が出ているので、現在も在籍しているとみられます。 今年4月には、石氏が共同執筆者の一人として執筆した論文が、『Zoonoses』というアイルランドの科学雑誌に掲載されました。その内容について中国メディアは『我々に啓示を与える』などと賞賛しています」 タイトルは『ヒトの主要な感染症が動物に由来すること。過去の流行が次の流行を防ぐために何を教えてくれるのか?』。人も動物も感染する“人獣共通感染症”について書かれたもので、1940年代から現在までに発生した同感染症の特徴がまとめられている。 また、論文内では新型コロナの発生源についても言及されていた。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が語る。「この論文は、武漢の市場を『コロナの病原体が最初に報告された場所』と示し、売られていた野生動物の関与を指摘していますが、一方で具体的な発生源については『確かな証拠はまだ得られていない』と述べるにとどまっています」 真相解明はまだ遠い。※週刊ポスト2022年5月6・13日号
2022.04.28 07:00
週刊ポスト
ウクライナ外務省が更新したツイッターでは各国への感謝を表明したツイートも
「ウクライナは親日」という思い込みは「プーチン氏への誤解と同じ」か
 ウクライナをめぐる日本国内の見方に異変が生じている。ウクライナ政府の公式ツイッターに、ナチス・ドイツのヒトラー、イタリアのムッソリーニと並んで、ファシズムの象徴として昭和天皇の顔写真が投稿されると、日本国内から批判が相次ぎ、写真が削除された。 さらに、ウクライナ外務省が公式ツイッターに投稿した各国からの支援に感謝する動画に日本への言及がなかったことも波紋を呼んだ。在日ウクライナ大使館は「武器を提供してくれた国に対する感謝を示すためのものだ」としたうえで「日本の支援や協力にはもちろん感謝している」とコメントしているが、日本国内では「なぜ日本が外されたのか」と疑問の声が上がっている。 こうしたウクライナをめぐる日本国内の世論の変化について、外務省OBはこう疑問を呈す。「そもそも日本では、ロシアによるウクライナ侵攻以降、ロシアとプーチン大統領は悪、ウクライナとゼレンスキー大統領は善、との構図が定着して、それ以外の多面的な見方ができなくなってしまいました。その流れで、いつのまにか『ウクライナは親日的だ』という思い込みが広がった。ゼレンスキー大統領が日本の国会でオンライン演説をしたことが、拍車をかけた側面もあるでしょう。 しかし、ウクライナは戦争の当時者としての危機感から日本に助けを求めたのであり、親日かどうかは関係ありません。事実、米連邦議会でのオンライン演説ではロシアの侵攻を『真珠湾攻撃』になぞらえており、とりわけ日本をめぐる歴史認識においては他の欧米諸国と大差ないというのが実状のはずです」 日本国内でウクライナに対する失望感が広がっていることについては、「独りよがりではないか」との指摘もある。国際ジャーナリストが言う。「外交において、相手国やその時々の状況によって対応が変わるのは当然です。ウクライナは、日本に対しては『日本が特別』とリップサービスしますが、他国に対してはまた別の顔を見せる。それを『ウクライナは日本を特別視してくれているはず』と思い込むことのほうに無理があります。 支援への感謝についても、現実としてウクライナ側が何より求めているのは軍事的支援であり、その点で日本は見劣りするということでしょう。日本人はウクライナについて、もっと客観的に考える視点が必要ではないでしょうか。 ロシアについても、ウクライナ侵攻後、日ロ交渉が中断することになり『プーチン大統領は親日だったはずなのに』『裏切られた』といった論調が広まりました。もちろん、プーチン氏が柔道愛好家であることは確かですが、日ロ交渉を優位に進めるために日本に接近した側面があったことも事実です。それを短絡的に『親日か反日か』という両極端に分ける考え方を改めないと、いつまでも同じような勝手な思い込みと失望を繰り返すことになるのではないでしょうか」
2022.04.28 07:00
NEWSポストセブン
住民の間では新型コロナウイルスの感染拡大や防疫措置などによる不満が高まっていたという
北朝鮮が中露両国への派遣労働者からパスポート取り上げ 逃亡阻止目的
 北朝鮮政府が外貨獲得のために中国やロシアに派遣した北朝鮮労働者が最近、突然姿を消すというケースが増えているが、金正恩朝鮮労働党総書記が「敵対勢力の策動だ。死体でもよいから連れ戻せ」と指示していたことが明らかになった。 これを受けて、駐中国・ロシアの北朝鮮大使館や領事館は、現地の北朝鮮労働者や監督官らも含めて、パスポートや身分証明書など身元を証明する書類を提出させ、保管しているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。 ことの発端は、今年2月、中国上海市の繊維工場に派遣されていた北朝鮮労働者20人と監督官らが行方不明になったことだ。北朝鮮当局は中国政府に調査協力を要請しているが、いまだに彼らの行方は分かっていないという。 これに先立ち、ロシア極東部のウラジオストクでも昨年、多くの北朝鮮労働者が姿をくらませるというケースが多発している。 このため、中露両国の労働現場では、秘密警察である国家保衛省要員が労働者らを常時監視状態に置き、個人行動を禁止するなど管理体制を強化しているという。 中国東北部在住の朝鮮族の中国人はRFAに「上海の事件の後、中国にある北朝鮮大使館と領事館は、現地の企業幹部と代表者のパスポートと身分証をすべて回収した」と語っている。 この中国人は中露両国に派遣されている北朝鮮労働者が姿を消していることについて、「新型コロナウイルスの感染拡大で、中国企業が操業を停止するなど、会社経営が悪化し、北朝鮮労働者への支払いも滞っている。それにもかかわらず、北朝鮮本国は労働者に割り当てたノルマを支払うように無理強いしているため、身の危険を感じた労働者が逃げだしたというのが本当の理由ではないか」と指摘している。 RFAは中露両国の複数の情報筋の話として、「中国東北3省の北朝鮮労働者の数は今年1月時点で8万~10万人と推定され、その大部分は北朝鮮と国境を接する遼寧省丹東市に滞在している。ロシアの場合はウラジオストク周辺に約2万人の北朝鮮労働者が派遣されている」と報じている。
2022.04.27 07:00
NEWSポストセブン
ダイヤモンド・プリンセス号船長から届いた肉声 手記出版でジャーナリズム賞も受賞
ダイヤモンド・プリンセス号船長から届いた肉声 手記出版でジャーナリズム賞も受賞
 乗客3711人のうち712人が感染するという「船内パンデミック」を起こした大型クルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号。2020年2月に横浜港に停泊し、ひと月にわたって船内指揮を執り続けたのがイタリア人のジェンナーロ・アルマ船長だった。 3月上旬に下船したアルマ船長は、飛行機で帰国。危険を顧みずに指揮を執り続けた姿が称賛され、マッタレッラ大統領から勲章も授与された。「この勲章は私だけのものではなく、共に危機を乗り切ってくれた船員全員と分かち合いたい」 2020年7月、『週刊ポスト』取材にそう答えたアルマ船長。彼は今何をしているのか。イタリア在住ジャーナリストの田中美貴氏が語る。「変わらず船長として世界各地を航海しています。2020年11月には、ダイヤモンド・プリンセス号でのパンデミック体験を綴った手記『La lezione piu importante(最も重要なレッスン~海が私に教えてくれたこと)』をイタリア国内で出版しました。当時の回想録や航海する上で必要なことを綴り、2021年11月に『カルロ・マリンコビッチ賞』というイタリアのジャーナリズム賞を受賞しています」 同書には、〈海は迫り来る予期せぬものであり、航海とはその予期せぬものと背中合わせだということだ〉〈海は無限の空間であると同時に、他人を尊重し理解するための思いがけない道である〉といった格言が並ぶ。「その後、2021年には『IAM』という船員育成の専門学校の校長に就任しました」(同前) 同校の校長就任にあたって、アルマ船長は現地メディアの取材にこう答えている。「船員たちの現場は、学校で教えられるものとは明らかに異なります。その仕事においては常に船内の人々の安全が第一です。しかし多くの民事および刑事責任、人権問題があり、現場での船員の自立性について真剣に考え直す必要があります」 アルマ船長に取材を申し込むと、ダイヤモンド・プリンセス号の運航会社「プリンセス・クルーズ」経由で、こんな回答が届いた。「航海を再開しており、それをとても嬉しく思っています。光栄なことに、現在はプリンセス・クルーズの最新の船である『ディスカバリー・プリンセス』の指揮をとっています。(パンデミックによる)クルーズの一時停止中に、私はいくつかの船に乗りましたが、乗客なしの航海は同じものではなく、本格的に航海することができず寂しく思っていました。 そしてチームメイトが新たな目的意識を持って好きなことを再開し、美しく新しい船が生き返るのを見るのも、とても嬉しいです。私たちは今、乗客を船上に迎え、彼らによりよい時間を提供するという、最高のことができるようになりました。フル稼働していた頃はクルーズ船のこんな素晴らしい面を見逃していたかもしれません。デッキを歩き回り、乗組員がゲストと接しているのを見たり、みんなに挨拶して素敵な雰囲気を感じるのは素晴らしいことだと改めて感じます。プリンセス・クルーズ船で世界を旅することは、最も豊かな経験の1つであり、これからも素晴らしい思い出を作るために、世界中の冒険にゲストを連れて行くことを楽しみにしています。 ダイヤモンド・プリンセス号の船内状況は、現代のクルージングの最高のものであり、そこで利用できるツールと情報を使って私たちがしたことを誇りに思っています。この無二の経験を通して、私は人々が困難な状況では並外れたことをする可能性があることを直接学びました。団結し、犠牲の精神を維持し、責任を持って行動することによって、私たちは何でも成し遂げることができると思います」  今日もどこかの海上で、船を操っているのだろう。※週刊ポスト2022年5月6・13日号
2022.04.27 07:00
週刊ポスト
住民の間では新型コロナウイルスの感染拡大や防疫措置などによる不満が高まっていたという
北朝鮮が最高額紙幣の10倍にあたる5万ウォンの金券発行 インフレ抑制の狙いも
 北朝鮮の中央銀行が、現在流通している最高額紙幣である5000ウォン札(約111円)の10倍の5万ウォン(1114円)に相当する金券を新たに発行していたことが明らかになった。5万ウォンの金券の流通枚数など詳しいことは不明だが、今年初めに発行され、企業間の取引用として使われているという。 5万ウォンの金券を個人用に流通させずに、企業間での限定的な流通にとどめているのは、北朝鮮当局がインフレを抑制しようとしていることを示す可能性もあるとみられる。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。 5万ウォンの金券には朝鮮中央銀行の名前が記され、発行日は「チュチェ111」(北朝鮮の暦で、建国者・金日成の生誕年である1912年から始まる現在の年)であることが示されている。背景には、中朝国境にある北朝鮮の聖地、白頭山が描かれている。 北朝鮮の紙幣は、5ウォン札から5000ウォン札まであり、市民は通常、ドルや中国元などの外国通貨と北朝鮮ウォンを組み合わせて商品やサービスの代金を支払っている。 北朝鮮経済に詳しい韓国の政府筋はRFAに対して、「北朝鮮の中央銀行は単に高額紙幣を発行するのではインフレを引き起こすので、経済状況が良くなったときに換金できる金券を流通させているのではないか」との見方を明らかにしている。
2022.04.26 07:00
NEWSポストセブン
池上彰氏はウクライナの先行きをどう見るか
池上彰氏 ウクライナが2つに分断され「第2の朝鮮半島」になる可能性を指摘
 ロシアによるウクライナ侵攻は、日々、双方が戦況について異なる発表をするため、実態が掴みにくい。私たちはどのように情報に接すればいいのだろうか。池上彰氏と、ウクライナで現地取材を続けるジャーナリスト・水谷竹秀氏がリモートで緊急対談した。【前後編の後編。前編から読む】池上:21世紀になってヨーロッパの主権国家に他国の軍隊が攻め込むなんてあり得ないと誰もが思っていました。戦車戦で戦車が大量に破壊されるなんて、20世紀前半の戦争ですよ。ただし情報戦争という点では、ウクライナ戦争は明らかに21世紀の戦争です。水谷:それはものすごく感じています。戦争勃発後、ウクライナの被害者の遺体写真が情報源も不明なまま、即座にSNSで拡散されました。ウクライナ軍の死者についてもゼレンスキーは3000人とするが、ロシアは2万人と言う。双方の主張に隔たりがありすぎて、どの情報を信用していいのかわかりません。情報戦が過激化するなかで僕ができることは、ひとつひとつの証言の裏取りを重ねていくことだけです。池上:ただし地道に証拠を積み上げるようなルポよりも刺激的で衝撃的な内容が好まれるのが、戦争報道の一番のジレンマです。そんななか、水谷さんは現地で工夫して、地域防衛隊に志願した女子大生兵士というキャッチーな話題も取材していますね。こういうルポなら日本の読者も興味を持つはずです(『FRIDAY』4月22日号)。水谷:男性が志願するのは何となくわかるんです。でも女子大生が地域防衛隊に志願したり、一般女性が訓練所でカラシニコフの使用法を学んだりするのは、どういう気持ちなのか興味がありました。池上:ルポを読むと、女性でも本当に故郷を守りたいんだという切迫感が伝わってきます。水谷:ただし、本音は異なる部分もあるんです。長く一緒にいて打ち解けたコーディネーターに「いざという時は武器を持って戦うか」と尋ねると、しばらく悩んでから「戦うしかない」と言葉を絞り出しました。その一方で彼は、「正直に言うと、人を殺すことは望んではいない」とも打ち明けてくれました。池上:重い言葉です。水谷:今回の戦争が始まってから、18~60歳のウクライナ人男性の出国を禁じる大統領令が出ましたが、実際には国境付近で賄賂を払って国外に出る男性もいるようで、「○○は裏切り者だ」と非難されます。でもコーディネーターは、「恐怖心から保身に回って、逃げる奴の気持ちもわかる」とも言いました。これが戦場における葛藤であり、単に白か黒かでは分けられないはずです。池上:何かあれば武器を持つけど、本音では人を殺したくないというのが、まさに人間の本心です。水谷:時間をかけて人間関係を築くことで、初めて聞くことができる答えがあると思います。池上:まったくその通りです。私はテレビの仕事を長くしていますが、テレビは「ここが爆撃されました」と戦闘報告をして住民にマイクを向ければ取材が終わりますが、ノンフィクションライターはそうはいきません。水谷:現地のウクライナ人と長く接すれば接するほど、彼らが何を考えているか少しずつわかってきます。それをどう伝えるかを模索しています。SNSでは簡単に騙される池上:「21世紀の情報戦」では、SNSを利用したフェイクニュースが溢れることも大きな特徴です。日本でSNSばかり見ている人は簡単に騙されてしまう危険がある。水谷:いまや日本人の情報源はSNSが主流になり、SNSを使いこなした者が影響力を持ちます。今回は外務省の渡航中止勧告などもあり、日本の大手メディアが現地に入るのが遅くなったこともSNS偏重になった一因でしょう。池上:ロシアが平然と嘘をつくことも目立ちます。ロシアのラブロフ外務大臣は「ロシアはウクライナを攻撃していない」と発言し、駐日ロシア大使は「ブチャの虐殺はでっち上げ」と強弁した。こうした嘘はすぐ見抜けるけど、巧妙なフェイクニュースになると見分けるのがなかなか難しい。水谷:一方でウクライナからの情報に少しでも疑義を表明すると、「ロシアの肩を持つのか」と叩かれる雰囲気も感じます。池上:戦争にいたる要因はウクライナ側にもあったと指摘すると、猛バッシングされます。「ウクライナが善戦している」という言い方も、「負けることを前提としているのか」と言われる。どう報じるのかがすごく難しい戦争です。水谷:凄惨な写真や映像をどこまで報じるべきかも議論されています。池上:戦争報道の永遠の課題です。今の日本のテレビは「これから遺体の映像が出ます」と注意喚起してから映像を流します。湾岸戦争では、加害者側のアメリカがイラク軍の遺体を全部片づけてからメディアツアーをしました。情報操作は戦争につきもので、日本で記事を読んだりテレビを見たりする際は、「ウクライナは自国の被害を世界に知ってもらいたいから、少し大げさに報告することもあるかもしれない」と頭の片隅にとどめておくことが必要でしょうね。水谷:受け手がそうやってバランスを取ってくれれば、報道する立場としても少し心が楽になります。それにしてもこの先、ウクライナ戦争はどうなっていくでしょうか。池上:ロシアは東部の2州を制圧し、クリミア半島と結ぶ海上の回廊を作ろうとしています。しかしウクライナはそこを奪われるわけにはいかず、徹底して抗戦するでしょう。国際的な第三者が停戦を仲介するしかない。水谷:2014年のクリミア併合から8年も争いが続き、ウクライナは今、ものすごく結束しているので簡単には収まらないはずです。周囲の大国がどう戦争を収めるかがポイントです。池上:中長期的には、朝鮮半島のようにウクライナの東・南部が分断される可能性もあります。水谷:当分は戦闘が続くでしょう。キーウにいるうちにできる限りの取材を行ない、また次に来るための何かを残して日本に帰りたいと思います。池上:くれぐれも気をつけて帰ってきてください。(了。前編から読む)【プロフィール】池上彰(いけがみ・あきら)/1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1973年NHK入局。1994年から「週刊子どもニュース」のお父さん役を11年務め、2005年よりフリージャーナリストとして活動。2016年より名城大学教授、東京工業大学特命教授。著書に『池上彰の世界の見方 ロシア』など。水谷竹秀(みずたに・たけひで)/1975年三重県生まれ。上智大学外国語学部卒業。新聞記者やカメラマンを経てフリーに。2004~2017年にフィリピンを拠点に活動し、現在は東京。2011年『日本を捨てた男たち』で開高健ノンフィクション賞を受賞。ほかに『だから、居場所が欲しかった。』『脱出老人』など。※週刊ポスト2022年5月6・13日号
2022.04.25 11:01
週刊ポスト
ウクライナで現地取材を続けるジャーナリスト・水谷竹秀氏(写真/本人提供)
ウクライナ取材ジャーナリストが池上彰氏に明かす 凄惨な光景と政府のメディアツアー
 ロシアによるウクライナ侵攻は、日々、双方が戦況について異なる発表をするため、実態が掴みにくい。私たちはどのように情報に接すればいいのだろうか。池上彰氏と、ウクライナで現地取材を続けるジャーナリスト・水谷竹秀氏がリモートで緊急対談した。【前後編の前編】池上:ウクライナの首都キーウ近郊の街ブチャでは、ロシア軍が民間人を大量虐殺したと報じられています。水谷さんは実際にブチャに入られたのですね。水谷:4月6日に、ロシア軍が撤退したブチャに入りました。街中は瓦礫の山で、空爆された中心部のマンションやショッピングモールは原形をとどめず、多くの自動車は地上戦の銃弾の跡で穴だらけ。街の一部が壊滅したような状態でした。列車の駅近くに焼け焦げたロシアの戦車が10台近く置き去りにされ、ある民家の裏庭にはロシア兵が逃走した際に脱ぎ捨てられたとみられるロシア軍の制服がありました。池上:ブチャでは戦争犯罪の証拠集めのため、埋葬された遺体を掘り起こしていると聞きます。水谷さんが入られた段階で、民間人の遺体はどうでしたか。水谷:到着後、道端に人が集まっていたので行ってみると、頭部がなく、民間人とみられる女性の遺体が路肩に放置されていました。傍らにはフロントガラスを撃ち抜かれた車の残骸があり、周囲には死臭が漂っていた。実況見分していた警官の話では、女性は助手席に乗っていた時にロシア兵に銃撃されたようです。また臨時の集団墓地となった教会の裏手には、黒い袋に入った民間人の遺体が10体以上並んでいました。現場の警察官は「ロシア軍によるジェノサイドだ」と断言しました。池上:凄惨極まる光景ですね。これまでに取材で遺体を見た経験はあったのですか。水谷:僕は長くフィリピンを拠点に活動していて、イスラム過激派と国軍の戦闘、日本人の射殺事件やレイテ島の地滑り被害の現場などで多くの遺体に遭遇しましたが、路上に民間人の亡骸が、しかも頭部がないまま放置されていたのは衝撃を受けました。池上:そもそもなぜウクライナに入ろうと思ったのですか。水谷:もともと海外の在留邦人に興味があり、アジアを中心に取材をしていたんです。今回も2月半ばからウクライナの在留邦人に取材を始めたら、いきなり戦争が始まりました。当時はまだ日本の大手メディアは現地にほとんど入っておらず、取材相手の在留邦人から「取材に来るなら部屋を提供する」と言われて迷った末、自分の人生で激しい戦場を見る機会はもうないだろうし、現地に行けば何か発見があるはずと思って決断しました。池上:キーウには各国のメディアが集まって活発に取材をしています。水谷:現地にいる外国人記者の多くは大統領府から500mほど離れたホテルに宿泊し、ホテル2階にあるメディアセンターでは毎日のようにウクライナ側の要人が記者会見をします。僕が雇った現地のコーディネーターからは、「ロシアはメディアを敵視するから、ホテルにミサイルが撃ち込まれる怖れがある。早く離れたほうがいい」と真顔で警告されました。政府のメディアツアー池上:そんな状況での安全確保は大変でしょう。水谷:日本から防弾チョッキと防弾ヘルメットを持参しました。キーウの戦況は落ち着いていますが、近郊ではロシア軍が設置した地雷の処理で時々爆発音が聞こえるので、土の上を避けてアスファルトの上を歩くようにしています。一度、地面に落ちていた弾薬のようなものを蹴ったら、「何をするんだ!」とコーディネーターに叱られました。池上:私も旧ユーゴ内戦でサラエボの地雷原を取材した際、何気なく地面に足を着けると現地の運転手が真っ青になり、「アスファルトから出るな」と叫びました。帰国後もしばらく土の上を歩けませんでした。水谷:キーウでは撮影にも注意が必要で、検問の様子は絶対に撮るなと言われています。地下鉄のホームに集まる避難民を撮影した際は、現地の警官にいきなり腕をひねられて転倒しました。警察も殺気立っていたので、銃で撃たれないだけ幸運だったのかもしれません。池上:ウクライナ政府はキーウで外国人記者相手のメディアツアーを行なっているそうですね。水谷:ロシア軍が撤退した4月上旬以降、海外メディアを対象に、ブチャやボロディアンカなど被害が甚大だった地域を回るバスツアーが始まりました。参加者の多くが欧州メディアです。ウクライナ側が案内してくれて楽なのですが、その情報を元に記事を書けば、メディアが戦争広告代理店のようになるのではとの違和感があります。池上:よくわかります。ウクライナが多大な被害を被ったのは事実ですが、他方でウクライナは海外メディアに自分たちに有利な報道をしてもらいたいとの思惑がある。水谷:おっしゃる通りです。もちろんウクライナはロシアに不当に侵略されましたが、例えば「ウクライナ人の住民が20人殺された」という現地住民の証言をそのまま報じてよいのか。その人が実際に殺害現場を見たのか、それとも20体の遺体を確認したのかなど、細かく裏を取る必要があります。一緒に行動するコーディネーターも「住民の話はどこまで本当かわからない」と語ることもあり、取材の難しさを感じています。池上:取材者の立ち位置で言えば、1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争では欧米メディアは主に攻撃する側から取材していました。ただイラク戦争の際はアラブ世界のアルジャジーラが唯一、攻撃される側から見た戦争を報じました。今回の戦争のように欧米メディアがすべて被害者側の立場にいるのは、戦争報道では極めてめずらしい。水谷:ああ、なるほど。池上:今回、ロシア軍に従軍しているのは、ロシア国営放送などロシアの御用メディアと中国人記者だけです。水谷:確かに明確に分かれています。逆にウクライナで中国人記者はほとんど見かけません。(後編につづく)【プロフィール】池上彰(いけがみ・あきら)/1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1973年NHK入局。1994年から「週刊子どもニュース」のお父さん役を11年務め、2005年よりフリージャーナリストとして活動。2016年より名城大学教授、東京工業大学特命教授。著書に『池上彰の世界の見方 ロシア』など。水谷竹秀(みずたに・たけひで)/1975年三重県生まれ。上智大学外国語学部卒業。新聞記者やカメラマンを経てフリーに。2004~2017年にフィリピンを拠点に活動し、現在は東京。2011年『日本を捨てた男たち』で開高健ノンフィクション賞を受賞。ほかに『だから、居場所が欲しかった。』『脱出老人』など。※週刊ポスト2022年5月6・13日号
2022.04.25 11:00
週刊ポスト
空母を6隻体制にする目的は?
中国湖南省で警察がパスポート引き渡し命令 国外脱出希望者が急増
 中国の上海市や深セン市、武漢市などの大都市で新型コロナウイルスの感染が拡大し、政府による都市封鎖(ロックダウン)が実施されるなか、湖南省では警察が地元住民に対して、パスポートを引き渡すよう命じ、拒否すれば「捜査の対象になると思った方がよい」と警告していることが明らかになった。警察は「この措置は今後、全国的に展開される。感染が収まった時点で、パスポートは返却する」と約束しているという。 中国では都市部の富裕層の間で、上海などのロックダウンによって住民の食料不足などが深刻化し、医療危機も発生していることから、海外移住の希望が急増している。湖南省の警察のパスポート引き渡し命令も、住民の国外脱出阻止を狙ったものとみられる。湖南省の地元メディアが報じた。 湖南省の省都・長沙市では3月末、地元警察がホームページを通じて、企業などの雇用主に対して、すべての従業員と家族のパスポートを警察に引き渡すよう指示する通達を掲載した。 ある市民が電話で、警察に問い合わせたところ、「市政府の公式の通達であり、今後は中国全土で実施される。働いている人だけでなく、パスポートを持っている人は誰でも渡さなければならない。もし、渡さないのなら捜査されると思ったほうがいい」との返事が返ってきたという。 しかし、実際には、湖南省以外でパスポートの引き渡しを求めている地方政府の例は報じられていない。 中国の検索エンジンなどでは、「カナダ移住の資格」といったキーワード検索数が、この1か月前の30倍にも増加。問い合わせの多くは北京市や上海市、江蘇省、広東省など新型コロナウイルス感染防止のために厳しい規制を敷いている都市や省に集中している。 このため、中国政府が今後、中国の都市部の住民のパスポートを提出するよう求める通達を出すとのうわさが広まっているようだ。 上海のある海外移住のコンサルタント会社は「ここ数週間で移民に関する問い合わせが急増している。特に人気が高いのは米国やカナダなどのグリーンカードだが、比較的小さい国のパスポートの取得の相談も多い」と答えている。 人気がある国はトルコで、移住の申請のためには、少なくとも25万ドル(約3250万円)の資産を持っていることが必要だが、富裕層であれば問題なく条件は整うという。 さらに5月にはその条件が40万ドルに跳ね上がるとのうわさも出回っており、混乱は続きそうだ。
2022.04.24 07:00
NEWSポストセブン
金正恩氏にはどんな狙いが…(写真/共同通信社)
不可解な金正恩氏のリーダー像 映画風のミサイル発射映像、看板アナとの手つなぎも
 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、繰り返されるミサイルの発射や高級住宅街の建設など、話題に事欠かない北朝鮮の最高指導者・金正恩総書記の印象操作について。 * * * そのニュースを見て、なんとも奇妙な感じがした。画面に映っていたのは、朝鮮中央テレビの看板アナウンサー、李春姫(リ・チュニ)さんと手をつなぎ、豪華な部屋の中を歩く北朝鮮の最高指導者・金正恩総書記の姿だ。 金総書記は国内外からの注目を集めるため、印象操作に力を入れ始めたのだろうか。そう思ったのは、3月25日に朝鮮中央テレビが公開した新型のICBM、大陸間弾道ミサイル「火星17型」の発射映像を見たからだ。これが今までみたいな記録映像とは違い、人々が思わず目を止めて見てしまうようなアピール性の高い、映画のような作りだったのだ。 ミサイル格納庫の扉が開くと、そこから出てきたのは、黒い革ジャンに黒いサングラス姿の金総書記。イメージはハードボイルドで、歩き出しのスローモーションが効果的だ。両脇に並ぶのは金総書記よりやや背が低く見える軍人2人。ミサイル発射の成功を、金総書記の功績として大々的にアピールする目的ならば、並んで歩く者が金総書記より背が高いことはあり得ない。北朝鮮の映像だ。そこには何らかの意図が含まれているような気がする。 移動式発射台に搭載された弾道ミサイルの前を歩く金総書記は、自らがミサイルを誘導し、従えているようにも見える。その偉大さはミサイルの大きさに比例し、成功は金総書記の導きによるとでも暗に印象付けたいかのよう。ミサイル発射の瞬間、建物の窓からミサイルを見上げ、手をたたいて満面の笑みを見せた。そして映像は、滑走路のような場所を歩くシーンで終わる。“北朝鮮はこれからも金総書記とともに大きく前進していく”というメッセージだろうか。 この最後のシーンなどは、昭和の刑事ドラマ『Gメン’75』(TBS系)のタイトルバックを彷彿とさせる。ドラマでは、陽炎揺らめく滑走路を刑事たちが横一列に並んで歩き、そこに「熱い心を強い意志で包んだ人間たち」というナレーションが流れていた。今の金総書記自身がアピールしたかった自己像は、そんな昭和のイメージだったのかもしれない。 それから約半月後の4月11日、平壌で80階建てのタワーマンションを含む集合住宅の竣工式が行われた。景気が回復したわけではないだろうが、ミサイルを次々と打ち上げ、高級住宅を建設していく北朝鮮。式に出席した金総書記は、祖父の金日成国家主席を連想させるような特徴的な形の帽子をかぶっていた。やはり祖父、父が築き上げたリーダー像を継承し、これまで以上にわかりやすい形で、崇拝される対象として自身を偶像化、神格化していきたいのだろう。 そこには国民を気遣い、寄り添うリーダー像の強化強調も含まれるのだろうが、冒頭で記した看板アナウンサー、李春姫さんとの手つなぎ映像を見る限り、示したいリーダー像がよく分からなくなった。 金総書記は、自ら設計したというメゾネットタイプの豪華な住宅を李さんに贈った。長く国に尽くしてきた功労者を労う、大事にすることで、人々の忠誠心を高める狙いがあるというのは分かる。だが、嬉しさのあまりなのか、李さんは金総書記の手を両手で握ったり腕にしがみついたり、べったり甘えたようなその姿はやり過ぎ感満載だ。こんな映像流していいのか?と思うのだが、金総書記は終始ニコニコ顔。記念写真では李さんともう1人の女性が金総書記を挟んで座っているが、2人とも金総書記の腕に自分の腕をからめている。 はて、この映像にはどんな意図があるのか、何を狙ったのか?親しみやすか優しさか、北朝鮮という国はやっぱり分からない。
2022.04.23 16:00
NEWSポストセブン
住民の間では新型コロナウイルスの感染拡大や防疫措置などによる不満が高まっていたという
北朝鮮、原油高騰の影響で燃料の個人販売摘発強化 食糧生産に深刻な懸念
 北朝鮮では備蓄燃料の個人所有と販売は、これまで「当局のお目こぼし」という形では容認されてきたが、ロシア軍のウクライナ侵攻などにともない、世界的に原油価格が高騰したあおりを受けて、北朝鮮全土で燃料不足が深刻化しているため、北朝鮮当局は石油やガソリンなどの民間販売業者を厳しく摘発していることが分かった。 北朝鮮の石油販売業者が米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」に明らかにしたところ、国営商社が運営するガソリンスタンドの燃料価格は今年初め、ガソリン1リットル当たり9800ウォン(約680円)、軽油が7500ウォン(約520円)だったが、3月末にはガソリンは1リットル当たり1万7000ウォンとほぼ2倍弱に、軽油も1リットル当たり1万2000ウォンと1.5倍に跳ね上がってしまった。 さらに、ある個人業者はRFAに対して、「燃料価格が最近、高騰しているのはウクライナ問題もあるが、(北朝鮮)政府が年明けからこれまで数回も弾道ミサイルの発射実験を繰り返していることも原因だ。政府がガソリンをミサイル発射のために使っていることが、国内のガソリン不足に拍車をかけている」と苦境を訴えている。 このため、国営のガソリンスタンドでは、ガソリンが不足すると、ナフサなどの安い燃料を混ぜて販売することが知られている。これは量を増やすことができる半面、ガソリンで走ることを前提とした自動車や機械にダメージを与える恐れがある。 その一方で、個人業者の場合、そのようなナフサなどを混入することはほとんどないことや、国営スタンドの政府価格より1リットル当たり1000ウォンほど安いため、人々が個人業者のスタンドに押し寄せて来ていた。 この状況を見て、政府機関が個人業者を取り締まるようになっており、庶民にしわ寄せがきているようだ。 RFAは「この時期は農作業が始まるため、耕運機などの農機具でガソリンの需要が増えるのだが、新型コロナウイルスの感染予防対策で中国との貿易が中断していることもあって、燃料の備蓄は例年より少ない。さらに、政府が個人業者のガソリン販売を取り締まっているため、市場に出るガソリンはほとんどなくなっており、このあおりで農作業も進まず、今年秋の農産物の収穫量も少なくなるとみられる。この個人業者の取り締まり強化は北朝鮮経済を一層悪化させる大きな要因になっている」と指摘している。
2022.04.23 07:00
NEWSポストセブン
ケンカが趣味?(AFP=時事)
Twitter買収のイーロン・マスクが今度はジョニー・デップと対決へ
 世界一の富豪となったテスラ経営者のイーロン・マスク氏(50)は、このところ「ケンカ屋」として名を馳せている。Twitter買収を宣言し、すでにTOB(株式公開買い付け)のための6兆円もの資金の目途をつけたという。しかし、ケンカはこれに留まらない。近々、なんと法廷でハリウッド一稼ぐ男といわれるジョニー・デップ(58)と直接対決する可能性が高まっている。 舞台となるのはデップと元妻アンバー・ハード(35)が争う名誉棄損裁判だ。3年ぶりに米連邦巡回控訴裁(バージニア州フェアファックス郡)で公判が再開されたのだが、かつて取り沙汰されたハードとマスク氏の不倫疑惑がそこで再燃しそうな雲行きになっている。裁判の争点はデップがハードにDVをしていたかどうかなので、この話は枝葉と思われていたが、ここにきてDVがあったとされる時期にデップがすでに海外にいたという見方が出てきたからだ。 発端は二人が住んでいたマンションの管理人の証言で、なんと「ハードさんが顔や首にケガをしているのを目撃した時期には、マスク氏がハードさんと同棲していた」と語ったのである。これが事実なら、デップからDVを受けたというハードの主張は音を立てて崩れる。と同時に、加害者はデップではなくマスク氏という疑惑も持ち上がる。 デップはすかさずマスク氏に、「ケイジ・ファイト(金網デスマッチ)で白黒つけようじゃないか」と挑戦状を突きつけた。これにより公判でマスク氏が証人として証言を求められる可能性が高まっているのである。 それにしても、マスク氏は一生使いきれない巨万の富を手にしたにもかかわらず、ケンカの絶えない生活だ。Twitter買収劇では、同社が買収防衛策を導入したことに対抗し、「買収が成功すれば取締役会の報酬はゼロになる」とツイートして挑発。さらに、TOBが成功しなかった場合には大手投資会社アポロ・グローバル・マネジメント(運用資金約63兆円)に資金援助してTwitterを潰しにかかる代替案も検討中だ。 そもそもマスク氏はTwitterの厳しい投稿管理に根深い不満を持っていた。「私は特定の政党や政治理念に肩入れするつもりはない」としているが、同社がトランプ前大統領のアカウントを停止したことを批判。買収に成功すればトランプ氏のアカウントをただちに復活させると見られている。返す刀で、SNSなどの規制強化を進めるバイデン大統領に対しては、「濡れた靴下で作った指人形のような男」と名付けて、ついに国のトップにもケンカを売った。 ケンカでいえば、ロシアのプーチン大統領に「決闘」を申し込んだことも記憶に新しい。Twitterに「私はここでウラジーミル・プーチン氏に決闘を申し込む。懸けるのはウクライナだ」と投稿し、さらにプーチン氏のアカウントにロシア語で、「決闘を受け入れるか?」と迫った。フォロワーから「冗談でしょ?」と問われ、「完全に本気だ」と回答している。 さすがにプーチン氏は完全無視しているが、代わりに受けて立ったのがロシアの国営宇宙開発会社「ロスコスモス」のドミトリー・ロゴージンCEO(元副首相=58)だ。「若輩野郎、俺が相手になってやる。勝負はやる前からわかっており、時間の無駄だがね」と、やる気満々のツイートを返した。 ネットは盛り上がり、総合格闘技のコメンテーターでコメディアンのジョー・ローガン氏(54)が「プーチンに勝つために俺がマスクを鍛えてやる」と名乗りを上げ、格闘技を扱うサイトには「プーチン対マスク」をシミュレートして、二人の身長、体重、年齢、技量、精神力などから勝敗を予想するものまで出ている。ちなみにマスク氏は学生時代に極真空手や柔道、合気道を学んだ格闘技オタクでもある。 ケンカの相手がアメリカとロシアの大統領、ハリウッドで最も稼ぐ男、世界最大のSNSと宇宙開発会社CEO――たしかにスケールの大きい男である。■高濱賛(在米ジャーナリスト)
2022.04.23 07:00
NEWSポストセブン

トピックス

逮捕された「RYO&YUU」
公然わいせつ逮捕「RYO&YUU」、性的動画アップは「親公認」だった 22歳の女は愛知・香嵐渓で全裸に
NEWSポストセブン
ゴルフをする女性芸能人が増えている(左は小島、右は鷲見。ともに本人のインスタより)
タイトなウェア姿を投稿しまくりの小島瑠璃子と鷲見玲奈「ゴルフ女子」枠巡る熾烈な戦い
NEWSポストセブン
結婚を発表し、お相手を「建築会社」とした滝沢。「一般男性」とは言っていない
滝沢カレン結婚!「テラハ」出演“肉食系”ハーフモデルのどこに惹かれたのか
NEWSポストセブン
巨人に13.5ゲーム差でヤクルトが首位独走 「CS開催の必要あるのか」の指摘も
巨人に13.5ゲーム差でヤクルトが首位独走 「CS開催の必要あるのか」の指摘も
NEWSポストセブン
左から主演のオースティン・バトラー、妻役のオリヴィア・デヨング、バズ・ラーマン監督、トム・ハンクス(EPA=時事)
『トップガン』『エルヴィス』大ヒットが示すアメリカの“昭和ブーム”
NEWSポストセブン
TBS・安住紳一郎アナウンサーの魅力の源は?(時事通信フォト)
TBS安住紳一郎アナ、恩師や先輩アナが明かす“天才的なしゃべり”“のスキル
週刊ポスト
判決が出る前に謝罪動画をYouTubeに公開していた田中聖(公式YouTubeより)
出身地を隠さないアイドルだった田中聖 罪を償い寛解したなら帰る場所はある
NEWSポストセブン
眞子さまの箱根旅行のお姿。耳には目立つイヤリングも(2018年)
小室圭さんの妻・眞子さん 華やかだった4年前の「箱根・女子旅ファッション」
NEWSポストセブン
メディアの前に久しぶりに姿を現したブラザートム(撮影/黒石あみ)
ブラザートムが不倫騒動・事務所独立からの今を語る「娘にはよくハガキを書いてあげるんです」
NEWSポストセブン
小室圭さんと眞子さん
小室圭さん妻・眞子さんがNYで行きつけのスーパーから見えてきた“妻の気遣い”「日本でいえば『成城石井』」 
NEWSポストセブン
結婚し、日本メディアが情報をキャッチしづらいNYで、デイリーメールが追跡取材(写真/JMPA)
小室圭さん・眞子さん夫婦が「離婚で終わったとしても…」英デイリー・メールが報じた「茨の道」
NEWSポストセブン
高橋真麻
高橋真麻「おでんの卵8個食べても太らない」女性が憧れる美スタイルの理由
NEWSポストセブン