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森永卓郎氏「米国の金融緩和で1ドル50円台」の可能性指摘

 1ドル=75円台を記録した戦後最大の円高が続いている。たしかに日本企業はこれまでに何度も円高を経験してきているため、利益が為替に左右されないような体制をつくってきているが、「こんな円高ではそれも限界」という悲鳴が上がっている。経済アナリストの森永卓郎さんがいう。

「円高によって、今後はさらに企業が海外に出て行く傾向が強まるでしょう。輸出がふるわないなら、いっそのこと海外に生産拠点を移し、海外で製品を売ったほうが効率がいいと考える企業が増えます。加えて原発の稼働停止による電力不足で、企業は“こんな国ではモノづくりなんかできない”という方向になってきている。中堅以上のメーカーはすでに国内拠点と海外拠点の両方を持っていますから、行く行かないの決断ではなく生産ラインを1本1本海外へ移していくだけでいいんです」

 もっと苦しいのは、海外に拠点を持つだけの資金力のない中小企業。出て行きたくても出て行けないまま、存亡の危機に立たされることに。ある部品メーカーの社長が深刻な表情でこう嘆く。

「円高の影響で海外からの注文がめっきり減り、このままでは経営が立ち行かない。大震災による業績の悪化から、やっと回復に向かうと思った矢先だったのに…」

 円高が続けば、倒産による失業、そして企業が海外に出ていくことによるリストラが増えるというから恐ろしい。森永さんが続ける。

「震災で日本経済が傷ついているいま、円高は非常に危険です。もし米国が第3次の金融緩和に踏み切れば、ドルがますます安くなって、円は60円台になる。下手すれば瞬間的に50円台という局面も出てくるかもしれない。そうなると日本経済全体がおしまいになる。製造業が海外に出て行けば円安にはなりますが、そのときには国内に何も残っていない状況になっている」

 では、円高は今後も続くのか。みずほ総研市場調査部エコノミストの山崎亮さんはこう予想する。

「米国が2年後の2013年までいまの超低金利政策を続行するといっているので、おそらくその時期までは円高の水準が続くでしょう。その間、“日本の国内企業が海外に出て、空洞化が起こりやすくなる”という懸念はますます高くなってしまいます」

 しかも、心配なのは円高による長期的な影響だけではない。

「早ければこの冬のボーナスが減る可能性もあります。輸出入関連企業の業績悪化は、小売をはじめ国内企業に影響し、日本全体の景気が一段と悪くなるでしょう。だから、この円高は絶対に止めなければいけない。なのに政府はなぜ動かないのか」(森永さん)

 日本政府の無策ぶりに話しが及ぶと、いつもは温厚な森永さんのテンションは上がるばかりだった。

※女性セブン2011年9月15日号

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