ライフ

消費税増でも「パート年金拡大」「こども手当」に使うは問題

東日本大震災を受けて消費税アップの議論が加速している。しかし、「消費税アップは円安へのトリガーを引くが可能性がある」と三菱UFJリサーチ&コンサルティング執行役員の五十嵐敬喜氏は指摘する。

* * *
日本経済はなかなか勢いのある回復の兆しが見えない中で、今の金融緩和政策から抜け出すことが難しいだろう。

一方、欧州や米国はそれに比べて、金融引き締め(いわゆる「出口戦略」)が日本よりも早く実現される可能性が高い。そうなれば、金利の高いドルやユーロが強くなり、円は弱含むというトレンドになるだろう。 そうした中、為替が大きく動く可能性があるのは、2013年頃である。

政府は、2012年か13年に消費税を2%または3%アップさせ、2015年に再度税率を上げ、「消費税10%」にする“2段階方式”で検討を進めている。消費税は1%アップすると、2.5兆円の増収になると言われており、仮に現状より5%アップすると、12兆5000億円の税収増となる。

ただし、このお金の使途が問題だ。 これまでの政府の説明によると、この増収分は財政赤字の削減に充てるのではなく、不足する財源の穴埋めに使うとしている。

消費税によって得た収入は国と地方で案分するが、そのうち国の収入となるものについての使途は、「高齢者向け社会保障3分野」(基礎年金、医療、介護)に充てると定められている。

増収分の12兆5000億円がこれらの分野に使われ、それまで他の財源から充てられていた「浮いた12兆5000億円」がそのまま財政赤字の埋め合わせに使われるならよいが、「パートの年金拡大」や「子ども手当」など、他の膨脹した予算に使ってしまうと、結局、全体としてみれば赤字は削減できないということになる。

これが問題なのだ。

消費税を上げても、プライマリーバランス(基礎的財政収支)が均衡しないつまり、“せっかく収入を増やしてもそれと同じだけ歳出を増やしてしまう国”ということになれば、国際社会からは「痛みを伴う財政再建ができない国」として烙印を押されてしまうことになる。

これほど財政が悪化しているにもかかわらず、これまで円安が進まなかったのは、日本が経常黒字であることや、世界最大の債権国であるといった経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の強さに加え、「まだ増税の余地がある」からでもあった。

消費税が20%前後の欧州諸国に比べれば日本の「5%」は非常に安く、「増税すればどうにかなる」というのが暗黙のコンセンサスだった。

しかし、それが「増税をしてもこの国の財政はまったくよくならないどころか、さらに借金を重ねるつもりだ」というメッセージとなって伝われば、「強い円」の根拠は失われてしまう。

国家財政のために「よかれ」と思って行なった大きな政策変更=消費税アップが失敗に終わった時、市場は厳しい対応をしてくる。引き金を引くのは格付け会社による「大幅な格下げ」だろう。

今年に入り、日本国債の格付けの引き下げや、見通しの変更(ネガティブへの見直し)が行なわれたが、実際には円は暴落しなかった。これは、現在の状況では「円」よりも「ドル=米経済」のほうが市場で材料視されているからだ。

しかし、2013年頃に「消費税を上げても財政再建できない」ことがわかった時に、“この国はダメだ”と国債が格下げされれば、市場からは「イエローカード」として捉えられるだろう。

当然、円は大幅に下落し、1ドル=100円を突破することになろう。

関連記事

トピックス

世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン