国内

アルファベットを教える日本橋学館大学 学長に意図を聞いた

 入学初年度の履修科目である「基礎力リテラシー」として、英語は「アルファベットの書き方・読み方」などのシラバスを公開し、「簡単すぎる」とネット上を中心に話題となった日本橋学館大学。横山幸三・学長(72)が同大学の教育が狙うところを語った。

 * * *
 本学の「基礎力リテラシー」は、「リメディアル教育」という考えに基づくものです。

「リメディアル教育」とは、学力の低下している学生に、正規の授業やゼミとは別に中学・高校レベルの補習授業を行ない、学び直させるもので、近年は難関大学を含め、実は多くの大学が採用しているのです。

 他大学では、就職に備えるため、就職課が高校レベルの試験問題を配布したり、数回の特別授業で済ませたりする付け焼き刃的な内容が多く、基礎学力強化に繋がっているとは思えません。しかし、本学ではシラバスを公表したうえで、単位修得を要する科目として設定しました。

 スタートは3年前ですが、実は今年の2月には、案の定、「大学で教える内容か」とのご批判を受けていました。その時には教授会で、「やはり隠したほうがいい」という意見も出ましたが、教えている事実を隠す必要はない。むしろ本学では基礎学力を教えていることを“売り”にしようと決めたのです。

 まず、入学時に国語、英語、数学の主要3科目の基礎力テストを実施します。その結果を受けて教員が面談を行ない、必要と判断された学生に受講を促します。

 試験で学力を把握することで、「あァ、この子は中学時代の躓きで英語嫌いになったんだな」など、指導教員にも発見があり、適切な履修指導が可能になる。そうして学生と話し合うことで、なぜ英語を一から学ぶ必要があるのかを学生に納得してもらうのです。

 当初は教職員にも戸惑いがありました。専門知識を指導すべき大学教員が、アルファベットや小数・分数を教えるのですから当然です。

 しかしながら反発はありませんでした。なぜなら、「できない」「分からない」という学生に戸惑っているだけでは何も解決しないからです。2年次以降の高等教育をするためには基礎固めが不可欠だということ、そして今の大学生には基礎学力の指導が必要であるということを、皆が教育者として肌で感じていたのだと思います。

※週刊ポスト2011年10月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
舞台『シッダールタ』での草なぎ。東京・世田谷パブリックシアター(~2025年12月27日)、兵庫県立芸術文化センター(2026年1月10日~1月18日)にて上演(撮影・細野晋司)
《草なぎ剛のタフさとストイックさ》新幹線の車掌に始まり、悟りの境地にたどり着く舞台では立見席も
NEWSポストセブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
「異物混入」問題のその後は…(時事通信フォト)
《ネズミ混入騒動》「すき家」の現役クルーが打ち明ける新たな“防止策”…冷蔵庫内にも監視カメラを設置に「なんだか疑われているような」
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン