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がんを抑制するREIC遺伝子でほとんどの腫瘍が完全に消滅

「REIC」は不死化細胞の研究から発見された遺伝子で、その後、がんを抑制する働きがあることが確認された。マウスに腫瘍を作り、アデノウイルスにREICを組み込んだ製剤を腫瘍に注射する実験で、ほとんどの腫瘍が完全に消滅するという結果が得られた。がん細胞の選択的死滅と、抗がん剤免疫の活性化によるもので、これを受けて、前立腺がん患者に対する臨床研究が開始された。

 REICは、岡山大学における細胞の不死化の研究で2000年に発見、同定された。正常細胞は寿命が来ると死ぬが、がん細胞は分裂しながら永遠に生きる。正常細胞はがん化する前の段階で不死化することがわかっているが、そこにかかわっている遺伝子の一つがREICだ。その後、同大ではがんに対するREICの遺伝子治療研究が開始された。岡山大学大学院泌尿器病態学の公文裕巳教授に聞いた。

「前立腺がんを作ったマウスの実験で、REIC遺伝子を、がん細胞でアデノウイルスをベクター(運び屋)に強制的に発現させたところ、がん細胞だけが劇的に死滅しました。2004~2005年のことですが、がんの遺伝子治療に応用できることを確信しました」

 がんは複数の遺伝子異常によって発症する病気ではあるが、がん化が完了した段階では遺伝子を修復しても治らない。異常遺伝子の修復ではなく、がん細胞だけを死滅させる遺伝子による治療に挑戦したのが、このREIC遺伝子治療だ。

(取材・構成/岩城レイ子)

※週刊ポスト2011年5月27日号

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