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不動産の権利証紛失=権利の喪失ではないので安心して!

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「震災で不動産の権利証を紛失してしまいました」と、以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 震災で不動産の権利証を紛失しました。避難するとき、持ち出すことができなかったのです。地震と津波で家が壊れ流されたため、探しようもありません。権利証は再発行できない書類だと聞きました。このような場合、どうすればいいのかわからず困っています。いい方法はないでしょうか。

【回答】
 権利証がなくなったからといって、権利が失われるわけではありません。権利証とは旧登記法の時代に、売買などで不動産の所有権を取得して登記したときに登記所(法務局)から、登記申請書の副本や登記原因証書となる売買契約書などに、登記の受付日と登記番号を書いて、「登記済」の朱印を押して返してもらう書類のことです(「登記済権利証」)。

 この権利証の名義人が権利者であり、本人が所持すべきものですから、次に売るときには権利証を登記所に提出する必要がありました。しかし紛失しても登記できないものではなく、登記所管内に不動産を持つ者2名に保証人になってもらうことで登記は可能でした。

 ところが平成16年に不動産登記法が変わり、新しい権利者には登記済証ではなく「登記識別情報」として、番号にシールを貼って他人から見られない状態で交付されるようになりました。その番号自体が「登記識別情報」と呼ばれます。その番号を知っているのは権利者だけのはず、という考えから、次の登記のときにはその番号を「登記識別情報」として登記所に提出することになります。

 しかし、新法になってからの登記があるまでは、従来の権利証が登記識別情報の代わりになり、従来通り登記所に提出します。その権利証が紛失した場合の登記申請には、二つの方法があります。

 一つは、登記申請があったら、登記官が本人の住所宛に登記申請があったことを連絡し、2週間以内に手続きが正しいことの申し出がないと登記しないという事前通知制度です。もう一つは弁護士や司法書士などの有資格者により確認を受ける方法です。前者は時間がかかりますが、後者は費用がかかります。くわしくは、登記所に相談してください。

※週刊ポスト2011年7月8日号

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