そのとき、私はアメリカにいたのですが、風向きが変わったのがわかりました。「やっぱり、ヒラリーは悪いことをしていたのか」というわけです。そのころ、日本のメディアから「やっぱり、ヒラリーで決まりですよね?」という連絡があると、「いやわかりません。どっちになるか本当にわからないんです」と答えていました。
今年の10月には何が起きるのか。トランプ大統領が狙っているのは、新型コロナウイルスのワクチンです。10月末までに何としても間に合わせようと、ものすごい圧力をかけています。
ワクチンは、できたとしても少しずつ試してみて、副作用がないか、本当に抗体ができるのか時間をかけて調べないといけないのですが、それをすっ飛ばして一気にやろうとしています。10月末から多くの人に打てるようにして、「俺の実績だ」ということにして勝とうとしているというわけです。
何となく「バイデンで決まりだろう」と思っている人が多いと思うのですが、そうとばかりは言えません。
9月末からは大統領候補同士、あるいは副大統領候補同士のディベートも始まります。そして、オクトーバー・サプライズはあるのか。10月はアメリカのニュースに注目しましょう。
アメリカは、日本にとって大事な友好国。なくてはならない国ですが、米軍の駐留経費問題ひとつとっても、日本にとって厄介な存在でもあるのです。大統領選の報道を見ながら、アメリカについて考えてもらえればと思います
【プロフィール】いけがみ・あきら(ジャーナリスト)/1950年長野生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1973年にNHK入局。報道局社会部記者などを経て、1994年4月から11年間にわたり『週刊こどもニュース』のお父さん役を務め、わかりやすい解説で人気を集める。2005年にNHKを退職し、フリージャーナリストに。名城大学教授、東京工業大学特命教授。愛知学院大学、立教大学、信州大学、日本大学、順天堂大学、東京大学、関西学院大学などでも講義する。主な著書に『伝える力』『知らないと恥をかく世界の大問題』など。近著に『池上彰の世界の見方 インド』『池上彰のまんがでわかる現代史 欧米』がある。