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「65歳まで雇え」判決に「若者に職を、老人には退職を」の嘆き

 11月26日、京都地裁で出た判決が、若者たちに波紋を呼んでいる。人事コンサルタントの城繁幸氏は驚きを隠せなかったという。

「事実上、『65歳まで雇え』という判決ですからね。本人が希望するかぎり年金の支給開始まで職が保障されることになったわけです。団塊世代の実質的な定年延長ですから、これは相当な負のインパクトになると思われます」

“負のインパクト”とはどういう意味か。城氏は、判決が若者の雇用に大きな影響を与えると指摘する。

「頭数の多い団塊世代を雇い続けるコスト増加分を、企業は新卒採用の抑制でカバーするしかない。しかも、今までは60歳まででしたが、これからは65歳まで雇い続けるに値するかどうかが、正社員の採用で問われるわけです。要するに、団塊世代の雇用に対する期待権は大事だけど、若者の期待権はどうでもいいということでしょう」

 城氏が以上の内容を書いたニュースサイトのコラムには、若者からと見られるコメントが殺到。なかにはこんな書き込みもあった。

〈30代中途採用者です。3ヶ月は非正規の扱いで、その後正社員登用との話でしたが、定年になった方が嘱託で残ることになったことで、非正規待遇のまま来年1月で3年目に入ります。実質的には正社員の仕事をしておりますが、昇給ボーナスもなく福利厚生の手当もありません。いつまでこの状況なのかを考えるとため息しか出ません〉

 3年前までフリーターとしてコンビニでアルバイトをしていたライターの赤木智弘氏も、城氏と同意見だ。

「中高年をひとり雇用延長すれば、新しく社会に出る人がひとり削られる。不公平です。『若者には職を、老人には退職を』と声を上げなければいけない」

 判決の基準となった高齢者雇用安定法について、雇用問題に詳しい八代尚宏・国際基督教大学教養学部教授はこう説明する。

「1980年代までの高い成長期の発想でつくられた法律です。本来なら企業は、賃金の安い若年層を雇いたがるので、仕事がなくて困っている高齢者を助けるためにできた。現在のような、若者に仕事がなくなるという事態は想定していなかったのです」

※週刊ポスト2010年12月24日号

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