国際情報

中国「一人っ子政策」で軍が弱体化 訓練で倒れる若い兵士続出

 国防を考える時、中国人民解放軍の実力を見極めることは極めて重要になってくる。中国人民解放軍の総兵力は224万人、予備役が50万人、さらに準軍事組織である「人民武装警察」が66万人と、その数的規模は世界最大である。また、軍事費においても中国は世界第2位となった。スウェーデンのストックホルム平和研究所によれば、09年度における中国軍事費は849億ドル(約7兆6410億円)に達し、アメリカに次ぐ世界2位。中国国内では軍の存在感が顕著になっている。だが、その中国軍には思わぬ弱点が存在する。20年以上中国の軍事をウォッチしている軍事ジャーナリスト、古是三春氏がレポートする。

************************

 軍事膨張、兵器の近代化を行ないながら、中国軍にはまだ死角がある。
 
 確かに核戦力の面でも、ICBM(大陸間弾道ミサイル)など核の反撃力と抑止力を有するが、通常の戦力だけを見ると攻撃的に周辺諸国へ向ける実力が乏しいのだ。
 
 まず第1に、世界に誇るその兵力はどうか。有名な「一人っ子政策」のため、甘やかされて育った若者が徴兵されている。おかげで苛酷な訓練では、倒れる兵士も続出する事態となっているのだ。筆者は「昔のような精神鍛錬をすると親たちから“虐待だ”と非難される」とある中国軍の幹部がため息まじりに語るのを聞いたことがある。
 
 第2に、莫大な軍事費も実は、兵士への給料と年金で兵器開発まで回らないというのが実情だ。224万人の兵士の給料と引退した軍人への年金。冷戦期に軍で働いていた大量の幹部がいっせいに引退の時期を迎え、彼らに払う年金が悩みの種になっている。さらには福利厚生のための引退者住宅の建設が急速に進められ、これらも装備更新の予算を食って、軍の近代化を遅らせている。

※SAPIO2010年12月15日号


関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト