国内

菅・鳩山・小沢のトロイカ体制失敗は2000年前からの規定路線

 出口の見えない不況や領土問題などの喫緊の課題をいくつも抱えているというのに、菅・民主党政権は通常国会で立ち往生している。野党対策はおろか、足下の党内さえもまとめきれていない。実は、先の総選挙での劇的な勝利によって誕生した民主党政権が、このような醜態を晒すことになるのは、自明であったと、落合信彦氏は指摘する。

 * * *
 これは政権交代の前からのことだが、民主党の指導者たちについて、“ある言葉”が使われていたことに注意を払っていただろうか。

「トロイカ」というフレーズである。

 もともとロシア語で「3頭立ての馬車」を意味するこの言葉は、3人の指導者が対等な立場で組織を動かしていくことを表現して用いられる。民主党の場合は鳩山由紀夫、小沢一郎、菅直人の3人を指していた。

 私が指摘したいのは、およそトロイカ体制というものが、人類の長い歴史の中で、一度たりともうまくいったことがないということだ。それは、3人がそれぞれ権力欲に駆られ、次第に力のバランスが崩れることに起因する。

 3人の指導者が国家を率いた最初の例は、共和制ローマにあった。ポンペイウス、クラッスス、そしてジュリアス・シーザーの3人がBC60年から始めた、「三頭政治」である。

 三頭政治が行なわれる前のローマでは、最高指導者であるはずの執政官(コンスル)よりも、元老院が強大な政治力を握っていた。その元老院に対抗するために、3人は手を組み、民衆の支持を勝ち得たのである。

 ところが、まずクラッススが戦場で命を落とす。すると、シーザーとポンペイウスの間で壮絶な争いが始まった。ガリア戦争で、シーザーがガリア(現在のフランスなど)全土をローマの支配下に収めるという戦果を挙げると、焦ったポンペイウスは元老院と結んでシーザーの力を削ぐことを画策した。

 対するシーザーはポンペイウスとの戦争を決意し、BC49年にガリアからローマへと進軍を始める。この時に渡ったのがルビコン川であり、そこで発したとされる「賽は投げられた」という台詞はあまりにも有名だ。

 その後の戦いでポンペイウスはシーザーに敗れ、エジプトへと逃れるが、そこで殺されてしまう。勝利したシーザーも終身独裁官の座に就いたものの、その絶対的権力に不満を抱いた共和制主義者たちに最後は暗殺された。

 では、民主党のトロイカはどうだったか。ローマ元老院の如く権力を恣にしていた自民党政権という敵に立ち向かうために手を組んだ鳩山、小沢、菅の3人は、権力奪取には成功した。

 しかし、まず鳩山が首相の座を追われ、菅と小沢の間で党を二分する争いが勃発する。小沢は菅との代表選に敗れ、政治生命の危機に追い込まれた。勝ったはずの菅も、指導力を全く発揮できず、そのクビは3月末で切られるやもしれない状況にある。

 ローマにおける三頭政治の辿った末路と、完全に符合しているではないか。もちろん、英雄であるシーザーと、右往左往するばかりの菅の、政治家としての資質には天と地ほど差がある。だが、権力闘争の経緯は、2000年以上の時を隔てながら驚くほど瓜二つだ。

※SAPIO2011年3月9日号


トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン