ライフ

仙谷氏から恫喝された官僚の書に森永卓郎氏「すごい本」

【書評】『日本中枢の崩壊』(古賀茂明著/講談社/1680円)

【評者】森永卓郎(エコノミスト)

 * * *
 久しぶりに永久保存版のすごい本に出会った。著者の古賀茂明氏は、経済産業省のキャリア官僚で、渡辺喜美行革担当大臣に請われて、2008年7月に新設された国家公務員制度改革推進本部事務局の審議官に就任した。そして官僚の利権に切り込む大胆な改革案を作り上げた。

 ところが、民主党政権が誕生した2009年9月のわずか3ヶ月後に、仙谷由人行政刷新相によって更迭され、さらに2010年秋には、参考人として呼ばれた参議院予算委員会で、仙谷官房長官から「恫喝」を受けた。公務員制度改革について発言することは、著者の将来のためにならないという公然の圧力だった。
 
 経済産業省の官房付として幽閉されるなかで、官僚支配の実態と望ましい改革案を描いたのが本書だ。本書の素晴らしいところは、まず官僚の利権構造を具体的に暴いていることだ。
 
 例えば、業界を持たない人事院からも天下りが行われている。人事院に高給を確保してもらう見返りに、各省が天下りポストを用意するからだ。正直言って、私はそんな官官癒着があることさえ知らなかった。
 
 ただ、本書のもっとすごいところは、多くの識者がいままで知っていても書けなかった事実を、堂々と書いているところだ。典型は、財務省に関する記述だ。なぜ財務省が国税庁を手放したがらないのか。それは、国税庁が本気を出せば、政治家やジャーナリストを脱税容疑で追い詰めることができる。だから、誰も財務省の正体を明らかにできない。
 
 著者は、東日本大震災のあと、すぐに便乗増税に走り出した財務省を批判し、そして実際に大増税が行われて、日本経済が奈落の底に落ちていく事態を危惧している。自らの利権拡大のために増税を目指す財務省の動きを、財務省に屈した民主党が止められるはずがない。
 
 もともと官僚と複合体を作っていた自民党と大連立してもそれは変わらない。私の一番の心配は、本書を上梓して真実を明らかにした著者が、今後冤罪で逮捕されるのではないかということだ。

※週刊ポスト2011年7月1日号

関連記事

トピックス

本来であれば、このオフは完成した別荘で過ごせるはずだった大谷翔平(写真/アフロ)
《大谷翔平のハワイ訴訟問題》原告は徹底抗戦、大谷サイドの棄却申し立てに証拠開示を要求 大谷の“ギャラなどの契約内容”“資産運用の内幕”が晒される可能性も浮上 
女性セブン
表舞台から姿を消して約1年が経つ中居正広
《キャップ脱いだ白髪交じりの黒髪に…》「引退」語った中居正広氏、水面下で応じていた滝沢秀明氏からの“特別オファー” 
NEWSポストセブン
1990年、聖ワリシイ大聖堂がそびえるモスクワの赤の広場で(撮影/太田真三)
【落合信彦さん・追悼グラフ】ロシア、ウクライナ、エルサレム、ペルー…サッチャー氏やスー・チー氏にもインタビュー 稀代の国際ジャーナリストの足跡を秘蔵写真で辿る
週刊ポスト
弾圧されるウイグルの人々(日本ウイグル協会提供)
【中国・ウイグル問題】「子宮内避妊具を装着」「強制的に卵管を縛る…」中国共産党が推進する同化政策・強制不妊の実態とは…日本ウイグル協会・会長が訴え
NEWSポストセブン
中村獅童と竹内結子さん(時事通信フォト)
《一日として忘れたことはありません》中村獅童、歌舞伎役者にならなかった「竹内結子さんとの愛息」への想い【博多座で親子共演】
NEWSポストセブン
週末にA子さんのマンションに通う垂秀夫氏
垂秀夫・前駐中国大使が中国出身女性と“二重生活”疑惑 女性は「ただの友達」と説明も、子供を含む3ショット写真が本物であることは否定せず 現役外交官時代からの関係か
週刊ポスト
青木淳子被告(66)が日記に綴っていたという齋藤受刑者(52)との夜の情事を語ったのはなぜなのか
《不倫情事日記を法廷で読み上げ》「今日は恥ずかしいです」共謀男性社長(52)との愛人関係をあえて主張した青木淳子被告(66)が見せていた“羞恥の表情”【住職練炭殺人・懲役25年】
NEWSポストセブン
強盗の現場付近を捜査する職員ら(時事通信)
《上野4億円強奪》背後に浮かぶ「金密輸」と「香港のマフィア組織」…裏社会ジャーナリストが明かす「マネーロンダリング」のリアル
週刊ポスト
六代目山口組の司忍組長も流出の被害にあった過去が(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長の誕生日会》かつては「ご祝儀1億円」の時代も…元“極道の妻”が語る代替わりのXデー 
鵠祥堂の代表・齋藤受刑者(右)と役員・青木被告が共謀した(Xより)
〈ベットで抱き合って、お尻にキス〉住職を練炭で殺害した青木淳子被告(66)が共謀の会社代表男性(52)との“不倫情事日記”を法廷で読み上げた“意外なワケ”【懲役25年】
NEWSポストセブン
ドイツ女子ボブスレー代表選手のリザ(インスタグラムより)
【ミラノ五輪の裏事情】「遠征費のために…」女子金メダリストが“ポルノ”SNSで資金調達で波紋「同ケース相次ぐ」 
NEWSポストセブン
大谷の2026年シーズンが始まった(時事通信/Aflo)
《半袖&短パンでエグい二の腕があらわに》大谷翔平が自主トレ初日に見せたムキムキボディー、注目される“真美子さんのアリゾナ入り”…メジャーでは「家族と共にキャンプイン」も一般的
NEWSポストセブン